四国発、米粉の麺で海外進出を狙う

周桑米を使った「おこめん」で6次化に乗り出したJA周桑

加工することでコメの販売価格が一気に7倍に

 毎年12月、周ちゃん広場では収穫祭を開き、地元農産物の試食販売などを行うほか、JA周桑の女性部や青年部が独自の催しを行っている。2014年の打ち合わせでは女性部から「今年は米の消費拡大につながるような企画が良いのでは」との意見が出た。実は、数年前から米の新しい売り方について議論が重ねられていたこともあって、ここから米の加工品の開発プロジェクトが動き出す。

 その数年前から米の市場関係者のなかでは、米粉を使ったパンやケーキなど、さまざまな加工品が並び始めていた。JA周桑では数ある加工品のなかでも、麺に着目した。加工の難易度や消費期限などの商品特性、市場性などを多面的に検討したうえでの判断だが、うどん文化が根付く地域にとっては親しみやすい商品でもあった。

JA周桑 生活部長の竹田博之氏
(写真:吉澤咲子)

 「製麺は広島のおこめん工房という会社に委託することにしました。おこめん工房の社長さんも米の生産者で、我々と同じように消費低迷や価格下落に悩まされる米をなんとかしようと、おこめんを開発したのだそうです」(竹田氏)

 「おこめん」は、おこめん工房の商標登録商品だが、JA周桑は同社に委託して100%周桑産ヒノヒカリを使った「周ちゃんのおこめん」を製造している。しかも、主食用として販売できる特Aの米だけを使うという贅沢さだ。加工品には加工用の米を使うのが一般的なので、米粉製造を委託している高知県の協力会社からは「周桑の米は粒が大きい」と驚かれた。

 「そもそも『周ちゃんのおこめん』は余った米をなんとかすることではなく、美味しい米の消費を拡大することが目的ですから、加工用とはいえ、普通に炊いて美味しいヒノヒカリを使うことにこだわりました」(竹田氏)

 かくして「周ちゃんのおこめん」は2014年の収穫祭でお披露目された。女性部が美味しい食べ方を工夫して振る舞ったこともあって、売り場での人気は上々だった。

四国随一の広さを誇る周ちゃん広場。遠方からも大勢の来客があるという(写真:吉澤咲子)

 「周ちゃんのおこめん」は米1袋(30kg)から約440食を製造できる。地元飲食店でメニューに採用されたり、地場産品のビジネスショーに出展したりするなかで着実に販路が広がっていき、現在は1カ月当たり約4000食を販売している。

 「当面の目標は月間1万食です。現状の2.5倍ですが、周桑産ヒノヒカリは年間13万袋を出荷していますので、全体から見れば大した量ではありません。しかし、米として売れば1袋6,000円程度でも、おこめんに加工すれば1袋が4万4000円、単純計算で7倍の値が付くわけです」(竹田氏)

 JAでは農業所得の向上のために、営農支援やハウス設置費用の助成など、さまざまな側面から生産者を支援している。特に生産者が単独で実現できない領域ほど、JAの果たす役割は大きい。これまでもコメを1円でも高く売るために、農業者を集団化して事業規模を拡大し、効率化やコスト削減に取り組んできたが、昨今の価格下落はそれではカバーできないレベルになっている。

 「かつてのように米だけを作って食べていける時代ではない」(山内氏)ことから、JA周桑ではハダカムギのほかに、キウイやメロンといった果樹栽培、施設園芸など、さまざまな農作物を組み合わせることを推奨している。加工品も事業拡大の重要な施策だ。「周ちゃんのおこめん」もそれら選択肢のひとつに位置づけられている。

周桑産イチゴとキウイを使ったパフェは周ちゃん広場の人気メニューのひとつ
(写真:吉澤咲子)

県内直売所の先は海外市場! おこめん販路拡大戦略

 「周ちゃんのおこめん」は米の6次産業化である。2次の“加工”については広島の会社に委託しているが、いま強化しているのは3次の“流通・販売”だ。国内市場はあまり意識していないという。

 「実はいろいろな地域のJAが米粉麺を作っているんです。国内市場で限られたパイを奪い合うよりも、まずは地元の直売所でしっかりと売っていきたい。その先は海外へ展開することを考えています」(竹田氏)

 海外市場での手ごたえを強く実感したのは2017年8月に香港で開催されたアジア最大級の食の祭典「香港フード・エキスポ2017」への出展だった。JA周桑は農林中央金庫(農林中金)と全国農業協同組合連合会(JA全農)の支援も受けてブースを設置し、竹田氏が自らハッピ姿で商品PRに務めた。

