サントリーホールディングス
流域全体を視野に入れ水保全に取り組む
全国27カ所に広がった「サントリー 天然水の森」活動の原点は2003年のサントリー九州熊本工場開設だった。
地下水の豊かな熊本では上流域の森をはじめ中流域の田んぼや湿地でも水と生物多様性を育む。
「サントリーグループは『人と自然と響きあう』ことを理念に掲げ、水をはじめとする自然の恵みを商品として届けてきた」。サントリーホールディングスの浅木純常務執行役員は、サステナビリティへの取り組みは創業当初からの企業理念の追求になっていると話す。
サントリーは九州熊本工場(熊本県嘉島町)を開設した2003年に、水源エリアの森を守る「サントリー 天然水の森」活動を始めた。土地の所有者と契約を結び、間伐などの整備をして水源の涵かんよう養に貢献する取り組みだ。阿蘇地域内の九州熊本工場の水源エリアからスタートした「天然水の森」は、16都府県の27カ所、1万2000ヘクタール超に広がった。40人以上の専門家と協力しながら、国内の工場でくみ上げる地下水量の2倍以上を涵養してウオーターポジティブを実現している。
「天然水の森」活動を続けてきたサントリーの気付きは、水を守る活動が豊かな生態系の保全にもつながることだった。適切な間伐による森林の整備が健全な土壌をもたらし、それが地下水量の維持・回復と、土壌生物が土台となる生態ピラミッドの維持・回復を実現できると分かった。こうした活動も一因となり、「サントリー天然水」を製造する国内4工場すべてで、流域全体の取り組みを評価する国際認証「Alliance for Water Stewardship」(AWS)の最高位認証を日本企業で唯一取得している。さらに国内だけでなく、米国やスペイン、オーストラリアなど海外工場でも水源の保全活動に取り組むようになっている。
地下水の中流域でも水源涵養
熊本地域では、地下水の上流域における「天然水の森」活動に加えて、中流域で水源涵養や生物多様性の再生につながる取り組みも進めている。10年に益城町で始めたのは「冬水田んぼ」だ。冬の休耕中の田んぼに河川からの水を張って地下水を育む手法で、水田の生態系を守る効果もあるとされる。約13ヘクタールの田んぼで実施し、昆虫やカエル、鳥たちが戻ってくる様子も観察している。
26年7月には同じ益城町で「湿地再生」の取り組みを始めたと発表した。もともと棚田として使われていた「天然水の森」近傍の耕作放棄地約3000平方メートルに河川水を引き入れて、カエルなどの両生類や水生昆虫などが生育できる環境をつくり出すとともに、地下水の涵養にもつなげていく。
都市部では、グリーンインフラの一種である「雨庭」活用を促進する一般社団法人「熊本ウォーターポジティブ・アクション」を推進している。その中核組織として他4者と産学金連携による「熊本ウォーターポジティブ・デザインセンター」を26年に設立した。
「人と自然と響きあう社会の実現へ」というサステナビリティビジョンの下、水源を育て、その恵みを商品として届け続けていく。
九州熊本工場の開設が「天然水の森」活動の始まりだった(左上)。熊本地域では耕作放棄地を湿地として再生する取り組みも新たに始めた
(出所:サントリーホールディングス)