野菜本来のうま味がギュッと詰まる「TOM-VEGE」

ミネラル豊富な土づくりから開く未来、JA十和田おいらせ

がぶりっ! 真っ赤なトマトにかぶりつく。うまいっ! 濃厚な甘みとうま味が、口の中で交じり合う。この甘みとうま味こそ、おいしさの秘訣。決め手は、糖分とアミノ酸だ。この2つを、どう生み出すか――。青森県十和田市に本店を置くJA十和田おいらせでは、ミネラル豊富な土づくりを通した野菜の栽培を促し、2010年4月以降、「TOM-VEGE(トムベジ、TOWADA OIRASE MINERAL VEGETABLE)」ブランドで出荷する。

※写真:登場する生産者は自慢のニンニクを育てる元青年部長 平舘龍徳 氏

 良いものを、つくりたい――。ものづくりに携わる誰もが思い描く夢だ。野菜づくりも、そう。おいしい野菜を、つくりたい。どの生産者も、試行錯誤を重ねる。お手本は、篤農家と呼ばれる農業に熱心に打ち込む生産者。品種は何か、肥料は何か、……。その生産法をまねて改善に努める。しかし、誰もが成功するわけではない。

JA十和田おいらせ 代表理事専務 斗澤康広 氏
JA十和田おいらせ 代表理事専務 斗澤康広 氏

 「それは、土が違うから。肥料の与え方が、過剰なんですよ」。JA十和田おいらせ代表理事専務の()(ざわ)康広氏は指摘する。「生産者には肥料頼みの姿勢が強い。生育が悪くなると、つい肥料に頼りがち。その結果、逆効果を招いてしまうのです」。

 野菜にとって土は、根を張る場であり、そこから栄養や水分を吸収する場でもある。土の成分は、野菜にとっては栄養源。だから、生育に欠かせないという「窒素」「リン酸」「カリウム」の3つの成分を、肥料を施す形で土に混ぜ合わせる。

 ここで重要なのは、様々な成分のバランスを取るように心掛けること。「バランスが取れていれば、おいしくなるし、収量を増やせます。栄養のバランスは、人体の成長にとっても大事。それと一緒ですね」(斗澤氏)。

中嶋農法に学び、「ミネラル」まで分析

 土の成分に見合った肥料を、バランス良く組み合わせる。これが案外、難しい。誰もが失敗しない施肥設計を――。JA十和田おいらせではこうした土づくりを通した野菜の栽培を促し、地元の生産者を支援してきた。

 その第一歩が、土壌診断とその結果に基づく処方箋づくりだ。土の成分構成を見極めたうえで、それを栽培する野菜にとって望ましい構成に変えていくには、どのような肥料を施せばいいか、施肥設計を提案・指導する。

 土壌診断では試料(サンプル)の採取以降、いくつかの工程があるが、JA十和田おいらせの農業技術センターに置く装置・システムはそれらを自動で済ませる。試料1点を診断するのに必要な期間は1~2日。同時に試料40点まで処理可能だ。

 特徴は、「ミネラル」成分まで幅広く分析する点。「ミネラル」とは、主要4元素である「水素」「酸素」「炭素」「窒素」以外の成分。ここでは一般には診断項目に含まれない「マンガン」「鉄」「銅」「亜鉛」なども対象に据える。

 一方、その診断結果を踏まえた処方箋づくりは、JA十和田おいらせの営農指導員が担当する。肥料には、他の成分の吸収を阻害する作用や促進する作用があるため、それらも加味しながら施肥設計の最適化を図る。斗澤氏は「経験や勘に頼っていた施肥設計に、科学的な裏付けを与えられています」と胸を張る。

 取り組みの歴史は古い。JA十和田市(当時)では1980年代から土壌診断に関心を寄せ、簡易的な診断結果を営農指導に生かしてきた。その後、別の装置・システムの導入を経て、さらに高精度の結果を迅速に出せる装置・システムを求めた結果、浜松市に本店を置くJAとぴあ浜松が導入していたものに行き着く。1997年に現地を視察し、翌1998年に同じ装置・システムの導入に踏み切った。

JA十和田おいらせの多彩なニンニク商品ラインアップ。土壌診断の取り組みはまずニンニクから始まったという
JA十和田おいらせの多彩なニンニク商品ラインアップ。土壌診断の取り組みはまずニンニクから始まったという

 こうした取り組みと並行して取り入れたのが、中嶋農法の考え方である。この農法は、土壌の成分をまず分析し、そのバランスを整えることで、おいしい作物づくりにつなげていく手法だ。「窒素」「リン酸」「カリウム」という多量要素の過剰と「ミネラル」という微量要素の欠乏が作物を不健康にしているとの視点に立つ。土壌診断で「ミネラル」成分まで幅広く分析するのは、そうした視点に共感するからこそだ。