コロナの出入国規制が直撃!? 外国人材争奪戦

~優秀な外国人を招き、育てる極意、JA香川県

あらゆる産業で労働力不足が進む日本。なかでも農業の人手不足は深刻だ。JA香川県は管内の生産者と手を携え、2000年頃から本格的に外国人材を受け入れてきた。しかし、コロナ禍により外国との往来が困難に。一転、多くの課題を抱えることになった。現況報告のほか、優秀な外国人材獲得のノウハウや、“やる気”を引き出すポイントなど、長年にわたる外国人材の活用法を紹介。グローバルな人材争奪戦に挑む、JA香川県の取り組みをリポートする。

コロナで外国人材の出入国がストップ

 JA香川県は外国人材の活用に積極的な取り組みを行っており、近年の香川県では毎年農業分野で800名超の人材を受け入れている。管内にはJA香川県と連携した農業技能実習生を受け入れる監理団体があり、その1つであるファーマーズ協同組合では常時約200名を受け入れてきた。労働力不足に悩む県内農家を支えてきたが、それがコロナ禍により一変した。

技能実習制度とは

 外国人技能実習生(以下、実習生)には「団体監理型」と「企業単独型」があるが、ここでは団体監理型の制度を紹介する。送出国の送出機関で募集・選考した実習生を、国内の非営利の監理団体(事業協同組合など)が受け入れ、会員の受け入れ企業に送る。受け入れに当たっては、入国管理局の許可が必要だ。

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 実習生受け入れの職種や作業内容は細かく決まっており、農業の場合、畑作や果樹、畜産など80職種、144作業に限られる。労働条件や最低賃金は基本的に日本人労働者と同様の扱いが求められるが、法令に従って立案した技能実習計画に基づき、適正に実習を行う必要がある。

ファーマーズ協同組合 理事長 近藤隆 氏

 ファーマーズ協同組合は、新たな実習生を年4回、各30名程度受け入れてきた。しかし、2020年はコロナ禍によって5月と8月の受け入れができなかった。理事長 近藤隆氏は、「次の11月に受け入れられたとしても、5月と8月に来る予定だった人と合わせると、1回あたりの人数が大幅に増えます。一堂に会した集合研修の場所がありません」と困惑を隠せない。このタイミングで規模を拡大し増員を予定していた農家では、入国者が減ったため収穫しきれない事態にも陥った。

 実習生は3年目が終了すると一時帰国し、実習を継続する場合には再来日が必要だ。しかし、海外往来がストップしたため、母国に帰国できない実習生が続出した。国は6か月間の就労が可能な「特定活動」ビザを用意。同組合では帰国できない人の今後の希望を聞いて書類を作成し、必要な手続きを実施したがその手間はかなりのものになった。

 新実習生の受け入れ面接は、従来は受け入れ農家が送出し国に出向いて行ってきた。それが叶わなくなり現在はやむなくリモートで実施。選考に支障をきたしている。近藤氏は、「面接は顔や話だけでなく、服装や立ち居振る舞いを含めた“人となり”を判断しています。リモートでは、そこがわかりません」と語る。

 コロナの感染拡大が問題になり始めた3月頃の新実習生には、自主隔離も必要になった。他の実習生がいる宿泊所に一緒に入ってもらうわけにもいかず、2週間のホテル代を本人や農家が負担するのも厳しい。そこでこのような現場の声を受け、JA香川県は自主隔離のホテル代に対する補助金を今後用意することにした。

 現在もコロナによる課題は山積しているが、今後が見通せないので対処のしようがないというのが正直なところ。近藤氏は、「帰国できるようになって母国に帰国した人が、再来日できなくなるのが一番困ります。また、許可が下りているのに来日できない日々が続くことで、日本に行くこと自体を諦める人が出てくることが怖い」と不安を漏らす。

複数国からの受け入れで実現したリスク分散と運用メリット

JA香川県 営農経済部門 本店経済部 部長 北岡泰志 氏

 JA香川県管内で外国人材の受け入れを始めたのは1995年に遡る。当時の担当者で、現JA香川県 営農経済部門 本店経済部 部長 北岡泰志氏は、「当初は1年間が上限で、草の根の日中交流活動として始めました。その後、技能実習生制度が変わっていき、労働力として受け入れる方向にシフトしていきました」と語る。

 その節目となったのが2000年だ。国の制度改正により、農業分野で3年間の受け入れが可能になった。そこでJA香川県が監理団体となり、本格的に実習生を受け入れることにした。当時は実習生を違法な低賃金で長時間働かせる企業もあり、社会問題となっていたことから、「JAが取り組む以上、法律違反はできません。実習生を受け入れる生産者にも制度を十分理解してもらい、慎重に進めました」(北岡氏)。

 2000年はちょうど県下の43JAが集まって、新生のJA香川県がスタートした年でもあった。当時の雰囲気を「JA香川県としても、さあこれから頑張るぞと意欲的で、熱心に取り組みました」と北岡氏は語る。

 監理団体であるJA香川県は、主に相手国や送出機関との調整や、煩雑な事務手続きをサポート。担当の北岡氏は、ほぼ24時間体制で実習生の面倒を見た。「深夜に外国人が道を歩いていると、警察官から職務質問を受けることがあります。その際、在留カードを持っていないと警察から連絡が来てしまうのです。失踪した実習生が他の土地で見つかることもあり、すぐに引き取りにいかねばなりません。即対応しないと失踪事案は監理団体にとってペナルティーとなるからです。夜中に車で神奈川県まで迎えに行ったこともあります」(北岡氏)。

 現在ファーマーズ協同組合では、カンボジア、ラオス、ベトナム、フィリピンから受け入れている。これらの国は仏教国で日本文化と親和性があり、日本のODAで多くの公共インフラが作られたこともあって親日国であることも大きい。以前受け入れていたインドネシアからは受け入れていないという。イスラム教徒で食事制限も多く、限られた施設での共同生活が難しかった。

外国人実習生により出荷作業が行われた赤玉ねぎ。善通寺市が香川県内の主な産地の1つだ。

 順調に実習生の数が増えた一方で、課題も生まれた。JA香川県は正組合員が6万人を超え、大多数が兼業農家だ。そのため、農業分野以外でも実習生を活用したい組合員が現れた。農業以外での活用は計画上は違法だが、JAが完全に管理するのは難しい。万一問題が起き監理団体として不適格と判断されてしまうと、県内の外国人材供給がストップする。そこで2010年、受け入れ農家で組織する事業協同組合に業務を引き継いで任せることにした。その1つが前出のファーマーズ協同組合で、坂出エリアを除く県内の法人・個人の農家全58戸により構成されている。