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2019.12.17
文=長田真理
JAにしうわは愛媛県北西部、日本一細長い佐田岬半島とその付け根辺りに位置する。海岸近くまで山が迫り、稲作や畑作には適さない地域だ。一方で年間の平均気温が17度と温暖で日照時間も長く、柑橘類にとっては生産適地。そのため、販売高のほとんどが柑橘類という全国でも珍しいJAだ。
中でも温州みかんの生産量は約3万5000t(2018年度)と、県内シェアの5割を占める。JAにしうわの温州みかんブランド「西宇和みかん」は、全国的に流通するトップブランドの一つで、柑橘王国愛媛をけん引する存在だ。


しかし、多くの生産地同様ここでも生産者の高齢化、後継者不足が課題となっている。少しでも作業負担を軽減するため、水やりや防除にスプリンクラーを設置するなど省力化の取り組みを進めているが、果物という繊細な作物を栽培するため、自動化にも限りがある。特に11月から12月にかけて行う収穫には多くの労働力が必要だ。JAにしうわ 農業振興部 部長 菊池文雄氏は、「以前は多くの農家が親戚や知人に手伝いに来てもらっていました。しかし、そういう援農者も高齢化で手伝いができなくなってきました。代わりの人は簡単には見つからないし、どう労働力を確保するかが大きな課題となっていました」と語る。
この課題を克服するため、1994年、真穴地区の生産者が独自に協議会を立ち上げアルバイター募集を開始した。初年度の受け入れ人数は32人だったが、2012年ごろには100人以上が集まるようになる。しかし、個々の農家の取り組みでは限界もあり、2014年、JAにしうわが「西宇和みかん支援隊」という組織を立ち上げた。JAにしうわは無料職業紹介の認可を取得し、地域全体として求人に乗り出した。
同時にアルバイターが気持ちよく働けるよう、環境整備も進めた。宿泊施設がなければ遠方のアルバイターに来てもらえないため、廃校の活用を八幡浜市と協議し、88人が利用できる宿泊施設「マンダリン」として改築。生産者宅へのホームステイや、空き家を利用したシェアハウスも増やした。また、畑の近くにトイレがないと移動時間が無駄になるので、地域の各所にトイレの設置を呼び掛けた。
アルバイターの食事と宿泊はすべて受け入れ農家が負担。食事は生産者が用意する場合もあれば、自炊者に費用や食材を提供する場合もある。希望者にはJAにしうわが食事を配達しており、繁忙期の炊事の負担軽減にもつながっている。労災保険にも加入し、交通費は期間満了後に上限2万5000円で支給。時給は、みかんの収穫選別のみが850円、積み込みや運搬まで行うと1050円だ。「時給は決して高いとはいえませんが、食費と住居費がかからないのでアルバイターにとって満足度は高いと思います。働きぶりが良かった人に繰り返し来てもらえるよう、3年目からは時給を上げるようにしています」と菊池氏。生産者側は、アルバイター1人の紹介につき5000円の負担金を地区協議会に支払う。募集の手間をかけることなく人材が確保できると、喜ばれている。働き手リレーにかかる費用は、生産者が負担するアルバイター1人あたり5000円ではまかないきれないが、その分は行政やJAの助成金を充てる。
アルバイターのとりまとめはJA無料職業紹介が行い、両者の希望を聞きながら、JA無料職業紹介がアルバイターを各生産者にマッチングしている。ただし、1~2カ月間、朝から晩まで一緒でかなり親密になるため、来シーズンも来てほしいアルバイターに対しては生産者が声を掛ける。菊池氏は、「関係性が良ければ、生産者が声を掛けた方がまた来てくれる可能性が高まります。本人がその年は都合が悪く行けなくても、知り合いを紹介してくれるケースも少なくありません。一方で生産者からアルバイターを変えてほしいとか、アルバイターから職場となる生産者を変えてほしいと相談されることもあり、なるべく希望に沿うよう対応します」と語る。
2019年には約350人のアルバイターを迎え入れた。20代は自分探しの一環で参加される人が多く、60代は定年退職された人が多い。期間途中で辞めるアルバイターもいるがごくわずかだ。中には西宇和での就農を希望する人もおり、就農支援も実施。2016年からの3年間で既に9組が新たに就農した。さらに5人の研修生が、就農を目指している。
多くのアルバイターと接するうち、菊池氏は「全国各地で季節労働を繰り返す人たちは、各職場で出会った人たちと情報交換し、次の仕事を探している」ことに気づく。そこで、そのタイミングを活用した勧誘で効率よく労働力を確保できると考え、アルバイターに会うたびに「どこから来たの?」と「どこに行くの?」という質問を繰り返した。そうして浮かび上がったのが、北海道の富良野と沖縄の離島だった。
JAにしうわ管内でのみかん畑での仕事は11~12月の1カ月半程度。その前の4~10月はJAふらの管内でジャガイモやメロン、ミニトマトなどの定植や管理、収穫の仕事をしていた人が多かった。年が明けてからの1~3月はJAおきなわ管内の離島へ行き、さとうきびの収穫や製糖工場で働くという人も多かった。その他、群馬や長野の高原野菜の収穫をしていた人も少なくなかったが、これらは生産者個人がアルバイターを募集し受け入れているためコンタクトが難しい。「富良野と沖縄はJAとしてアルバイター確保に取り組んでおり、窓口が分かりやすく、相互協力をしやすかったのです」と菊池氏は振り返る。
JAにしうわは「西宇和みかん支援隊」を作る以前の2012年から、JAふらのとJAおきなわを訪問。募集説明会やチラシの配布などを行い、互いの生産者の募集活動をサポートしてきた。3JAは繁忙期が重ならず働き手リレーをつなぐことができるため、協力関係を次第に強化。東京などで行う募集説明会の共同開催やウェブサイトへの相互リンク、人材募集サイトへの共同掲載なども行っている。
産地にとっては募集にかかる手間やコストの削減と、他の産地でスキルの高い人材を囲い込むといったメリットがある。一方アルバイターにとっては、次の仕事探しや、応募・面接にかかる負担の軽減ができる。個人の雇用主に応募すると、相性が悪かった場合は我慢するか辞めるという選択肢しかない。JAが間に入っていればある程度の要望を聞いてもらえ、安心して就労できるといったメリットもある。富良野、西宇和、沖縄の3カ所を全部回る人はまだ多くないが、2019年は約10人の希望者が出ている。
3JAはこの連携を継続的な仕組みとするため、2019年2月15日「農業労働力確保産地間連携協議会」を設立した。協議会の設立により、希望者の情報を本人の承諾を得て共有すること、3者間で移動したアルバイターに対しては謝礼を払うことを取り決めた。