国産小麦で創る「高崎生パスタ」に注目!

大賞受賞に導いた、JAたかさきの地域戦略

「国消国産+地域振興」モデルを、いかに成功軌道に乗せるか。JAたかさきが取り組む「高崎生パスタ」プロジェクトの好事例にヒントがある。キーワードは「つなぐ」だ。生産者、製粉会社、製麺会社、自治体、レストラン、スーパー、学校、メディアなどに対し、JAたかさきが中心となってエコシステムを形成。2023年には第19回日本農業新聞「一村逸品大賞」も受賞し、勢いに乗る。JAたかさきの描く地域戦略のコアには、高崎産小麦「きぬの波」に寄せる熱い“思い”があった。

 東京駅から新幹線で約1時間の群馬県高崎市。人口は県内最大の37万人、豊かな自然に抱かれた都市だ。「パスタの街」と呼ばれるほど、市内には専門店が軒を連ねる。高崎市民がパスタを愛する原点は、1軒の老舗イタリア料理店の存在だという。スープパスタなどオリジナルメニューの開発とともに、多くの料理人を育てた。巣立った料理人が高崎市内に店を構え、「高崎パスタ」文化醸成の基盤を作ってきた。

「高崎生パスタ」は第19回日本農業新聞「一村逸品大賞」を受賞した
「高崎生パスタ」は第19回日本農業新聞「一村逸品大賞」を受賞した

 機運を盛り上げるために、2009年から高崎市内のパスタ専門店が自慢の味を競い合う祭典「キングオブパスタ」を開催。地元産の食材を使ったパスタを来場者に提供し、投票で「高崎パスタ王」を決める。年々盛り上がり、いまでは来場者1万人にも及ぶ。新聞やテレビなどメディアが高崎パスタを取りあげるケースも増えてきた。

JAたかさき 経済部 特販直売部 課長 西島武 氏
JAたかさき 経済部 特販直売部 課長 西島武 氏

 「高崎は、本州の主要な小麦産地です。パスタの街に、なぜ高崎産小麦を使ったパスタ(麺)がないのか、疑問に感じていました。『キングオブパスタ』では、群馬県産野菜の使用をレギュレーションとしているのですが、パスタはほぼ輸入品です。高崎産小麦を原料とする高崎のパスタがあるべきという“思い”から、2016年からパスタ開発に取り組みました」とJAたかさき経済部特販直売部課長の西島武氏は話す。

 JAたかさきの特販部門は、オリジナル商品の開発を担う。主原料はすべて高崎産。安全安心な加工品として、高崎うどん、高崎ソースなど「高崎」を品名に掲げた商品「かたらい高崎」シリーズを開発・販売している。高崎産小麦を使ったパスタは、「パスタの街」にふさわしく、ポテンシャルが高い。しかし、開発は難航を極めた。普段パスタで使用されるデュラム小麦は、グルテン量が豊富で弾力があり、調理をしても形が崩れにくい。高崎産小麦は、主にうどんで使われる中力粉だ。「いろいろな製麺会社にお願いしてチャレンジしてもらいましたが、納得できる製品はなかなかできませんでした」(西島氏)。

高崎産小麦「きぬの波」を使ってパスタ開発に挑む

 ターニングポイントとなったのは、吉田製麺との出会いだったと西島氏は話す。「JAたかさきを訪れた吉田製麺の吉田さんから『高崎産小麦はどこで買えますか?』と質問されました。話を聞いてみると『高崎産小麦でパスタをつくりたい』という。私と“思い”が同じだったのです」。

 吉田製麺の吉田幸二氏は当時を振り返る。「地域に紐づく“食”としての高崎パスタに注目していました。調べてみると、高崎産のパスタは存在しない。国産小麦はパスタに適していないと言われていますが、乾麺ではなく生パスタなら中力粉でも美味しくできるのではないか。起業したばかりで実績もなかったのですが、JAたかさきの西島さんは『共同開発しましょう』と言ってくれました」。

 吉田製麺は製法が異なっていたと西島氏は明かす。「乾麺を作る工程に使用される真空押出式を採用していました。高崎産小麦粉をサンプルとして提供し作ってもらったところ、これならパスタになるという手応えを感じました。そこから、JAたかさきと吉田製麺がタッグを組み、試行錯誤して完成度を高めていきました」。

 JAたかさきの職員を集めて試食会を開催したという。「高崎産小麦には、全国的にも有名な品種の『さとのそら』と、群馬県で育種され高崎で育った『きぬの波』の2品種があります。2品種で作ったパスタを食べ比べ、アンケートを実施しました。その結果を受けて、原料を『きぬの波』に決定。吉田製麺が粉、水、卵、塩の配合などを変えて試作品をつくり、それを試食会で評価し意見を反映させていく。改良のサイクルをまわしました」。

 西島氏は、吉田氏と一緒に生産者を訪ねたという。「『きぬの波』がどのように育てられていくのか。生産者の“思い”を吉田さんに聞いてもらいたかったのです。高崎では、米と麦の二毛作で収益を確保している生産者が多くいます。高崎産小麦にパスタという付加価値をつけることで、生産者の所得増大につながります」(西島氏)。

「高崎生パスタ」を茹でる前の状態。高崎産小麦「きぬの波」を100%使用する
「高崎生パスタ」を茹でる前の状態。高崎産小麦「きぬの波」を100%使用する

 「高崎生パスタ」の開発を語るうえで欠かせない人物が、他に2人いると西島氏は話す。「1人は、(パスタではなく)高崎うどんを作った製粉会社の“小麦のプロ”。もう1人は、その高崎うどんのプロジェクトリーダー格だったJAたかさきの組合員。群馬県農政部の職員で、高崎産小麦の生産者でもあります。私は、高崎うどんの拡販を担当していたことがあり、2人を知っていました。高崎うどんは『きぬの波』を100%使用しています。開発には苦労や工夫した点が多くあり、そこで培ったノウハウから貴重なアドバイスをいただきました。JAたかさきと吉田製麺だけでは、『高崎生パスタ』を開発できなかったと思います。2人のお力添えがあったからこそ実現できました」。

 2017年、1年間の開発期間を経て「高崎生パスタ」は完成し、販売を開始。JAたかさきが取り組んできた商品開発の歴史と、そこで得た人脈を含む資産は、「高崎生パスタ」の商流にも生かされることになる。