東急不動産ホールディングス
自然と共生する開発で新たな価値創造へ
都市開発や住宅、リゾートなど幅広い事業を通じてネイチャーポジティブの実現に取り組む。
自然と気候変動に関するリスクと機会を一体的に捉え、持続可能な街づくりを推進する。
東急不動産ホールディングスは2023年8月、不動産業界初となるTNFDレポートを発行し、自然への依存とインパクトを早期に可視化した。さらに26年7月には、気候変動と自然を関連する経営課題として統合的に捉えた「TCFD/TNFDレポート(統合版)」を公表。気候変動と自然損失に関する3つのシナリオを設定し、事業へのリスクと機会、及び対応策、さらに財務影響のシナリオ分析を実施した。こうした分析を経営戦略に反映し、気候変動と自然の双方を見据えた持続可能な事業経営につなげている。
同社は30年までの長期経営方針を21年に策定し、全社方針の1つに「環境経営」を位置付けるとともに、「WE ARE GREEN」をスローガンに掲げた。環境課題への対応と社会課題の解決を掛け合わせ、お客さまの体験価値、環境価値、地域価値につなげて、事業や施設の魅力や価値を高める「環境プレミアム」の創出を目指している。
都市・森林・海域で推進
生物多様性への取り組みでは、自社の事業が自然に与える影響などを把握し、優先的に対策すべき地域を特定することが重要となる。同社は250を超える自社物件の立地を分析し、優先地域として、「都市」では広域渋谷圏の39拠点、「森林」「海域」ではリゾート施設が立地する13地域を定めた。
「都市」の優先地域である広域渋谷圏では、商業施設やオフィスビルの緑地を整備し、生物のエコロジカルネットワーク形成を進めている。商業エリアでは緑地面積の割合が低下する中、同社の物件では12年以降、緑地面積の割合が増加に転じた。さらに、各物件の開発後に生物多様性が回復する効果も確認されており、都市開発における自然再生が進みつつある。
「森林」では、長野県茅野市の東急リゾートタウン蓼科で、自然の保全・回復に取り組む。24年には「自然共生サイト」の認定を取得。森林経営計画を策定し、間伐などによる適切な森林管理を進めることで、敷地内に占める森林面積の割合も拡大している。リゾート事業を営みながら、地域の豊かな森林を守り育てる取り組みを継続する。
「海域」については、パラオ共和国のリゾートホテル「パラオ パシフィックリゾート」を1984年の開業以来40年以上にわたり、美しい海を守りながら運営してきた。自然と調和する開発の思想は、東急不動産の初代社長である五島昇氏の「ヤシの木より高い建物は建てるなよ」という言葉に象徴され、現在も受け継がれている。サンゴの移植で新たな個体の定着に回復傾向がみられるほか、地域文化を尊重しながら現地での雇用を創出するなど、自然の保全と地域社会への貢献を両立している。
サステナビリティ推進部部長の松本恵氏は、「創業時から自然と調和するまちづくりに取り組み、環境を大切にする考え方が社内に根付いている」と話す。自然を守るだけでなく、その豊かさを事業や地域の新たな価値へとつなげる「環境プレミアム」の創出を通じて、環境を価値に変える挑戦を続ける。