「あまおう」を使った一世風靡のヒット商品

~6次産業化で成功するJA柳川、製品誕生秘話と意外な悩み

「甘くて辛い」という意外なコンセプトでヒットを飛ばした調味料がある。福岡県の特産品のイチゴ「あまおう」を使ったソース「AMANERO(アマネロ)」だ。ユニークで手軽な観光土産として福岡県内の空港などで大きく販売を伸ばした。これを企画したのがJA柳川である。ほかにもフリーズドライスープなど、市場ニーズをとらえた商品を次々と送り出してきた。一方で、移り気な消費者の関心をつなぎとめる難しさや、販路の縮小など、新たな課題にも直面している。JA柳川の挑戦と、次なる展開への糸口とは。

味は良いのに販売は伸び悩んだ「小悪魔ソース」

 農産物には、味は変わらないのに色や形が規格に満たないために市場に出荷されない規格外品があり、その多くが廃棄されている。そこで全国のJAでは、生産者の所得向上に貢献するため、規格外品を活かした6次産業化に取り組んでいる。しかし、農産物ありきで商品化したのでは売れない。あくまで「誰が、なぜ買うのか」という消費者目線があってこそ、販売は成功する。「AMANERO」とフリーズドライスープにおけるJA柳川の取り組みを追ってみたい。

JA柳川 経済部 経済企画課 課長 久保真寿男氏

 大粒で甘味の強いイチゴ「あまおう」は、知名度もブランド力も高く、高価ながら人気の特産品だ。あまおうは基本的に福岡県のみで生産され、水郷の町として知られる柳川市もその産地である。JA柳川では、2015年12月、そのあまおうを贅沢に使った調味料「AMANERO」を開発。あまおうと猛烈に辛い唐辛子「ハバネロ」を組み合わせ、保存料や化学調味料無添加で風味よく仕上げた。その結果、「AMANERO」は「甘くて辛い」という意外な味が受け、大きく販売を伸ばし、2017年には日本農業新聞一村逸品大賞で金賞を受賞している。JA柳川 経済部 経済企画課 課長 久保真寿男氏は、商品の開発経緯を次のように語る。

 「イチゴ好きが多い20~40代の女性をターゲットに、パッケージのデザインも女性を意識しました。空港などの売店に置いてもらい、手軽な観光土産として手に取ってもらえることを狙ったのです」

あまおうとハバネロを組み合わせた新感覚のソース「AMANERO」

 発売直後はマスコミにも取り上げられ、販売額を大きく伸ばした「AMANERO」だが、その誕生の前には先行商品の販売、そして廃番という歴史があった。2002年ごろから柳川市などと協力して6次産業化に取り組んできたJA柳川は、2011年には豆乳を使ったマヨネーズ「柳川まめマヨ(2013年 日本農業新聞一村逸品大賞受賞)」などヒット商品を出す。その後、多彩な商品を企画する中の一つとして2012年に誕生したのが、「AMANERO」の前身となる「柳川小悪魔ソース」である。JA柳川 経済部 経済企画課 中村毅司氏は、当時を次のように振り返る。

 「あまおうを使った製品開発を目指すなかで、よくある甘いお菓子ではないものにしたいと考えました。組み合わせる食材を県内産品にこだわって探していたところ、県内にハバネロの生産者がいるとわかり、試作したところ、面白い味になったのです」

JA柳川 経済部 経済企画課 中村毅司氏

 しかし、「柳川小悪魔ソース」の販売は思うように伸びず、その後廃番となってしまう。その理由を中村氏は、「我々としては、味はよかったと思っているのですが、業務用にも見える武骨な容器から使い方のイメージができないことが一因だったのです」と分析する。コンセプトが意外で見慣れない商品だけに、その特性や用途をうまく消費者に伝えきれなかったのだ。

消費者目線のリニューアルでヒット商品に生まれ変わる

 だが商品の味そのものには自信があったことから、JA柳川は復活を目指す。その改良のポイントは、容器をタバスコタイプの小瓶にしたことだ。使い方が想像できないという反省点から、瓶の形状で辛さが伝わるようにした。ネーミングは、JA職員で構成するプロジェクト会議で検討。その様子を中村氏は次のように語る。

2012年に発売された「柳川小悪魔ソース」の販売は伸び悩んだ

 「覚えやすい4文字にしようと思っていました。タバスコタイプなので“アマスコ”などいろいろな案が出てきました。しかし、“〇〇スコ”というのは、全国にいろいろあり埋もれてしまう。そこで、響きや覚えやすさ、かわいらしさなどから、“アマネロ”に決定しました。ローマ字にして、AMAとNEROの色を変えたロゴは、デザイナーの発案です」

 パッケージもハート形のイチゴをあしらったかわいらしいものにし、ターゲットとして想定した20~40代の女性の目をひくようなデザインにした。味についても、前身の小悪魔ソースをベースにしながら、女性職員に何度も試食をしてもらい加工業者と共に調整を行った。

 最後に悩んだのが価格設定である。久保氏は、「店舗に置いてもらうには、それなりの利幅がなければなりません。しかし高すぎては売れません。原材料を輸入品にすれば製造原価を下げられるかもしれませんが、JAの商品は国産素材にこだわっているので、それでは本末転倒です。それらを勘案し、ワンコインの価格(500円程度)に設定しました」と説明する。

 完成した「AMANERO」はたちまち話題となり、福岡県内や九州地域はもとより、全国メディアでも取り上げられ、ヒット商品となった。その結果、従来商談が難しかった空港の土産物店から取り扱いたいというオファーが届くようになる。空港では皆お土産を探すが、すでに手荷物が多い状態だと、かさばるお土産は買ってもらえない。その点、小さくて面白味があり、気軽に買える価格のものなら手に取ってもらえる。まさに、「AMANERO」の商品特性にピッタリだった。中村氏は九州各地の空港に営業をかけ販路を拡大。大幅な売り上げ拡大につなげていく。「福岡に来たら、絶対に買って帰るくらいの商品にしたいと思いました」(中村氏)。