日本生命保険
植物が作る炭水化物量で投融資を判断
事業活動と資産運用の両面で気候変動や生物多様性への対応を進める日本生命保険。
地球の健康と人の健康の両立を目指し、投融資向けには自然の回復を見極める尺度を開発した。
日本生命保険はサステナビリティ重要課題の一つに「豊かな地球を未来につなぐ」を掲げ、生命保険サービスを提供する事業活動領域と、企業などに投融資する資産運用領域の両面から気候変動や生物多様性への対応を進めている。
2025年10月には、地球の健康と人類の健康を総合的に把握し、両者の持続可能な調和を目指す概念である「プラネタリーヘルス」の取り組みを強化する狙いで長崎大学と連携協定を結んだ。共同研究テーマの一つが、気候変動・生物多様性の悪化と感染症の発生頻度に関するシナリオ分析。蚊が媒介する感染症や呼吸器系感染症などについて、気温上昇や森林破壊、人口増加などが発生率に与える影響を評価する。こうした研究の成果を生命保険事業の運営に生かしていく考えだ。
生態系のエネルギー収支に着目
投融資の領域では、25年8月に「日本生命ネイチャー・ファイナンス・アプローチ」を策定・公表した。幅広い業種の取り組みを自然の回復の観点から評価するため、科学的な知見に基づく実用的かつシンプルな指標として整理したものだ。具体的には、生態系と生物種への影響を組み合わせて評価する。
生態系については、地球上の植物が光合成で作り出す炭水化物量の総重量である「NPP」と、そのうち人間が活動で利用する量である「HANPP」を用いる。NPPとHANPPの差は、人間以外の生物や生態系が利用できるエネルギー量に相当する。生物種については、事業の対象地に生息する主要な生物種の個体数の変化、特に絶滅危惧種に着目して取り組みを評価する。これらは「プラネタリーバウンダリー」(人類が安心して暮らせる地球環境の限界)を示す指標にもなっている。
例えば、農産品や畜産品の代替材を開発する事業では、森林伐採を伴う農地や放牧地の拡大回避によるHANPP減少量と、製造のための工場設置などによるHANPP増加量を考慮し、生態系にとってプラスかどうかを判断する。森林保全・再生事業では、NPPの増加に加え、対象となる生物種の個体数の増加なども確認する。また、環境・社会面で重大な負の影響がないことも確認し、ネイチャーファイナンスとしての適格性を判断する。
責任投融資推進室主任専門課長の小川隆文氏は「幅広い業種の企業の活動を評価するためには、自然の回復をなるべくシンプルに測る科学的な手法が必要だと考えた」と説明する。
日本生命保険はこのアプローチを自社で利用するだけにとどまらず、業界団体や研究機関などと協力しながら、投融資における自然に関する判断基準として広く活用してもらうための仲間づくりも進めている。
(出所:日本生命保険)