機能性表示食品に、勝機を見出す

冷凍食品の取得第一号、ジェイエイフーズみやざきの奮闘

農産物の“生産基盤の維持・拡大”と“販路拡大”を加速させる――。劇的な変化をもたらす特効薬のような施策は多くない。しかし時節を読みながら付加価値の向上に取り組み、大きな実入りを得ることは可能だ。ジェイエイフーズみやざきは、早くから「機能性表示食品」制度に着目。主力事業の冷凍ホウレンソウに同制度を活用して以降、年々売上を拡大させてきた。決して一点突破ではない、その多角的な施策とは。試行錯誤の過程、見据えている先を追う。

冷凍ホウレンソウの付加価値とは

 2015年にスタートした「機能性表示食品」制度は、安全性の確保を前提とし、科学的根拠に基づく機能性を事業者の責任において表示するものであり、事前に消費者庁へ届け出る必要がある。健康志向が高まる一方、効果の不透明な健康食品が氾濫している状況を是正し、安全性と真に品質の良い商品が選ばれる環境を整えるのが狙いだ。

 当然、機能性表示食品として市場に出回る商品は、「科学的根拠」に基づく付加価値が生まれる。これを“販路拡大”につなげる仕掛けにできないか。いち早く目を付け、実行に移したのがジェイエイフーズみやざきだ。

 安全・安心な原料生産から加工・販売まで一貫した取り組みを地道に重ねてきたジェイエイフーズみやざき。設立以来、食品安全マネジメントシステムの国際標準規格「ISO 22000」、労働環境を含め「持続的な生産活動」を実践する「GLOBALG.A.P.認証」、ISO 22000の後継として制定された「FSSC22000」といった各種認証を取得してきた。商品の品質はお墨付きだ。だが、どれも売上には直接結び付かない。機能性表示食品の制度がスタートしたのは、そうした折のこと。これを主力事業の冷凍ホウレンソウに、うまく活用できないか。新たな検討が開始された。

株式会社ジェイエイフーズみやざき 営業部長 倉村文信 氏
株式会社ジェイエイフーズみやざき 営業部長 倉村文信 氏

 野菜を原材料とする冷凍食品は、コロッケや煮物などの「調理冷凍食品」と、原材料をそのまま食品として販売される「冷凍野菜」がある。後者の冷凍野菜の売れ筋は、ホウレンソウ、ブロッコリー、枝豆だ。冷凍野菜の国内流通量(2019年度)は、輸入品が108.9万トンと約9割を占め、国産品は7.2万トンと1割に満たない(※1)。そのなかで冷凍ホウレンソウは、比較的国産率が高い。ジェイエイフーズみやざき 営業部長 倉村文信氏は、「7割が中国を中心とする外国産で、国産は約3割です。国産のうち、約7割が宮崎県産です」と説明する。

 宮崎県は大消費地から遠く、鮮度の高い生鮮品を届けることが難しい背景もあり、現在でも加工食品の一大産地となっている。加えて同県は、冬期におけるホウレンソウの適作地。冷凍ホウレンソウ市場で圧倒的な強さを見せられる条件は揃っている。

※1:「令和元年度食料・農業・農村の動向」(農林水産省)より

口蹄疫、葉たばこ廃作。逆風の中での設立

 ジェイエイフーズみやざきは、2010年に設立されたJA宮崎経済連の協同会社である。JA経済連とは、都道府県単位の農協が出資し、会員となって加入している農業協同組合連合会のこと。JAが行う様々な事業のうち、農畜産物の流通・販売や資材の供給などの経済事業を担当する。

 宮崎県では全国の産地同様、生産者の高齢化による遊休地が増えていた。2010年には牛や豚の口蹄疫が発生し、畜産業が大きな被害を受ける。2011年には日本たばこ産業が、紙巻たばこの需要減により、2度目となる葉たばこの廃作を奨励。葉たばこ農家の多かった同県では、新たな作物への転作が必要になった。

 このような厳しい状況を打破すべく、露地野菜の生産振興を目的として設立されたジェイエイフーズみやざきは、2011年、ホウレンソウを中心に冷凍野菜の生産に着手。同社の冷凍食品ブランド「宮崎育ちシリーズ」を販売開始した。この名称には、宮崎県産品全体の認知度向上、生産振興につなげたいという思いが込められている。宮崎育ちシリーズのラインアップは、ホウレンソウ、さといも、ごぼう、こまつなの4品。現在の加工原料は、全体で4,300トンほど。そのうち、ホウレンソウが3,000トン弱とおよそ3分の2を占め、圧倒的だ。働く女性の増加に伴う調理方法の変化、中食の普及による加工食品の需要増を背景に、冷凍野菜の消費量が増加傾向にあることも事業の追い風になった。

 ちなみに、コロナショックの影響を聞いてみると、休校やリモート授業の煽りで学校給食への納入は落ち込んだが、巣ごもり需要の増加に伴い内食、中食での利用がさらに伸長したとのこと。従前からの取り組みが功を奏し、影響を相殺したとのことだった。

ジェイエイフーズみやざきの主力商品「宮崎育ちシリーズ」と「ミックス野菜シリーズ」。県産、国産を打ち出し、農業生産の振興に一役かっている
ジェイエイフーズみやざきの主力商品「宮崎育ちシリーズ」と「ミックス野菜シリーズ」。県産、国産を打ち出し、農業生産の振興に一役かっている
株式会社ジェイエイフーズみやざき 業務部長 岩切一紀 氏
株式会社ジェイエイフーズみやざき 業務部長 岩切一紀 氏

 一般的に農産品の加工施設は、産地に建てる。しかしジェイエイフーズみやざきの場合、冷凍工場の周辺にホウレンソウの産地が、当初存在しなかった。工場を建ててから、新たに産地を作り上げたのだ。同社 業務部長 岩切一紀氏は、「元々県内にホウレンソウの冷凍工場が複数あったが、国産ホウレンソウの需要はまだまだ伸びると感じていました。実際、作付面積も順調に伸び、3年程度で100ヘクタールの産地ができました」と語る。