提供:Google 協力:日経BP 総合研究所

THE NEXT X 変革の扉

テクノロジーによる社会の未来への貢献を目指すグーグル。
「AI の力で解き放とう、日本の可能性」というビジョンに基づく日本における取り組みを紹介する

Google DeepMind 佐野 大樹氏×株式会社シーユーシー・ホスピス 藪 康人氏×株式会社シーユーシー 大橋 悠介氏
Vol.42

生成AIで挑む介護の労働力不足
業務効率化と質の高いケア両立へ

Google DeepMind 佐野 大樹 氏
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シーユーシー・ホスピス 藪 康人 氏
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シーユーシー 大橋 悠介 氏
超高齢化社会を迎え、介護現場での人手不足が深刻化している。課題解決の鍵として期待されているのが生成AIだ。介護福祉士国家試験で精度100%を達成した高度な実力と強固な安全基準を備えたGeminiを活用し、グーグルは「ケア記録アシスト」を開発。株式会社シーユーシーとの共同での実証実験で、記録業務にかかる時間を約20%削減するという成果を上げた。現場の負担軽減と質の高いケアの両立に貢献するAI活用と変革のあり方について、両社が語り合った。

記録作業が現場の大きな負担に
介護現場に存在した「3つの課題」

藪 康人氏
株式会社シーユーシー・ホスピス
代表取締役
藪 康人

――共同での実証実験を行うことになった経緯を聞かせてください。

大橋知人の紹介でグーグルを訪問する機会があり、介護現場の課題解決について何か一緒にできないかと話し合いをしたのがきっかけです。

佐野グーグルとしても、高齢化社会における課題解決に取り組みたい、そしてその中でも、介護現場での大規模な人手不足の解消は最重要課題であると考え、プロジェクトを立ち上げたところでした。介護職員の方々の仕事を支援し、お役に立ちたいと考えました。

介護現場の最大の課題の1つは介護記録の作成が職員の負担になっていたことでした。その軽減のためにITツールを活用し、3つの課題を解決したいと考えました。1つ目は時間的な制約。ケア時間を確保しながら、限られた時間の中で記録作成までを終わらせるのが難しい状況にあります。2つ目は介護記録の質を均一にするための文章スキルと標準化の難しさ。介護記録はベテランから若手まで誰が書いても必要な情報が伝わる文章でなければなりません。3つ目がITツールへの根強い心理的ハードルです。新しいツールに不安感のあるスタッフは一定数いて、IT化への障壁の1つになっていました。

課題克服へ選んだ解は「Gem」の導入
直感的操作と現場に即した改善が鍵に

大橋 悠介氏
株式会社シーユーシー
執行役員
大橋 悠介

――介護現場の3つの課題をどのように解決し、実証実験を進めましたか。

佐野シーユーシー・ホスピスが運営している施設の1つを見せていただき、現場の課題を把握するところから始めました。その中で、シーユーシーでは全社レベルでGoogle Workspaceを導入済みだったため、Geminiを活用して、職員の皆さんが使い慣れた利用環境で解決策を提供できるのではないかと考えました。そこで提案したのが、GeminiのAIチャット機能をカスタマイズする機能であるGemの導入です。今回は、介護記録の入力をサポートするGem「ケア記録アシスト」のプロトタイプを開発し、現場で使っていただいてフィードバックをもらい、改善していくという流れを繰り返しました。

現場にはITツールへの苦手意識が強いスタッフもいたのですが、喋るだけで文章化される音声入力や、主観的になりがちな記録をAIが客観的な文章に整えてくれる体験を経て、意識が変わっていきました。ケアの合間に記録できるので、限られた時間内での記録完了という課題も克服できました。

佐野ポイントは、使い慣れたGoogle Workspace上で、専門知識なしに自然言語(普段の言葉)で扱える点です。特別な使用法を学ぶ必要がないため、心理的なハードルを下げられたと思います。また、経験や語学力の差に関わらず記録の質を標準化できるよう、事実に基づいてAIが文章を補完し、足りない情報があればAI側から質問を返して補う設計にしました。

大橋実証実験の初期に、AIが文脈などから推察して「言っていないケア内容まで自動で補足して作文してしまう」という問題がありました。これでは事実と異なる記録になってしまう可能性があるため、実際のケアに忠実な記録を出すようフィードバックしたところ、グーグルは翌日にはもう修正してくれたのです。このスピーディーな対応に「すぐ直った!」と現場スタッフも驚き、安心感へと変わりました。

作業時間の削減だけでなく
現場のチームワークにも効果

佐野 大樹氏
Google DeepMind
シニアスタッフ・リサーチエンジニア
佐野 大樹

――ケア記録アシストの導入によって、どのような成果が上がりましたか。

ケア記録アシストは、スマートデバイスで介護内容を音声やテキストの単語レベルで入力するだけで、記録案を作成してくれます。それを職員が確認して適宜修正し、介護ソフトに保存することで、記録業務が完了します。職員の半数程度は音声入力を利用しています。画面入力に苦手意識のある職員ほど、音声入力を活用して業務短縮につなげている傾向にあります。特に負担の大きかった夜勤帯では、これまで30~40分発生していた記録作成による残業がほぼゼロになるなど劇的な変化が生まれました。

大橋今まで平均4分かかっていた1回当たりの記録作成時間が3.3分へと約20%削減されました。スタッフ1人当たり月約3.5時間、全59の拠点で年間約3万時間を超える短縮が見込めることになります。今後習熟していけば、さらなる削減効果が出てくるでしょう。さらに、記録内容の質的な均一化も実現できます。

記録業務の時間短縮による負担軽減だけでなく、訪問件数が多いスタッフに、記録が終わった別のスタッフが声をかけてサポートする、といった助け合いが自然発生したのも大きな収穫でした。現場のチームワークと空気感がより良くなり、今まで以上に利用者に寄り添った介護ができるようになります。また、介護の現場には日本人だけでなく外国人のスタッフもいます。母国語で入力しても日本語と併記して記録案が生成されるため、言語の壁を越えた業務支援と語学学習・定着支援の両立にもつながります。

効率化を超え「人とつながる介護」へ
日本から世界の高齢化社会に貢献

――今後の展望を聞かせてください。

介護の本質は、その人らしい尊厳を守り、自立を支援することです。AIで蓄積した生活データを活用することで質の高いケアを実現し、利用者の状態悪化を防ぐことができます。また、記録や判断をAIが補えれば未経験でも現場で活躍できるようになり、介護への人材の参入ハードルが下げられますし、多言語対応は外国人スタッフの国家資格取得の支援にもつながり、言葉の壁を越えた介護人材の確保に役立ちます。AIの力でケアの質の向上と人手不足解消を同時に実現し、介護の未来を変えられるのではないかと期待しています。

佐野私たちが目指すのは単なる効率化ではなく、AIが現場で働く方のパートナーとなり、人と人をつなぐことです。日本が直面している高齢化社会は、将来世界中の国々が経験する課題でもあります。これからも日本の介護現場に貢献すると同時に、その学びを世界中の社会課題の解決に生かしていきたいと考えています。

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