三井物産
持ち続けた「森」を価値と信頼に変える
日本の国土の0.1%に相当する森林を保有し、自然保全と価値の可視化に取り組んできた。
マレーシアでは自然と地域と持続的に共生できるパーム油調達を目指して活動する。
三井物産は2026年5月に発表した中期経営計画2029で「2030年、そしてその先へ 信頼とイノベーションで未来をつくる」というテーマを掲げた。その実例の一つとして社有林がある。森を守り育て、地域や社会に価値を提供することで、信頼を獲得してきた。
全国76カ所に広がる「三井物産の森」の面積は約4万5000ヘクタール。日本の国土の0.1%に相当する広さで、民間企業としては木材を原料とする事業を手掛ける企業を除いて国内トップの保有面積だ。もともと事業用の資産として森を活用してきた三井物産は、国産材の需要が急減した後も保有を続けた。国内年間生産量の0.1%に当たる年間約4万立方メートルの木材を供給しながら、森を「未来へ引き継ぐ自然資本」として維持・管理している。
「自然共生サイト」としての認定を受けるなど自然保全に貢献しながら、森の価値の可視化にも積極的に取り組んできた。その一つがFSC®認証森林※からのJ-クレジットの創出である。三井物産の森で取得した航空測量データの検証や官公庁への働きかけも一つのきっかけとなり、航空機やドローンによるデジタル測量のデータをJ-クレジット申請に活用できるルール改定につなげた。自社の森でCO2吸収量を可視化してJ-クレジットを創出しているほか、自治体の公有林でのクレジット創出などにも取り組んでいる。
※三井物産(FM)ライセンス番号:FSC®C057355
パーム油の「責任ある調達」へ
マレーシアのサバ州では、パーム油の持続可能な調達に向け、自然環境と地域社会との持続的な共生を目指すランドスケープアプローチの取り組みを始めた。マレーシアの社会的企業ワイルドアジアと協力し、原料であるアブラヤシの農園での環境再生型農業手法や環境負荷低減技術の導入、農園や搾油工場での温室効果ガス排出量の可視化、小規模農家への支援などを進める。
食品を中心に幅広く使われるパーム油について三井物産は、21年に「パーム油調達方針」を策定した。農園開発による森林減少や、労働者の権利や地域住民への人権侵害など様々なリスクがあることを認識し、持続可能なパーム油調達を目指すという宣言だ。サバ州での取り組みは、この調達方針に倣い、かつ、持続可能なパーム油サプライチェーン構築に寄与するものである。
「農園だけでなく周囲のランドスケープの人々の生活や自然を含めて『責任ある調達』を実現したい」と三井物産サステナビリティ経営推進部グローバル環境室長の志賀未雪氏は話す。そのためには、価値のある農園に厚く還元することが欠かせない。パーム油のトレーサビリティを実現しながら、スコープ3排出量の可視化や人権尊重の保証などを付加価値に変えることで、新しいサプライチェーンを構築しようとしている。それが、中期経営計画2029で掲げる「信頼」の獲得につながっていく。
(出所:三井物産)