年間40haの農地貸借契約は、なぜ進んだ?

~農地流動化に挑み続けるJA紀南

土地には宅地や山林など、地目(ちもく)と呼ばれる種類がある。田、畑など農地は食料生産の基本となるもので、簡単には転用できないよう法律で守られている。一方で、生産者の高齢化が進む現在、営農が困難になり遊休農地が増えているのも事実だ。生産者と農地の減少に直面しながら、農地流動化に挑み続けるJA紀南の取り組みを紹介する。

生産者と農地の減少に悩むJA紀南

 JA紀南は和歌山県田辺市と西牟婁郡(にしむろぐん)一円の9JAが合併し、2003年に発足した。近海を黒潮が流れる紀伊半島の西岸に位置し、気候は温暖多雨。梅やかんきつ類など果樹栽培がJA売上全体の約8割を占める。最大の産品は、売上全体の半分以上に達する「紀州梅」だ。梅酒の原材料として販売する他、梅干し、シロップ、ジャム、ドライフルーツなど加工食品も独自で開発してきた。

JA紀南がある和歌山県田辺市は、梅のブランドである紀州梅に加え、温州ミカン・中晩柑、スモモ、花き、野菜、茶などの栽培も盛んだ
JA紀南 指導部 部長 兼 食品安全分析センター長 谷口光宏 氏

 だが、近年は年間70~80戸が離農。農地も年に約50haずつ減っており、生産者・農地の減少に悩む。高齢化で生産者が離農し、子弟も農業を承継しない場合、農地を誰かに売るか貸すかしないと遊休農地になってしまう。遊休農地は、雑草が生い茂るため害虫発生の原因になる。周辺農地が迷惑を被り、地域にとっても悩ましい問題だ。農地は洪水など災害を防ぐ機能も担うが、管理が行き届かないとその機能を損なう可能性がある。さらには、廃棄物の不法投棄、野生動物の行動圏になるなどトラブルは絶えない。

 JA紀南 指導部 部長 兼 食品安全分析センター長 谷口光宏氏は、「すべてを守ることは難しいですが、優良農地はなんとしても守らなければなりません」と語る。

相対による貸借から仲介による貸借にシフトする農地流動化政策

 農業は土地がなければ成り立たない産業だ。人は食べ物がなければ生きていけない以上、社会生活を営むうえで農地は重要だ。農地は石や木の根など障害物がなく、区画が整備され、水利設備が整っていなければならない。土質も作物の生育に大きな影響を及ぼす。農地を宅地や工業用地に転用するのは簡単だが、一度他用途に転用すると、作物が育つ土地に戻すのは容易ではない。

 そのため簡単には転用できないように、農地法によって守られている。所有権や貸借権を移転する場合は、市町村に設置された農業委員会(農地に関する事務を執行する行政委員会)の許可が必要だ。また、農地転用の場合、都道府県知事等の許可がいる。

 遊休農地増加等の背景を受け、2009年、国は「農地法」を改正。一定の要件を満たせば、農業生産法人(当時)以外の一般法人も貸借でき、貸借権を取得できる個人・法人の範囲を拡大した。さらに同年、農地を面的にまとめて効率的に利用できるよう、農地利用集積円滑化団体が農地の仲介を行う「農地利用集積円滑化事業」を措置した。

 2014年には全都道府県に設置された「農地中間管理機構(農地バンク)」において「農地中間管理事業」が開始され、農地の中間的受け皿として、農地を借りたい人と貸したい人の仲介を始めた。現在は「農地利用集積円滑化事業」は「農地中間管理事業」に統合一体化されている。