 「香港ではベトナムのフォーのようにあっさりとしたスープで米粉麺を食べる文化があるので、親しみを持っていただけたのだと思います。3社から直接の問い合わせをいただきました。また、ちょっと変わった反響として地元の周さんという方から『深圳(しんせん)市には周という名字が多いので、周ちゃんブランドは人気が出ると思う』と言っていただいたこと。周さんにはサンプルを送りし、検討してもらっています」(竹田氏)

定番のラーメンタイプ。フォーのようなあっさりした味わい(写真:吉澤咲子)

 JA周桑では「周ちゃんのおこめん」のほかに、ハダカムギを使った焼酎「周蔵」も開発しており、こちらも周さんの目に留まったようだ。イベント終了後、現地では農林中金の香港駐在員事務所が引き続き販路開拓に向けた営業を続けてくれているという。

 また、ロンドンでのテスト販売も始まる見込みだ。発案はやはりJA全農。ヨーロッパでは小麦粉を一切使用しないグルテンフリーの食品が人気を集めていることから、米粉を使った「周ちゃんのおこめん」は売れるのではないか、とのことだった。ただし、日本とは食品検査基準が違うので、認証を受けるために少々時間がかかっている。この手続きが済み次第、「Okomen(Rice Noodle)」の名称でテスト販売をスタートする予定だ。

 「私たちではイベント出展はできても、その後の営業活動ができません。JA全農や農林中金のご支援があるからこそ、海外にも販路を拡大できるのです」(竹田氏)

いかにして巻き込み力を発揮し、事業を育てていくか

JR予讃線壬生川駅からクルマで10分ほどの場所にあるJA周桑(写真:吉澤咲子)

 海外展開を積極化する一方で、地元ではJA周桑が主体的に販路を開拓していく必要があるが、ここでも周囲との連携は欠かせない。先月は愛媛県主催のイベント「えひめが誇る『すご味』『すごモノ』商談会」に「周ちゃんのおこめん」を出品した。また、西条市長もエールを送ってくれており、西条市とは市内小学校の給食で「周ちゃんのおこめん」を出せるように話し合いが進んでいるという。

 また、女性部は「周ちゃんのおこめん」をより一層美味しく食べられるレシピ開発に取り組んでいる。2016年からレシピコンテストを開催しているが、コンテストには女性部のメンバーや一般からの参加者に加えて、県立丹原高等学校の生徒たちも参加した。

 審査委員長を務めた山内氏は2年目となった2017年のコンテストをこう振り返る。

 「高校生のレシピは、おこめんと特産の柿を使ったギョーザや、おこめんドーナツなど、斬新な発想が印象的でしたね。大人も並みいる中で予選会を勝ち抜き、見事優勝した丹原高校の男子生徒は『前回は優勝を逃したので、リベンジに来ました』と言っていて、頼もしい気持ちになりました。地元のテレビ局や新聞社が取材してくださったのもありがたかったですね」(山内氏)

 丹原高校はJA周桑の建屋西側にあり、園芸科を擁することからJAとは縁が深い。地域の将来を担う世代なのだが、この地でもやはり少子化は顕著。山内氏は「自分たちの学生時代は一学年1000人が在籍していたけれど、現在は300人ほど」とやや寂し気な表情だ。

 「どの地域もそうでしょうが、地方は疲弊しています。西条市は工場があるので、ほかの地域と比べたら若い世代の定着率は高い。ただ、地域の農業を持続させるには担い手である若者に関心を持ってもらう必要があります。『周ちゃんのおこめん』はそのきっかけになり得ると思います」(山内氏)

 2014年末に誕生した「周ちゃんのおこめん」。当初は細麺タイプだけだったが、平麺タイプも作った。さらにソースを付けたカルボナーラ風、5個入りパックなど商品展開も拡充している。

 麺そのものは米の素朴な味わいなので、どんな調味料ともマッチする。「ゆでたて麺に生卵と醤油を絡めた釜玉うどん風のシンプルな食べ方もおすすめ」(竹田氏)だという。また、グルテンフリー商品はヨーロッパに限らず、国内でも注目されていることから、訴求次第では新たな顧客層を開拓できる可能性もある。組合長の戸田氏が語った世界進出という夢が実現する日はそう遠くないかもしれない。