シンク・ネイチャー
専門性で自然資本に投資される世界を
シンク・ネイチャーは生物多様性の可視化の専門家が立ち上げたスタートアップだ。
その専門性を武器に、自然資本を資本主義に取り込み、自然が回復するサイクルをつくり出そうとしている。
シンク・ネイチャーは最先端の科学的知見に基づくデータ解析を通して、生物多様性・自然資本に関する多様なソリューションを提案するネイチャーテック・スタートアップだ。生物多様性の可視化を研究してきたアカデミア出身者が中心となって2019年に設立された。久保田康裕CEOは「我々の暮らしや経済は自然資本に依存しています。その自然の価値を科学的なアプローチで見える化し、資本主義のメカニズムに組み込むことで、自然資本に投資がなされる世の中を目指したい」と話す。
シンク・ネイチャーの強みは、世界30万種以上の生物の分布データと150以上の指標を用いた評価・解析力にある。
この強みを生かして企業のTNFD対応などを支援する。ただし、同社の支援は単なる情報の開示にとどまらない。企業の事業活動の多くは自然資本に頼っており、自然資本の劣化は事業の先行きに直結する。そのため、事業の意思決定に自然資本が組み込まれるようにソリューションを提供するのもシンク・ネイチャーの役割だ。
金融機関との連携強化とネイチャークレジットの実装
同時に力を入れているのが、金融機関を中心とする機関投資家とのプロジェクトだ。機関投資家にとって、投資先の企業の事業が中長期にわたって成長するか否かは極めて重要だ。そのため、企業が自然資本に対して適切に対応しているかどうかが、投資先を選定する上でのポイントになる。シンク・ネイチャーは日本生命グループと連携し、投資先の企業が抱える自然関連のリスクを財務データと結びつける形で提供している。
さらにネイチャークレジットによるオフセットの実装にも積極的に取り組んでいる。元ヘルシンキ大学の教授でネイチャークレジット・オフセットの権威であるアッテ・モイラネン博士が現在、シンク・ネイチャーのチーフサイエンスオフィサー(CSO)を務めていることから、同社は25年にフィンランドのヘルシンキに支店を開設した。また、みずほフィナンシャルグループなどと連携し、佐賀県唐津市でネイチャークレジットによるオフセットの実証実験も行っている。
同社は企業に対する支援にとどまらず、地方自治体を中心とする「To G」や個人を対象にした「To C」のビジネスも拡大する。地方自治体に対しては「自然資本可視化システム」の導入によって、「ネイチャーDX(デジタルトランスフォーメーション)」を支援する。北九州市は26年3月に、シンク・ネイチャーのシステムを導入しており、自然資本政策の立案に活用している。個人向けには、消費者の生物多様性への理解を深める生物多様性可視化アプリを開発・展開している。企業に加え、自治体や個人の自然資本への関心が高まれば、自然資本回復の好循環の実現がさらに近づく。