ヨーロッパ野菜の地産地消で“さいたま”を活性化

地元レストランと若手農家の挑戦を下支えするJA南彩

流通・販売の課題も地元仲卸とJA南彩の協力で解決

 現在、さいたまヨーロッパ野菜研究会は、年間200人以上のシェフ・飲食店関係者が畑を訪れて、野菜のリクエストや評価を行い、それをもとに生産者が栽培している。トキタ種苗が栽培技術の指導や新品種の情報提供を行いながら推進しているが、この体制が軌道に乗ったのは、もう一つの課題であった販売・流通もうまくいったことが大きい。

黒澤邦嘉
黒澤邦嘉・JA南彩岩槻営農経済センター長(写真:佐藤久)

 活動当初は地元の青果商に依頼していたが、1個、1束という注文には採算が合わず応じてもらえなかった。個々のレストランの要望に対応しきれなくなっていた時に出会ったのが、埼玉県の業務用食材卸問屋、関東食糧だった。もともと県内約9000軒のレストランに米や醤油、油などを卸していたため、さいたまヨーロッパ野菜研究会の野菜も週4回という高頻度で一緒に届けてもらえるようになったのだ。さらに、関東食糧が仲卸として研究会のメンバーに入ったことで、生産者とレストランの距離は近いまま、生産者の事務負担や売れ残りなどのリスクは軽減、作付面積の拡大なども安心して行えるようになり、需要も増えた。

 また、2017年3月にJA南彩の岩槻農産物共販センターがオープンし、出荷場としてセンターの1区画と冷蔵庫を借りることができたことも大きかった。それまでは、メンバーの1人の自宅の軒先を出荷場にしていたが、キャパオーバーになっていたからだ。冷蔵庫が必要な夏場は特に厳しく、1人のメンバーにこれ以上負担をかけるわけにはいかなくなっていた。しかも、JA南彩から築地や大田市場に送るトラック便にさいたまヨーロッパ野菜研究会の野菜も安価で乗せてもらえることになり、都心や関西市場への流通もスムーズになった。

 「これまで配送は宅配便で送っていましたので、コストは大幅に下がりました。市場への配送では、JA南彩さんとは別の自分たちの仲卸の場所にまで運んでもらうという無理も聞いていただいています。運送コストはお客さまに請求していたので、コストが下がって注文していただくことも増えました。JA南彩さんの支援がなければ、ここまで伸びていないと思います」と小澤氏。黒澤邦嘉・JA南彩岩槻営農経済センター長は「組合員さんがどんどん生産高を増やせるように支えることはJAがやるべき役割。若い世代の活躍は地域の活性化にもつながるので、今後もできる限り協力していきたい」と話す。

JA南彩岩槻農産物共販センター
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ヨーロッパ野菜
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オープンしたばかりのJA南彩岩槻農産物共販センターの一画で出荷作業をするメンバー。段ボール箱にもさいたまヨーロッパ野菜研究会のスタイリッシュなロゴマークが入っている(左)、出荷されるヨーロッパ野菜(右)(写真:佐藤久)

ヨーロッパ野菜を使ったシェフ給食で子どもたちにもアピール

 約130万人という人口がありながら、消費地と生産地が10km圏内という近さにあるさいたま市。埼玉県は長ねぎ、ほうれん草、小松菜など産出額が全国トップクラスの野菜も多い。さいたまヨーロッパ野菜研究会の活動は、ヨーロッパ野菜の理想的な地産地消で、さいたまを活性化させようという狙いもある。さいたま市の市立小・中学校で、さいたまヨーロッパ野菜研究会の野菜を使って地元のシェフがイタリアンの給食を提供する試みは、毎回残菜率がゼロというほど子どもたちに大人気だという。埼玉県鮨商生活衛生同業組合が始めた、ヨーロッパ野菜を使った野菜すしも注目を集めている。

「アズーリ・クラシコ」の伊勢丹浦和店
北氏が経営するイタリアンレストラン「アズーリ・クラシコ」の伊勢丹浦和店のディスプレイ。さいたまヨーロッパ野菜研究会メンバーらを紹介するビデオが流れ、ヨーロッパ野菜をふんだんに使った彩り豊かなメニューが並ぶ(写真:佐藤久)

 さいたまヨーロッパ野菜研究会の事務局をさいたま市産業創造財団が担うなど、自治体も協力を惜しまない。2018年1月には「第2回さいたま市長杯 さいたまヨーロッパ野菜料理コンテスト」をキユーピー、キリンビールの協力で開催。今後も企業とのコラボレーションでさらにさいたまヨーロッパ野菜研究会の知名度を広げていく考えだ。このモデルを参考に青森県でも同様の取り組みが始まっているという。

 北氏の熱意に応じヨーロッパ野菜の生産を始めたメンバーは、平均年齢が35歳半ばという若い世代。当初は生産のリスクもあり、父親の代のねぎ栽培など、本業の傍らで細々と始めたメンバーがほとんどだった。しかし今では、メンバーの多くがヨーロッパ野菜の生産が主になっており、就農2年目でヨーロッパ野菜を始めるメンバーも出てきた。

 北氏は言う。「小学校の給食に使われているヨーロッパ野菜を見て『○○君のお父さんすごいね』と言われ、お子さんもお父さんの仕事ぶりを見て『将来農家を継ぐ』と言っているそうです。それは仕事が輝いているということで、その仕事の将来性につながっていくのだと思います。やりがいがあって、生産者も消費者もレストランもみんな喜んで幸せになっているのは、やはり地産地消を標榜するさいたまヨーロッパ野菜研究会の良さだと考えています」

 さらに、これまでのさいたまヨーロッパ野菜研究会の活動には、JA南彩の様々なバックアップがあった。シェフたちとの打ち合わせのための会議室提供をはじめ、補助事業の申請支援、出荷、流通、そして地域の農産物の販促イベントなど多岐にわたり、それらが成功の下支えになっていることは間違いない。

 「イベントで地域の野菜を展示する時にも、ヨーロッパ野菜はカラフルで見栄えが非常に良く、来場者からの反響も大きかった。南彩地域でこういった素晴らしい野菜が採れることはJA南彩としてのPRにもなります」とJA南彩営農支援課の藤村直史課長。そんな相乗効果は、さいたまヨーロッパ野菜研究会の新たな取引先となった野菜宅配のオイシックスが、その縁でJA南彩の小松菜を扱うようになるといった形にも表れている。さいたまヨーロッパ野菜研究会の活動は、農家の独立した活動をいかに地元JAがバックアップして地域活性化につなげるかという部分でも理想的な事例といえるだろう。