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2022.08.23
文=高田慎治
戸塚駅近く、緑が映えるUR賃貸住宅「コンフォール上倉田」。火曜日の午前9時半に訪れると、団地内の広場に住民が集まってきた。お目当ては、JA横浜の移動販売車「ハマッ子マルシェ」。横浜産を表す「ハマッ子」をキャラクターにした男の子(大地)と女の子(みのり)の暖簾が風になびく中、買い物客は旬の野菜を次々と買い物カゴに入れていく。特長を記したPOPに目を止め、販売員と会話を楽しむ人も多い。

「駅近くのスーパーまで歩き、重い野菜を買って帰るのは大変。移動販売車が来てくれてとても助かっている」と高齢の女性。「採れたてのトウモロコシやエダマメなど新鮮な野菜が手に入るのは嬉しい。やはり鮮度が全然違う」と笑顔で語るのは小さな子供連れの女性。「販売員から野菜の食べ方を教えてもらったり、逆にこうして食べたらおいしかったと伝えることもあります。趣味や旅行など何気ない話も聞いてくれて、コミュニケーションがとれるのも、ここに来る楽しみの1つですね」と常連の女性は語る。
「ハマッ子マルシェ」の取り組みは販路拡大とともに、都市農業における生産者と消費者の新しい関係づくりに向けたチャレンジでもある。

「ハマッ子マルシェ」誕生のきっかけは、2020年7月の横浜市役所内での出張販売だ。JA横浜 販売部 部長 横田佳典氏は当時を振り返る。「JA横浜として、直売所以外に販路を広げるべく、横浜市から市役所内で出張販売を行う許可を得ました。非常に好評で、現在も毎週木曜日に実施中です。市役所の隣のビルにUR都市機構の本社があったことから、URの従業員もお買い物に来てくださいました。そうした交流の中で、『ぜひURの賃貸住宅でも出張販売を行って欲しい』というお話をいただきました」。
2020年11月、URとJA横浜は、団地住民の買い物支援策などで連携協定を結んだ。JA横浜は移動販売車を導入し、UR賃貸住宅「サンヴァリエ日吉」で実証販売を実施。「2時間で15万円の売上を得たことで、『これならいけるのではないか』と思いました。周辺には坂道が多く、買い物に不便な環境だったことも売上を伸ばした要因だと思います。出張販売では、周辺環境が重要になるため、その後、URと場所の選定を行いました」と横田氏は話す。
運用面で気づきもあったという。「開店後の2時間にお客様が集中しました。同じ場所で長時間販売するよりも、1日に複数箇所を回るほうが売上につながることが分かったのです。平日も土日も来客数に変化がなかったので、平日のみの営業としました」。
実証販売の成果を受け、2021年12月から「ハマッ子マルシェ」は本格稼働。現在、週3日、1日に2~3団地を回り、2週間で16団地をカバーしている。営業時間は1団地あたり2時間。今では固定客もつき、売上は1つの団地で平均10万円、来店者数は100人に及ぶ。

「ハマッ子マルシェ」は、卸売市場などに出荷するのと同じ仕組みを利用していると、JA横浜 販売部 販売課 課長 小原修氏は話す。
「生産者が集荷場に持ってきた農畜産物を出荷基準に則り、JA横浜が買い取った商品を『ハマッ子マルシェ』で販売しています。JA横浜だからこそ、新鮮な商品の仕入れが可能です。移動販売車には冷蔵機能も装備されており、横浜産の牛肉・鶏肉・豚肉、卵、牛乳なども販売しています」
移動販売は商品陳列スペースが限られるため、品揃えが難しい。「旬の野菜はもとより、お客様のご要望に応えるべく品揃えを行っています。しかし屋外で販売するため、安全・安心の観点から対応できないケースもあります。例えば暑い時期は、傷みやすい葉物野菜などの販売量を少なくし、早めに売りきる工夫をしています。卵も夏は販売せず、秋からメニューに加えるなど、品質には細心の注意を払っています」(岡氏)。

いつ、どこで移動販売が行われるのか。営業日と場所の周知も重要だと、JA横浜 販売部 販売課 岡隆二氏は話す。
「団地内でチラシのポスティングを行っており、営業日を定めたことで常連のお客様ではスケジュールを把握されている方も多くいらっしゃいます。問題は、団地外の周辺住民への周知です。URからも地域貢献の一環として、近隣住民が団地内の移動販売を利用しても構わないとのお話をいただいています」