30年続く企業連携。沖縄産ハーブを食卓へ!

エスビー食品、生産者と三位一体で一大産地を創生したJAおきなわ

冬場に沖縄でフレッシュハーブを調達しようと考えたエスビー食品と、作物転換を模索していたJAおきなわ(当時はJA小禄)の思惑が合致しスタートしたハーブの契約栽培。現在まで30年以上続く協業には、買い手と売り手の関係性を超えた揺るぎなさがある。両者の連携がここまでうまくいったのはなぜか。その理由を探る。

需要に生産が追いつかないフレッシュハーブ

 トマト味のピザやパスタなどに添えられるバジル、エスニックな風味が人気のパクチー、イタリアンサラダに欠かせないルッコラなど、今やレストランや居酒屋で当たり前に見かけるフレッシュハーブ。最近はスーパーの野菜売り場でも多くのフレッシュハーブが並び、家庭料理でも利用されるようになってきた。

エスビー食品 ハーブ事業部 ハーブ供給ユニット チーフエキスパート 竹井亨氏

 フレッシュハーブが広く認知されるようになったのは、1990年代のイタ飯ブーム、2000年代のエスニック料理ブームが大きく影響している。また、気軽に誰でも海外旅行に行けるようになり、本場の味を知る消費者が増えたことも大きい。このような市場環境もあり、フレッシュハーブの需要は増加の一途をたどる。エスビー食品 ハーブ事業部 ハーブ供給ユニット チーフエキスパート 竹井亨氏は、「日本の洋風スパイス&ハーブの使用量は米国の約10分の1、1人当たりの消費金額でも欧米の約5分の1といわれています。和食文化があるので同等にはならないとしても、まだまだ拡大の余地があるとみています」と語る。

ミニコラム:ハーブとは

 ハーブは香草ともいい、食用や薬草として役に立つ香りのある植物を指す。植民地時代に熱帯アジアから運ばれた、欧州で自家栽培できない植物の種子や根、樹皮などを原料とするスパイスに対し、ハーブの多くは古くから欧州で自生していた植物の葉、花などを原料とする。

 日本で需要が多いハーブは、前述のバジル、パクチー、ルッコラ。他に、ハーブティーに多用されるミント、肉料理と相性がいいローズマリーやクレソン、タイ料理に欠かせないレモングラスなど、その種類は非常に多い。

エスビー食品が販売するフレッシュハーブ

 フレッシュハーブは生鮮品であり、香りが重要なこともあって鮮度が極めて重要だ。そのため国内生産が基本となる。しかし、国内の産地では高齢化などにより生産者数が減少している。需要が伸びる一方で、必ずしも生産量が応えきれていないのが現状だ。

エスビー食品のフレッシュハーブ事業における最大の産地・沖縄

 カレーとスパイスを中心に日本の食卓に新しい味を広めてきたエスビー食品は、1987年、新たにフレッシュハーブ事業に乗り出す。これまで日本でハーブといえば、ほぼ瓶詰の乾燥させたドライハーブしかなかった時代。その先駆的な取り組みは業界で注目されたが、フレッシュハーブの認知は低く、使い方を提案しながら徐々に市場を拡大してきた。

 同社のフレッシュハーブは全量国内生産だ。ハーブの種類や季節によって生産適地があり、全国約40カ所で契約栽培を行っている。そのうちJAおきなわが担うのは、主に冬場の生産だ。竹井氏は、「本州で冬場にバジルを生産しようとするとハウスの加温が必要です。しかし、沖縄では加温なしで安定的に生産でき、コストを抑制できます」と説明する。

 現在JAおきなわでは約20人の生産者がハーブを生産。7割がバジルで、他にパクチー、ミント、タイムなど計11品目を生産している。1989年からエスビー食品との契約栽培を開始。JAおきなわ管内でのフレッシュハーブの生産量は、エスビー食品の全販売量の約1割に上り国内最大だ。

JAおきなわハーブセンターでの仕分け作業

生産物を売り切るための様々な取り組み

JAおきなわ 小禄支店 経済部 部長 照屋強氏

 フレッシュハーブの生産は、まずエスビー食品が販売計画を立案するところから始まる。それに基づき集荷計画を割り出し全国の産地に注文。JAおきなわは注文に合わせて生産計画を立て、各生産者に割り振る。各生産者は生産・収穫したものを、「JAおきなわエスビーハーブセンター」へ納品。納入後はJAおきなわが担当し、品質チェックとパッキングを行った後、エスビー食品が指定した納入先に発送する。JAおきなわ 小禄支店 経済部 部長 照屋強氏は、「JAの契約農家が栽培したハーブの取引先はエスビー食品1社のみで、他の取引先に対して販促活動をする必要がないので、生産に専念できます」とそのメリットを語る。

 農産物は気候などの外部要因によって数量や品質など必ずしも計画通りに収穫できない。そこが工業品とは大きく異なる部分だ。生産計画のオーダーに応えるため、JAおきなわはオーダーを受けた数量の110~120%が収穫できるよう計画を立案している。生育状況や市場動向に合わせて、臨機応変な対応も必要だ。そこで、栽培期間中は毎週JAおきなわとエスビー食品で情報を共有し、早めの対処をしている。それでも収穫量の余剰が出そうな場合は、エスビー食品がフレッシュハーブの消費拡大(プロモーション)など営業を強化、集荷数量を増やすよう動く。さらに竹井氏は、「当社は国産バジルを使った『ジェノベーゼソース』といった加工品も製造しており、その原料としても生かしています」と語る。

 不確定要素の多い農業生産において、JAおきなわが生産者と共に契約を履行できるよう努力すると同時に、セーフティーネットとなる加工品や販売力を持つエスビー食品だからこそ、生産者が丹精込めて栽培したフレッシュハーブをロスにせず商品にしようとする。契約栽培のフレッシュハーブを買い上げるだけでなく、その先にあるエスビー食品の企画創出力やハーブの価値を流通・拡散させる努力が、協業が30年以上続いた理由の一つかもしれない。

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左 きれいに仕分けされたフレッシュハーブは、温度管理が重要だという
右 全国に出荷されていく箱詰めされた状態のフレッシュハーブ