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2018.02.26
文=林愛子
JA周桑が位置するのは愛媛県東予地方の西条市。西日本最高峰の石鎚山を筆頭とする石鎚山系に囲まれ、地下水が豊富な土地だ。
2006年3月に開業した「周ちゃん広場」は直売所として四国最大級の広さを誇る。年間の客数は約100万人、売上げは約20億円。これは全国にあるJA直売所のなかでもトップクラスだ。オリジナル商品「周ちゃんのおこめん」は、周桑産の米「ヒノヒカリ」を使った麺で、アスパラやいちごなどの周桑産農産物とともに店頭に並んでおり、飲食コーナーではおこめんをラーメンなどで食べることができる。
JA周桑の代表理事組合長である戸田耕二氏は「周ちゃんのおこめん」にかける思いを次のように語る。
「周ちゃん広場から周ちゃんブランドを発信していきたい。その象徴となる商品が『周ちゃんのおこめん』で、国内にとどまらず海外にも売り込んでいこうとしています。なぜなら、自分たちのコメが世界進出するというのは夢のある話だから。農業を取り巻く環境は厳しいですが、夢があれば頑張る意欲も湧いてきます。おこめんをきっかけに、周桑の農業を活性化させ、地域に活力を与えたいと考えています」
JA周桑管内では古くから米麦の生産が盛んだった。現在も春から秋にヒノヒカリなどの米を栽培し、そのほかの期間でハダカムギを作っている農家は多い。近年は果樹類も作っており、愛媛県全体では消費過多ながら、周桑地域は消費より生産が勝る食料供給地だ。
しかし、米にしても麦にしても、生産者を取り巻く状況は厳しい。特に米は食の欧米化などを背景に、総需要量が1962年をピークに減少する一方、1人当たりの年間消費量も年々少なくなっており、2016年度は往時の半分程度の54kgだった。ライフスタイルの多様化が進み、人口も減少する中で、これから総需要量や消費量をかつての水準に戻すことは不可能に近いだろう。
量の問題だけではない。販売価格も下落が続いている。最近は、「ゆめぴりか」や「つや姫」など新しいブランド米が開発され高く取引されている一方で、そのほかの品種の下落幅が大きい。また、品種改良や栽培技術の向上により、ブランド米に限らず、総じて米の品質は高い。いまは、特に主食用米の価格をいかに維持していけるかが課題となっている。
ヒノヒカリは西日本で多く栽培されている品種で、東日本での流通量は多くない。JA周桑の出荷先も西日本が中心だ。生活部長の竹田博之氏によれば「最近では、沖縄など地元以外での消費も増えつつある」という。
「愛媛県産ヒノヒカリは日本穀物検定協会の『平成26年産米食味ランキング』で最高ランクの特A評価を受けました。いわゆるブランド米と比べても遜色ない美味しさだと認められはじめたのだと思います」(竹田氏)
しかし、市場で高値取引されるためには食味だけでなく、存在感、つまり一定以上の出荷量が要求される。代表理事専務の山内謙治氏によれば、JA周桑管内には最盛期に水田が3000ヘクタールあったが、減反政策や生産調整の影響もあり、現在は2000ヘクタールほどになったという。出荷する米は年間13万袋(1袋30kg)。並みいる競合を押しのけて、小売店の棚を勝ち取れる規模ではない。
味には絶対の自信がある。しかし、市場ではブランド米の後塵を拝する。このままでは稲作が立ち行かなくなってしまうのではないか――。生産者や関係者が胸中にそんな危機感を抱えているなかで、米の加工品というアイデアが現実味を帯びた。生産量を維持するために、売り方の選択肢を増やそうという発想だ。