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2024.12.02
文=茂木俊輔
「LINE WORKS」の通知音を聞き、スマートフォンを取り出す。相手は担当地区の生産者。画面には3枚の画像が並ぶ。そこには白ネギの葉が地面に力なく倒れ込む姿。画面上では間もなく、「質問です!」とチャットが始まる。
テーマは倒れ込みの原因だ。画像からは「白絹病」が疑われる。土壌中の菌によって引き起こされる病気だ。生産者も同様の見解という。葉身の元に土をかぶせる「土寄せ」前の殺菌剤散布を勧める――。

JA鳥取西部の管内では3年前から、営農指導の現場がガラリと変わった。営農部員約80人に支給される業務用の携帯電話がスマホに代わり、それに伴い、チャットツールとしてLINE WORKSを利用するようになったからだ。
一番の違いは、冒頭のように画像を共有できるようになった点だ。
携帯電話の時代は、通話のみ。生産者は圃場で知らない症状や害虫に出くわすと、営農指導員に電話をかける。やり取りを重ねても埒が明かなければ、指導員は現場に向かうことになり、解決までに時間がかかる。
画像を共有できれば、症状や害虫は一目瞭然。営農指導員が分かる範囲で適切な助言が可能だ。万が一分からなければ、ベテラン指導員のナレッジを活用する。画像を共有し、その指導を仰ぐことで一件落着に持ち込める。


LINE WORKS活用の意義を JA鳥取西部営農部次長兼特産園芸課長兼市場流通課長の野口和弘氏はこう指摘する。「生産者は、いま何とかしてほしい。相談を持ち掛けた時から適切な助言が得られる時までタイムラグがあるようでは困るのです。LINE WORKSの活用で、その時間差をなくせます。営農指導の効率が上がりました」。
JA鳥取西部管内の主力品目は、特産園芸品で言えば白ネギやブロッコリー。2023年度販売実績によれば、白ネギ約18億円、ブロッコリー約12億7000万円とツートップを占める。ともに安定出荷を目指すが、天候や病虫害の影響は避けられない。
例えば白ネギ。地域間リレーによる周年出荷体制を整え、安定販売につなげられる点を強みに掲げる。それでも2023年度は、春ネギや秋冬ネギが、積雪、猛暑、豪雨などの影響を受け、出荷量は前年実績や計画数量を割り込んだ。
農産物は完全な計画生産は望めない。それだけに、営農指導員としては生産現場である圃場の状況を把握することが欠かせない。
実は、業務用コミュニケーションツールを携帯電話からスマホに切り替える以前から、プライベートのスマホで個人向けのLINEを利用して生産者とつながる営農指導員もいたという。デジタル化については現場が先行していたのである。
スマホの導入に併せLINE WORKSを採用した背景には、こうした事情もある。
そこで狙うのは、いわゆる「シャドーIT」の是正だ。組織の管理下にないデバイスやサービスを利用することで、情報セキュリティーのリスクは高まる。そのリスク低減を図ろうと、組織の管理下にあるデバイスとサービスを利用するように改めた。
もう一つ、公私混同の是正もある。「営農指導員の多くを占める若手は、プライベートと業務の間を明確に線引きしたがります。だからプライベートのスマホを業務用には使いたくない。そこには個人情報の漏洩を防ぎたいという思いもあります。いまの20~30代は、それが常識です」と野口氏は指摘する。
業務用のスマホで利用するチャットツールとして最終的にLINE WORKSを選んだのは、生産者とつながることを意識した結果だ。通信事業者からは当初、独自のチャットツールを提案されたが、それは個人向けのLINEにはつながらなかった。
「スマホを利用する生産者の間にはすでに、個人向けのLINEが普及していました。生産者とつながることを意識するなら、ビジネス版という位置付けで既存のLINEとつながるLINE WORKSを導入するしか選択肢はありませんでした」(野口氏)

管内でブロッコリーを中心に生産する手島弥寿彦氏は、そうしたスマホ利用の生産者の一人。会社勤務の兼業だったが、早期に退職し、10年近く前に専業に転じた。現在65歳。ブロッコリーの生産者で組織する部会の運営委員を務める。
手島氏にとってLINE利用の魅力の一つは、生産部会の運営委員会などJA関連の会議の開催案内をすぐに受け取れることだ。「LINEでつながるまでは郵送や手配りで開催案内を受け取っていました。しかしそれでは、開封しないと内容が分からず、案内を紛失する恐れもあります。LINEで受け取れれば、内容を手元ですぐに確認できるうえ、出欠の返事も手軽に出せます。重宝しています」。