日本郵船
「海を支える」企業へ
海洋を航行して物資を運ぶ「海を使う」企業から、海の自然資本を守る「海を支える」企業へ。
科学的な調査・分析、国際的なルールメイキングへの参加、現場での行動の3本柱で取り組む。
世界の貿易量の8~9割を支える国際海運は、海という自然資本に大きく依存する事業といえる。海洋の健全性の確保は、事業活動に不可欠となる。
日本郵船は、脱炭素と海洋環境の保全を表裏一体と捉え、ネットゼロ(温室効果ガスの排出実質ゼロ)とネイチャーポジティブ(自然再興)の同時実現を掲げる。ネイチャーポジティブの実現に向けて、科学(現状把握)、ガバナンス(ルールづくり)、行動(現場での再生)の3本柱で取り組みを進めている。
海を理解することが出発点
起点となるのは科学だ。2024年1月に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言に賛同し、アーリーアダプターとして登録されている日本郵船は、TNFDレポートを24年版から発行している。自然資本に対する依存と影響を評価するフレームワークであるLEAPアプローチに沿って事業活動で特に注意が必要な海域を特定し、TNFDレポートで開示している。
同社の特徴的な取り組みとしては、環境DNA調査による科学的知見の蓄積が挙げられる。この調査は、海や川などで採取した「バケツ一杯の水」からその水域に存在する生物の種類や分布を明らかにするものだ。
日本郵船は、環境DNAのデータベースの構築に取り組む「ANEMONE(アネモネ)コンソーシアム」(代表:東北大学大学院教授近藤倫生氏)に22年から参画している。運航船を活用して外洋や近海の環境DNAを採取し、これまでに累計296本のサンプルを提供した。その結果は「ANEMONE DB」で公表されている。
ガバナンスでは、海事問題に関する国連の専門機関であるIMO(国際海事機関)への提言活動や、TNFDの海運セクターガイダンス案へのパブリックコメント提出など国際的なルールメイキングに積極的に参画している。
現場での自然保全の活動も国内外で進めている。例えば、愛知県西尾市で23年から藻場の再生活動を支援している。秋田県男鹿市では、25年から養殖藻場の造成事業の支援に着手した。沿岸に人工的な藻場をつくることで、海の生態系の回復と水産資源の再生を図る。
海外では、フィリピンでのサンミゲル・コーポレーションが取り組む現地の河川回復プロジェクトを21年から支援している。5年間で150万ドルを寄贈するほか、浄化用の重機2台を提供した。
海を支える企業として、自然資本の保全活動を推進していく。
環境DNA調査の仕組み