Indeedと連携し100名以上が就農

~農業専門の求人サイトで地域の潜在的労働力を掘り起こしたJAぎふ

農業就業人口が減少を続け生産者の高齢化も進む中、農業における人材不足は深刻なものとなっている。繁忙期に「つて」を頼って人手を探すのにも限界があり、どの生産者も人材確保に苦労している状況だ。そこでJAぎふは生産者の課題を解決すべく、ネットによる無料職業紹介を開始した。求人検索エンジン「Indeed」と連携して、幅広い求職者にアプローチ。スタートから1年で延べ100名以上の就農を支援した。その取り組みの軌跡を追う。

女子バレーボール部を擁するJAぎふ

 JAぎふは、2008年、6JAが合併して誕生した。稲作、畜産、野菜や果物など、生産物の種類は多岐にわたる。JAぎふのイメージキャラクター「みのっ太」は、岐阜地区の枝豆、岐阜南地区の徳田ねぎ、羽島地区のアスパラガス、本巣地区の富有柿、各務原地区のニンジン、岐阜北地区の利平栗を組み合わせて作られており、それぞれが各地区の特産品となっている。

 農業以外の特長としては、Vリーグに加盟する女子バレーボール部「リオレーナ」を持つ。2019年2月時点で2部の2位につけており、今期の成績次第でV1リーグへの昇格もあり得るという強豪チームだ。

JAぎふの様々な6次産業化製品
JAぎふの様々な6次産業化製品

生産者の「人手が足りない」という声に応える

JAぎふ 改革推進室 室長 髙橋玲司氏
JAぎふ 改革推進室 室長 髙橋玲司氏

 JAぎふは、2016年「積極的な自己改革への挑戦」をテーマに第3次中期経営計画を策定し、農業者の所得増大に向け営農指導の強化や稲作の販路拡大、農業法人向けの経営支援などを進めてきた。その中でクローズアップされてきたのが労働力不足の問題だ。JAぎふ 改革推進室 室長 髙橋玲司氏は今回の取り組みの発端を次のように語る。

 「労働力が足りない、人を紹介してほしいという組合員の声に応えたい、という思いが根底にあります。収穫の繁忙期にはどこの農家さんも人手不足になる。生産性を高め、収益増大につなげていくためには、何らかの方法で担い手を集め、労働力の分散が必要だと考えました」

JAぎふ 営農部 営農企画課 代理 丹羽研二氏
JAぎふ 営農部 営農企画課 代理 丹羽研二氏

 JAぎふ 営農部 営農企画課 代理 丹羽研二氏は、「経営資源はヒト、モノ、カネと言われます。農業のモノにあたる農地と運転資金(カネ)は複数の支援制度があります。しかし、ヒトはなかなか集まらないという課題がありました。担い手を確保するために、生産者個人のネットワークでは限界があります。また求人媒体を活用する場合、5万円から10万円もの費用がかかり、それも生産者にとって負担となります」と語る。

 そもそも農業は自然相手の仕事であり、収穫期などに作業が集中するため労働力の調整が難しい。逆に言えば、そのような繁忙期だけ増員ができれば、後は家族だけでもやっていける。一方、後継者がいない農地を地域で集約して法人化し、農業を守る動きもある。ただし、その場合も規模が拡大すればそれだけ常勤の人手が必要になる。

 「そこでJAとして生産者支援に取り組む必要があると、2016年に改革推進室、営農部、人事CS課でプロジェクトチームを立ち上げたのです」(髙橋氏)

求人にノウハウを持つパートナーとタッグ

 農家に人材紹介するにあたり、まず無料にすることが決まった。その理由を髙橋氏は次のように語る。「JAは組合員(生産者)の出資で成り立っています。JAの基本理念に基づき、組合員の所得増大のため就農希望者を無料紹介する仕組みを検討することにしました」

 具体的な取り組みを始めたのは2017年6月。まず、職業紹介事業の認可を受けることから始まった。

 「職業紹介事業を行うには職業紹介責任者を設置する必要があります。その体制を整え職業紹介の講習に参加し、地元の労働局に提出する書類の準備などに追われました」(丹羽氏)

JAぎふ 改革推進室 女子バレーボール部 中村早紀子氏
JAぎふ 改革推進室 女子バレーボール部 中村早紀子氏

 果たして求職者のニーズは本当にあるのか。そのポテンシャルを探るために、JAぎふではテストマーケティングを行う。広報業務を担当するJAぎふ 改革推進室の中村早紀子氏は「人手が特に不足していた、にんじん部会とえだまめ部会に相談して、管内の新聞折り込みチラシによるプレマッチングを実施しました。その結果、一定の応募があり、潜在的なニーズがあることが確認できました」と語る。

中村氏がデザインに関わったプレマッチングのチラシ。簡易的に応募を受け付けた
中村氏がデザインに関わったプレマッチングのチラシ。簡易的に応募を受け付けた

 地域の求職者ニーズを確認したJAぎふは、いよいよ本格的な取り組みに乗り出す。農業専門の求人サイトによる無料職業紹介だ。なぜネットを選んだのか。丹羽氏は「求人検索にしろ応募にしろ、時代の趨勢は完全にネットです。それ以外の選択肢はありませんでした」と話す。

 しかし求人サイトには、求人情報・応募情報の管理など様々な仕組みが必要だ。それをゼロから作っていたのでは時間もコストも膨大になってしまう。そこでJAぎふでは、構築パートナーとして、求人に関する豊富なノウハウを持つリクルートジョブズと連携することにした。

 具体的には、リクルートジョブズが運営する採用管理システムをベースにJAぎふの求人サイトを開発。システムに織り込まれたノウハウを活用できることは、初めて職業紹介事業に乗り出すJAぎふにとって、大きなメリットだった。「たとえば、最低賃金を下回る求人は掲載できないといった機能があり、専門知識が必要な法令遵守ができます。こうした点は非常に助かりました」(丹羽氏)

JA職員が生産者に出向き求人情報を作成

 求人サイトの受け皿は整った。肝心なのはそこに掲載する求人情報の収集だ。生産者が自分で記事を書いたり写真を撮影したりするのはハードルが高い。そこで記事はすべてJA職員のTAC(Team for Agricultural Coordination:地域農業の担い手に出向くJA担当者)が取材し、作成することにした。

 「求人側の農家にとって、従来手間や費用をかけても人が集まらなかった状態から、JAが記事を作成したうえ無料で掲載してくれるので、求人を出しやすくなったと思います」(髙橋氏)

 TACは生産者に求人内容をヒアリングし、条件や仕事内容、アピールポイントなどをまとめ、求人ページを作成。さらに、記事作成業務が属人化しないようマニュアルや記事作成フローも確立し、今後に備えた。サイトの立ち上げから求人情報の掲載まで、約4カ月で膨大な作業をこなし、2017年10月、JAぎふの無料職業紹介がスタートした。