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2024.01.15
文=茂木俊輔
スイートピーの花言葉は「門出」。出荷時期が冬から春ということもあり、卒業式の花としてなじみ深い。ピンクや白など品種ごとに多彩な色を付け、その名の由来である甘い香りを放つ。

「数少ない季節特有の花ですね。『春の花』としてすっかり定着している感があります」。JA愛知みなみ花き部花き販売課課長補佐の宮本樹氏は、スイートピー人気の一端を語る。入組以来延べ16年、花き販売担当をしてきたベテランだ。
確かな需要は見込めるが、競合は決して少なくない。「生産量・出荷量は、宮崎県をはじめとする九州や、岡山県、広島県が多いですね。大量に生産し、大量に出荷するというモデルで、販売事業を成り立たせています」(宮本氏)。
競合が花き市場を「量」で席巻する中、JA愛知みなみは「質」で勝負する独自路線を歩む。「1生産者当たりの生産量は、多くてもビニールハウス3棟程度。生産量では太刀打ちできません。それならJA愛知みなみとして独自の色を出していこう、という差別化の発想です」。宮本氏は独自路線を歩む理由を説明する。この路線で狙うのは、贈答用や冠婚葬祭用など高価格帯のマーケットである。
スイートピーの「質」とは何か――。宮本氏が挙げるのは、茎の長さ、茎の太さ、花の大きさ、の3つである。さらに茎1本当たりの花は、3輪より4輪を良しとする。見た目の良さを訴え、高値を付けてもらおう、という考え方だ。

こうした勝負を挑めるようになった背景には、スイートピーが花束の中で主役に躍り出た、という時代の流れがある。「昔は添え物でしたが、最近はメインの花として飾られるようになりました。そうなるとやはり、茎の長さ、茎の太さ、花の大きさ、という見た目の良さが問われます」。
こう指摘するのは、JA愛知みなみ管内の生産者11人で組織するスイートピー出荷連合の小久保幹夫氏だ。ミニトマトを生産していたが、30年ほど前、その市場価格が下がったのを機に、圃場の半分をスイートピーの生産に切り替えた。
それから約30年。小久保氏はスイートピーの生産と格闘してきた。「安定生産は難しいですよ。誰にでもできるものではありません。いまでも毎年、勉強中です。これで完璧ということはありませんね」。「質の追求」と口にするのは簡単だが、茎の長さ、茎の太さ、花の大きさ、と3拍子そろった仕上がりは、容易には実現できないという。
「生産がうまくいかないと、3月になっても花をつけません。無理に咲かせようとすると、茎が短いまま伸び悩む。反対に茎を伸ばそうとすると、花がつぼみのまま落ちてしまうことがあります」(小久保氏)
そうした課題を、どう乗り越えるか――。成功の秘訣は、管内のほかの圃場やほかの産地に学ぶことだという。
「生産力の向上を図るには、ほかの圃場や産地を見て、自分の圃場と何がどう違うのか、学び取るのが一番です。ところが普段は日々の仕事に追われ、近所でも見に行く機会を作れない。そこで出荷連合として『機会』を確保しています」(小久保氏)
管内の視察であれば、顔見知り同士の交流となるからまだしも、ほかの産地を視察するともなれば、行程をそう簡単には調整できない。そこは、出荷連合の事務局機能を担うJAの役割だ。「産地見学は2年に1回、私たちが窓口になって調整し定期開催しています」と生産力の向上を支える二人三脚ぶりを宮本氏は語る。
「質」の追求に向けて出荷連合として実践することが、もう一つある。自ら定める出荷基準の運用だ。この基準に沿って選花することで、「質」を管理する。
出荷基準ではまず、茎の長さを定める。45cm以上は「2L」、38cm以上45cm未満は「L」。これらの花は品質ランク上、一律でまず「A」の評価を受ける。出荷連合ではさらに、茎の太さ、花の大きさや全体に対するバランス、茎1本当たりの花の数を基に、最高ランクの「秀」やそれに次ぐ「優」を選び抜いていく。このうち例えば「秀」の比率は、全体の10~15%程度。最高ランクのハードルは極めて高い。
JA愛知みなみが出荷するスイートピーの「質」は、こうした見た目の良さだけでなく、日持ちの良さという点からも高く評価される。小久保氏は「玄関先のような条件下なら、『秀』や『優』クラスであれば出荷後1カ月は持ちます。取引先市場からは、ほかの産地に比べ格段に長持ちすると高い評価を受けています」と自信をみせる。
輸送中の傷みを避けるため、箱詰めにも気を配る。1箱は100本入り。何も考えずに詰めたのでは、集出荷施設から取引先市場まで輸送する間に、花びらがこすれ合って傷付いてしまう。そこで独自の箱詰め法を開発した。
その工夫が「扇形箱詰め法」だ。25本ずつ扇形に束ね、上下2段50本で結束したものを、2束組み合わせる方法である。「輸送中に花びらがこすれ合わない箱詰め法です。箱を開けた時の見た目が華やかですし、小売り店舗で束をバケツに差すと、円形にぱっと広がる、という良さも持ち合わせています。ほかの産地の関係者が視察に訪れ、箱詰めを買って研究したけれど、この結束法はマネできなかったそうです」(小久保氏)。

輸送中の防湿対策にも余念がない。途中で水滴が生じると、花びらに花シミと呼ばれる色むらが発生し、スイートピー特有の多彩な色の美しさを損ねるからだ。取引先市場に届いた段階で花シミが発生していれば、確実にクレームになる。そこで防止策を編み出した。防湿効果を持つ和紙を25本ずつの束の間に挟み、50本全体をポリプロピレン(PP)フィルムでくるむ徹底ぶりだ。