PR (supported by JA)
2022.10.03
文=茂木俊輔
家庭用主食米の主戦場はいま、スーパーだ。売り場には、10kgや5kgの袋が積まれ、2kgや1kgの小袋が並ぶ。ざっと眺めれば、存在感を放つのは「コシヒカリ」。産地は様々だが、新潟県の魚沼産ともなれば、売り場で最高値がつく。
その中で健闘を見せるのが、日本有数の米所を産地とするブランド米である。北海道産の「ななつぼし」や「ゆめぴりか」は、その一つ。東京圏のスーパーでも、2010年代ごろから売り場で目にするようになった。
2つのブランド米は2010年以降12年連続で食味ランキングの最高評価「特A」を獲得し続ける。このランキングは一般財団法人 日本穀物検定協会が毎年実施するもので、専門の評価員が試食し、基準米との比較で相対的に評価する。
こうした北海道産のブランド米を生み出す産地の一つが、道央の空知と呼ばれる一帯だ。JAピンネはそのど真ん中で、「選ばれる米づくり」に挑んできた。
産地間競争を生き抜くための武器となるブランド米は3銘柄ある。作付面積が道産米の半分を占める主力の「ななつぼし」、栽培技術の粋を集めた道産米の最高峰である「ゆめぴりか」、道央から道南にかけての一部の地域で限定生産される「ふっくりんこ」だ。

「ふっくりんこ」も、2014年から16年までの3年間と2019年から21年までの3年間は、食味ランキングの最高評価「特A」を連続で獲得している。

狙うのは、主食用米の中でも業務用ではなく家庭用の市場攻略。家庭用は業務用に比べ、販売単価が高い半面、品質への見方は厳しくなる。代表理事組合長の鎌田和久氏は「家庭では、5kgや10kgなど購入した分量がなくなるまで毎日、同じものを食べ続けることになります。食味が悪ければ、苦痛以外の何ものでもない。そうならないようにすることを第一に心掛けています」と、食味第一主義を掲げる。
品質を問う上で見過ごせないのは、その安定性だ。購入した5kg米をおいしいと感じても、次に購入した同じ銘柄の5kg米においしさを感じなければ、消費者には選ばれない。「次回も選んでもらうには、前回も今回もおいしくないといけない。そういう品質の安定した米を消費者に届けることが重要です」(鎌田氏)。
米の1人当たり年間消費量は1962年度をピークに減少の一途をたどる。農林水産省のデータによれば、2020年度はピーク時の半分にあたる50.8kgという。今後の人口減少を踏まえれば、回復の見通しは立てにくい。しかも、需要減が続く主食用米の中でシェアを伸ばしているのは、中食・外食向けの業務用。家庭用は苦戦を強いられている。
「時代に逆行していますか? しかし、勝算はあります」と鎌田氏。家庭用で市場開拓の余地を見込む一つの理由は、家庭用のシェアの高さという。
農林水産省や公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構のデータによれば、米の消費における中食・外食の割合は確かに伸び続けているが、家庭内の割合はそれでも2020年度で依然として7割近い。鎌田氏は「主食用米の市場全体で見れば、需要の中心はまだ家庭用です。私たちは、そこで生き抜いていきたい」と訴える。
追い風も吹いているとみる。新型コロナウイルス禍を背景とする米の宅配需要の増加だ。「例えば生活協同組合が米の宅配事業を展開する中、宅配向けへの出荷量が実際に伸びています」。鎌田氏は消費行動の変化にも期待を寄せる。
選ばれる米づくりに向けた改革には、1990年代半ばから取り組む。
北海道の米は当時、作付面積や収穫量こそ新潟の米に匹敵する規模だったが、品質に対する評価はそこまで高くなかった。「『ほっかいどう』をもじって、『やっかいどう』米と、揶揄されていた時代もあるほどです。品質上の問題から売り先が見つからず、米卸からは『厄介』もの扱いでした」(鎌田氏)。
主力の銘柄は「きらら397」だった。牛丼をはじめとする丼物に向くと言われ、業務用の市場では高い評価を得ていた。しかし一方で、家庭用の市場を切り開いてきた品種改良米はまだ誕生していなかった。「ななつぼし」「ふっくりんこ」「ゆめぴりか」という次世代を担うブランド米が登場するのは、2001年以降のことである。
こうした時代背景の下、JAピンネの前身である3つのJAが連携してまず手を付けたのは、全組合員の圃場を対象とした土壌断面調査である。調査結果は水田の改良や適地適作の徹底に活かした。また食味改善試験圃を設置し食味と施肥の関係を調査・研究する一方で、土壌分析センターを開設し、全組合員の圃場で土壌診断を行う体制を整えた。土壌診断の結果は、適切な施肥指導に活かしてきた。