西条柿でアジア市場を開拓せよ!

~高鮮度を保つ脱渋法は実るか? 輸出促進に挑むJAしまね

渋柿ながら糖度が高く、生食でも干し柿にしても美味しい柿「西条」。山陰地方を中心に生産されてきた西条柿は、従来そのほとんどが中国地方で消費されてきた。しかし、ここにきて東アジアや東南アジアに販路を拡大している。国内の大消費地ではなく海外を目指したのはなぜか。そしてそれを可能にした技術革新とは。JAしまねの西条柿輸出の取り組みを追う。

人気はあるが国内の販路拡大が困難な西条柿

 JAしまねは、2015年、11JAが統合して誕生した。米穀を中心に果物、野菜、花卉(かき)などの園芸、畜産と農畜産物は多彩だ。生産者の平均年齢が65歳を超え高齢化が進むが、その中でもUターン、Iターンにより新規就農者や後継者が増え、若返りを実現しているのが果樹栽培である。JAしまねの主力果樹は、柿、ぶどう、メロン。そのうち柿は西条柿の生産が盛んで、西条柿の栽培面積は97haと全国一。県全域で生産され、生産者数は280人にのぼる。

ミニコラム:多彩な柿の品種

 柿の品種は極めて多いが、大きくは甘柿と渋柿に分かれる。渋みの正体はタンニンで、甘柿の場合成熟すると水溶性タンニンが不溶性へと変化するため渋みを感じなくなる。渋柿はタンニンが水溶性のまま成熟するが、ドライアイスやアルコール、炭酸ガスを使って脱渋(だつじゅう)すると不溶性に変化する。形状は平らなものと縦長のものがあり、皮の色は赤に近い濃い色から黄色に近い薄い色まで様々だ。

 甘柿の代表的な品種は富有柿で、全国の品種別栽培面積が24.7%と最も多い。果実は硬めで形状は平ら。色は比較的濃い。一方渋柿で生産面積が最大なのは、平核無(ひらたねなし)で16.4%。形状は平らで、地域によって「庄内柿」「おけさ柿」などとも呼ばれる。西条は渋柿で、栽培面積は全国10位の1.7%。形状は縦長で側面に4条の溝があるのが特徴。色は薄い。

※統計は農林水産省生産局園芸作物課「平成28年産 特産果樹生産動態等調査」による
広島県の西条(現・東広島市)が原産といわれ、中国地方で人気の柿だ
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 西条柿は渋柿だが脱渋後の果肉はなめらかで糖度が18度以上と高いことから、流通する中国地方では人気がある。関西の大都市圏でも一部販売するが、少量にとどまる。販路が広がらないのは、脱渋後数日で果肉が軟らかくなり果皮の黒変が始まってしまう熟成の速さと、形状や色味が全国に流通する富有柿などと異なるため、他地域ではなじみがないことが主因だ。販売先が限られる中、収穫のピーク時には商品がだぶついてしまうという課題があった。

国内の単価低下防止も期待し輸出に取り組む

JAしまね 米穀園芸部 園芸課 課長 石倉功氏

 柿は品種が多く収穫のピークが重なるため、知名度の高い品種や地域でないと、国内では埋もれがちだ。販売店が少量多品種を求めるようになり、箱数と売り先が増え効率も悪くなっていた。国内での販売先が広がらない中、JAしまねは輸出に挑戦する。そしてそのターゲットを、比較的近距離で柿を含むフルーツを食べる文化がある東アジアと東南アジアに据えた。JAしまね 米穀園芸部 園芸課 課長 石倉功氏は、「国内ではフルーツは生食やスイーツのトッピングとしても好まれ、スーパーでも年間を通じ様々な品目が販売されますが、東アジア、東南アジアでは日本よりもフルーツをさらに多く消費する食文化で、食後のデザートとしてもよく食べられています。和食も受け入れられており、市場として有望と考えました」と説明する。実際、卸売市場から香港や台湾に輸出されていた実績もあり、受け入れられる土壌があると判断した。

 もう一つ、国内販売の市場環境に対する期待もあった。石倉氏は、「一部でも海外に輸出すれば、収穫のピークに国内市場に出回る量を抑制できます。これにより、相場に好影響を与えるという期待もありました」と語る。

「西条柿輸出コンソーシアム」で技術的な課題克服を目指す

 一方で、脱渋後の成熟が早いため、日本で脱渋した後に船便で送ると熟れ過ぎてしまうという課題があった。航空便なら輸送期間は圧縮できるが、輸送費がかさむため利用できない。本格的な輸出に取り組むには、この課題をクリアしなければならなかった。

 そんな折、2016年から2019年の3年間にわたって農林水産省の事業で「西条柿輸出コンソーシアム」が発足する。島根大学を中心に、島根県農業技術センター、広島大学、JAしまね出雲地区本部、農研機構 果樹茶業研究部門、スーパークーリングラボ(冷蔵庫メーカー)が協力し、長期保存法などの開発に取り組むこととなった。

JAしまね出雲平田柿部会 青年部長 奥敏昭氏

 西条柿の生産者で、JAしまね出雲平田柿部会 青年部長 奥敏昭氏は、同コンソーシアムへの参加を要請された。「もともとコンソーシアムの研究代表者を務める島根大学の板村裕之名誉教授と、島根県の果樹生産に関する集まりで付き合いがあり参加を打診されました。ただ、生産者個人としての参加では、できることに限界があります。そこでJAに声をかけ、協力機関としてJAの柿部会全体で参加することにしました」(奥氏)。

 新しい農業技術の開発や普及には、生産者、研究者とその成果を普及させる行政機関、さらに個々の生産者をサポートするJAが関わる必要があるが、従来島根県には関係者が一堂に会する場がなかった。コンソーシアムができたことで、研究と現場ニーズのマッチングが可能となり、より現実に即した研究が進んだ。その結果、時間をかけて脱渋する方法の開発や、最適品種の選定や育成、輸送、包装、検査など多彩な成果が生まれている。石倉氏は、「実際に試してできることが分かれば、取引先から要望が出たときにすぐに対応できます。その選択肢が増えたことは、コンソーシアムの大きな成果です」と語る。