大林組
自然を海・都市・地域の基盤に実装
建設・まちづくりに自然の機能を組み込み、海と都市の現場からネイチャーポジティブを社会に実装する。
養殖の栄養循環で豊かな海を育て、都市緑地を生物のすみかへ変え、自然と地域経済の好循環をつくる。
大林組は2019年6月、 中長期環境ビジョンを改訂し、「Obayashi Sustainability Vision 2050」を打ち出した。2050年のあるべき姿である「地球・社会・人」のサステナビリティが実現された状態を実現するため、「脱炭素」「価値ある空間・サービスの提供」「サステナブル・サプライチェーンの共創」を目標に掲げる。ネイチャーポジティブは、それを具体化するテーマだ。環境・社会・経済を統合的に向上させ、全ての人を幸福にする価値ある空間・サービスを提供する事業を目指す。
執行役員技術研究所長兼技術本部副本部長の小野島一氏は「建設事業の中で、できる限りネイチャーポジティブなインフラを社会に提供していきたいと考えています」と話す。大林組が掲げる「自然と、つくる。」は、自然の仕組みを理解してものづくりに取り入れる姿勢を示す。自然科学を設計・施工に組み込み、創出、維持管理、利用、評価まで一体で扱う。
海での挑戦が「大阪湾おさかな牧場」構想だ。養殖で生じるフンなどの残さを回収し、微生物で窒素やリンに分解する。その栄養塩で植物プランクトンを育てて二枚貝に与え、残りは海へ供給して藻場を育む。海を汚さない養殖にとどまらず、藻場を生物の生息場所、漁場、ブルーカーボンの吸収源、海と親しむ文化の場へ広げる構想だ。
愛知県知多郡南知多町の篠島では、産官学民で自然再興と地方創生に取り組む。地元の子どもたちや高校生へ「海の環境問題」や「ブルーカーボン」に関する出前授業も実施している。経済効果、地域コミュニティーへの貢献、環境の継続的な改善の同時実現を目指す。
自然をまちの機能として実装
陸の代表例が、大林組が施工した大阪・難波の複合商業施設「なんばパークス」だ。屋上公園「パークスガーデン」は、約5300平方メートルに約500種類、10万株の植物が育つ段丘状の緑地だ。生物多様性に配慮した設計施工と、NANKAIによる農薬を使わない管理や、鳥の餌となる昆虫を一部残す工夫など、20年以上の運営が都市の生態系を育てた。NANKAIと大林組が共同で行った23年度までの調査では、パークスガーデンの緑地が地域の鳥類種数を5種から16種に増加させていることを定量的に明らかにした。
小野島氏は「建物ができた結果、環境が良くなり、生物多様性が高まったといえるプロジェクトを増やしていきたいです」と言う。自然の機能を社会の基盤にするには、単独の技術では足りない。自治体、地域、顧客、研究機関と早い段階から課題を共有し、効果を科学的に可視化する必要がある。
大林組は、効果を科学的に可視化し、設計、施工、利用、維持管理、投資判断へつなげる。自然を特別な付加価値ではなく、海域、建築、都市の基盤として定着させ、人と自然が共に豊かになる場を次世代へ広げていく考えだ。
海のネイチャーポジティブを具体化する「大阪湾おさかな牧場」構想
(出所:大林組)