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2025.07.24
文=茂木俊輔
スイカは石川県の特産品の一つ。農林水産省の統計調査によれば、2023年産の収穫量は1万2200tと都道府県別で10位に入る。熊本、千葉、山形のトップ3が2~4万t台と群を抜くのに対し、続く4~10位には1万t台がひしめき合う。

その石川県の中核産地が、JA金沢市の管内だ。営農経済部部長の井納拓樹氏は「県内では収穫量も販売額も飛び抜けて多い。県全体の約7割を占めます。海岸に近い砂丘地の一帯が主な産地です」と説明する。
砂丘地の水はけの良さ、さらに昼夜で寒暖差の大きい気候が、甘みと水分のバランスや果肉のシャリ感を生み出す。品種は、大玉向きの「祭ばやし」。地域の特性に適した品種として独自開発した「祭ばやしNK」が主力だ。
それが、産地に潤いをもたらす。2024年産による平均農業所得は1経営体当たり1500万円に上る。農水省の統計調査によれば、全国の平均農業所得は全ての主業経営体で見ると2023年実績で404万円。3倍以上の差がある。
背景には、産地としての再起を誓った生産者の願いがある。
約20年前、高齢化で担い手が減り、作付けを取り止める生産者も出始めていた。そこに、冷夏が追い打ちをかける。収量は大幅に減り、販売額は従来の半分にすぎない5億円台にとどまったのである。
しかも当時は、生産にマーケットインの発想はなく、完全なプロダクトアウト。「収穫した商品を産地の都合で出荷するだけ。市況を見ながら高く売れる市場を選ぶ程度の販売戦略しか持ち合わせていませんでした」(井納氏)
営農継続への不安が産地を覆い、危機感が渦巻く。
しかし、危機感の共有が、逆に打開策の実行に結び付く。「産地として継続を決意したことで気持ちが吹っ切れたのです」と井納氏は解説する。
そうした難局を乗り越えた先に、いまがある。スイカで稼げることが実証されると、親元を離れた若手が戻ってきて就農したり、生産者の子世代が結婚を機に就農したりする例が見られるようになってきた。
西瓜部会で部会長を務める太平武士氏も、その一人。もとは会社員だったが、30歳の時に結婚したのを機に妻の実家でスイカ生産に携わる道を選んだ。12年前のことだ。

若手にとっての魅力は、所得水準の高さだけではない。産地に新たに根付いた若手に任せる文化もある。「スイカは子に任せ、野菜は親がみる、というのが習わしです。大事な品目を任せることで、経験を積ませる狙いです」(井納氏)
任せられれば、失敗もする。しかし、学びは大きい。
太平氏の失敗は、ある年に交配せずに実を結ばなかったこと。「義父からは叱られず、『また来年や』と一言で終わりました。しかし自分としては、悔しい。考えられる原因を、一つ一つつぶしていく作業を始めました」
そこから、太平氏は生産管理の仕方が間違っていることに気付く。やるべきことを列挙し、修正を試みる。しかし、そのチャンスは年1回だけ。毎年、試行錯誤を重ねる中で、修正の是非を地道に確かめていくしかない。
答えが出たのは、5年後だ。「そこで品質の高いスイカが出来た時に初めて、それまでの取り組みが間違っていなかった、と証明されるのです。そこでようやく、報われた気持ちになれました」(太平氏)

時を経て2024年。部会は過去最高の販売額をもたらした。2024年産は1㎏当たり259.8円。販売額はやはり過去最高の15億8000万円に達する。市場の支持を得た要因は、食味や食感の良さだけではない。