農業ファンが急拡大!? 「食・農ラ部!」 の突破力

食と農で魅せる“部活”の舞台裏、JAグループ福岡

福岡県内のJAグループ組織は20団体(総合JA)。それぞれが食農教育活動を展開している。しかし、多くの似通った活動が地域で展開される時代。JA主催だとはいえ、埋没しかねない。そうした現状の打破に向け、消費者を巻き込みながら認知度向上を目指すのが、オール福岡で構成するJAグループ福岡の「食・農ラ部」だ。各団体主催のイベントにその冠を載せ、JAとしての統一感を打ち出す一方、地元放送局のラジオ番組に提供コーナーを持ち、消費者向けの広報を強化する。
中央に「鬼ちゃん」こと鬼橋美智子氏と、向かって右にリポーターの小山正代氏
中央に「鬼ちゃん」こと鬼橋美智子氏と、向かって右にリポーターの小山正代氏
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 「みなさん、おはようございます! 元気ですか?」「『あんたっちゃぶる』、聞いたことあるよという方?」。10月11日金曜日の11時過ぎ。福岡市内に拠点を置くRKB毎日放送のラジオ番組「Weekend Live あんたっちゃぶる」のパーソナリティー、鬼橋美智子氏が、大型バスの車内で録音した自らの声を電波に乗せる。

 コーナータイトルは「食・農ラ部」。帯番組内の10分ほどでJAグループ福岡が部活動になぞらえ展開する食農教育活動などを取り上げる。この日は、10月8日火曜日に実施した「鬼ちゃんと行く 直売所巡りバスツアー!」の様子を、同行したリポーターの小山正代氏とともに伝える。「鬼ちゃん」とは、鬼橋氏のことだ。

バスツアーでは農畜産物直売所2カ所を巡り、道の駅内のレストランにてビュッフェ形式の昼食も
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バスツアーでは農畜産物直売所2カ所を巡り、道の駅内のレストランにてビュッフェ形式の昼食も
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バスツアーでは農畜産物直売所2カ所を巡り、道の駅内のレストランにてビュッフェ形式の昼食も

 朝9時に福岡の中心地を出発し、大型バスで福岡県内をぐるっと巡り、夕16時に出発地に戻る予定のバスツアー。途中昼食を挟みながら、JA筑紫やJAふくおか嘉穂の農畜産物直売所で買い物を楽しみ、JA筑前あさくら管内の梨園で梨狩りに立ち寄る。「食・農ラ部」の部員を中心とする県内の消費者23人が参加した。

この日は、「新高」「大天」の2品種を試食した後、梨狩りに生産者との交流にも時間を割く
この日は、「新高」「大天」の2品種を試食した後、梨狩りに生産者との交流にも時間を割く
JA福岡中央会 農政広報部 部長 川上裕二 氏
JA福岡中央会 農政広報部 部長 川上裕二 氏

 参加費は1人2000円。わずか40分で定員に達したほどの人気企画だ。「昨年10月に第1回を開催したところ好評だったため、今回の開催を決めました。農畜産物直売所の存在を知ってもらい、国産農畜産物の購買行動につなげる狙いです」。「食・農ラ部」の事務局を務めるJA福岡中央会農政広報部部長の川上裕二氏は企画の意図を説く。

 参加動機は人それぞれ。2度目の参加という福岡市博多区在住の女性は「前回のツアーが楽しかったから、また参加しようと申し込みました。その後、キャンセルが発生したので友だちを誘おうと思ったら、あっという間に埋まっていました……」と残念そう。日頃、地元のJAを金融機関として利用するJAユーザー。「Weekend Live あんたっちゃぶる」のリスナーで「鬼ちゃん」ファンでもある。

 「食・農ラ部」とは、地域レベルの20JAと県域で主催する食農教育活動への参加を通じて、JAの認知度・理解度の向上を目指すオール福岡の取り組みだ。部員登録は対話アプリ「LINE」の友だち登録を利用する。2022年4月に活動を開始し、登録者数は2024年10月現在、1万3450人を超える。

食農教育活動の広報戦略を見直し

 立ち上げのきっかけは、川上氏の課題意識だ。「県内の各JAが料理教室や田植え・稲刈りなど食農教育活動を幅広く展開しており、中央会でもイベントを実施していましたが、福岡市内で開催するイベントには新聞広告で告知しても集まらず、各JAに職員の動員を依頼することもあったほど。また集客できたとしても、JAが主催者であると参加者は本当に認識しているのか、心もとなかった」。

 食農教育活動の広報戦略を見直そう――。そうした動機から、JA福岡中央会では各JAが主催する食農教育活動に共通の冠を載せる策を思いつく。それが、「食・農ラ部」だ。「活動やイベントに共通の冠を載せ、共通のロゴマークやキャラクターを併せて用いれば、一つひとつの活動とJAが結び付きやすくなるのでは、という期待を抱いています」。川上氏は「食・農ラ部」の立ち上げに向けた思いを明かす。

「食・農ラ部」の制作物には共通のロゴマークやキャラクター「アグリ―ラブちゃん」が躍る
「食・農ラ部」の制作物には共通のロゴマークやキャラクター「アグリ―ラブちゃん」が躍る

 狙いは、地元福岡の食と農の応援の輪を広げること。それによって、県産農畜産物の消費拡大、農畜産物直売所の売上増、JAの信用事業・共済事業の利用増、JAの准組合員への加入促進を図る。「ゆくゆくは部員がJAグループ活動のアクティブメンバーになり、組織が活性化することを期待しています。まずは、JAが何をしているのか、認識してもらう。それが、『食・農ラ部』における当面の目標です」(川上氏)。

 活動内容は現在、3本柱に分かれる。

 まず地域に密着した活動。「食・農ラ部」の冠を載せたイベントである。冒頭紹介したバスツアーは、その一つ。農畜産物の販売を通して農業への理解を深め、その振興を図る各地域の農業まつり、各JAの青年部や女性部が主催するイベントなども、その対象に含まれる。イベントを通じて地域住民との距離を縮め、JAの認知度と好感度の向上を図る。

参加者との交流を深め、JA・生産者と消費者の間の距離を縮めるのもイベントの目的。農畜産物直売所と梨園にて
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参加者との交流を深め、JA・生産者と消費者の間の距離を縮めるのもイベントの目的。農畜産物直売所と梨園にて
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参加者との交流を深め、JA・生産者と消費者の間の距離を縮めるのもイベントの目的。農畜産物直売所と梨園にて

 次にSNS(交流サイト)を活用した活動だ。部員登録に用いる公式LINEを活用する。消費者向けの食農情報、「食・農ラ部」の冠を載せたイベントの告知、部員獲得に向けたキャンペーンの案内を、そこで配信。食や農へのファン拡充を図る。

 最後は、マスメディアを活用した活動である。メディアとはRKB毎日放送のラジオ番組「Weekend Live あんたっちゃぶる」。4時間の帯番組の中に2023年度から「食・農ラ部」のコーナーを10分ほど新設し、情報発信を強化する。このコーナーでは、昨年度は農畜産物直売所を、今年度は若手生産者を取材し、現場の生の声をリスナーに届けている。