エリア限定戦略で高収益ブランドを創出したJA石垣牛

~特産品の付加価値を高め市場を築いたJAおきなわの取り組み

石垣牛の安定供給を支える施設整備を進める

 精肉業者や小売店への安定供給を担保するための施設の充実も見逃せない。精肉業者らで「石垣牛」の競りが行われる「八重山食肉センター」は1974年に設立されて以来、数次の増改築が繰り返されてきた。しかし時代の中で老朽化が進み、建築当初は豚のと畜が主流だったこともあり、牛の処理能力に限界が出てくる。そこで、沖縄県畜産振興公社の「離島畜産活性化施設整備事業」を導入。2014年4月、旧施設に隣接する9,070㎡の市有地に、建設面積3,340㎡・鉄骨造り2階建ての新施設をオープンさせた。新しい食肉センターの一日当たりの処理能力は従来の約3倍に拡大、大動物(牛・馬)20頭、小動物(豚・ヤギ・猪豚)50頭となり、今後の需要増に対応できる体制を整えた。洗車場や車両消毒槽、排水処理施設を完備し、生きた牛を持ち込んでそのまま加工まで一貫処理できるなど、食肉の安心に直結する衛生面でも最先端の環境となっている。

2014年に生まれ変わった八重山食肉センター。中山義隆石垣市長が代表取締役を務める
2014年に生まれ変わった八重山食肉センター。中山義隆石垣市長が代表取締役を務める
衛生的な環境の中で様々な肉処理が行われる。写真は競りが行われる部屋の様子
衛生的な環境の中で様々な肉処理が行われる。写真は競りが行われる部屋の様子

 いっぽう、「八重山肥育センター」は「JA石垣牛」の増産を目的としてJAおきなわが運営する肥育施設だ。2017年、従来7棟だった牛舎に約1,400㎡の8番目の牛舎を増設。「石垣牛」の認知度アップと需要増加要求に呼応してさらに100頭を増やし、現在約550頭の肥育を行っている。島内全体での肥育頭数は約1,500頭なので、その3分の1を担っている計算だ。この肥育センターの役割について大城氏は次のように話す。

 「ここでは郡内で生まれた子牛を購入して、管理マニュアルに基づいて肥育・出荷を実施しています。出荷期間は去勢牛で生後24~35カ月、雌牛は24~40カ月と定められています。当肥育センターでは、去勢牛のみを肥育し、現在は、毎週開催される『JA石垣牛』枝肉競りへの定時出荷と併せて、定量出荷を維持するための補完機能も担っています。将来的に肥育部会の増頭が進み、肥育部会員中心の出荷体制が構築できるまで、今後も後方支援を続けていきたいと思います」(大城氏)

「JAおきなわ八重山肥育センター」の広大な牛舎で肥育中の石垣牛
「JAおきなわ八重山肥育センター」の広大な牛舎で肥育中の石垣牛

JAならではの金融面における生産者支援体制

 最後に肝要となるのが生産者のビジネス継続や新規参入に対する支援策だ。工業製品と違い食肉は人がつくる。生産者が減少すればブランドそのものが立ち行かなくなる。

 「石垣の農業の中でも、牛は今一番勢いがあるフィールドだと思います。しかし繁殖~肥育は継続性が求められる仕事なので、肥育部会としても若手はまず準会員として登録してもらい、何年間か継続を実証できた段階で正会員にする、というシステムを採っています」(比嘉氏)

 新規参入するには、牛舎の建設が必須だ。石垣市は、一軒当り300万円の補助金を用意しており、若手はこの制度を活用して牛舎を築いて部会に参加するケースも多い。しかし牛は肥育期間がアイドルタイムとなるので、少なくとも2年間は収入がない上に餌代だけが出ていく、という状況になる。

 「そこでJAおきなわでは、生まれた子牛に対する貸付預託で、一旦、肥育素牛をJAが買い取り、貸し付けを行うことで出荷までの生産コストに充当するプランを紹介しています。2年後の出荷時の売却益から貸付分を返済することで、十分な自己資金がない場合にも、スムーズなスタートアップが可能になります」(大城氏)

 さらにJAの「肉牛繁殖貸付事業」では、繁殖母牛を導入する際の費用を一旦JAが負担し、種付けから出荷までの2年間据え置いて、5年間で償還していく方式を実施している。出荷後の3年目から1年ごとに償還していけば良いので、生産者もビジネスを広げやすい。

 地方銀行なども牛を動産担保として、1頭ずつ評価する融資商品をラインナップしている。しかし、万一回収できない場合には、担保である牛をもっていかれることになる。これに対して、返済が滞ってしまった場合にも、生産者目線で相談にのってくれる点が、組合員と寄り添うことを旨とするJAならではだ。

 「例えば借り換えなどのご提案で、極力畜産を継続していただこうというのが、私たちの立ち位置なのです」(仲盛氏)

 牛舎に対する建物共済も、特に台風被害が頻発する沖縄地域では、生産者の助けになっている、農業経営支援の観点から、一般の保険会社と比べて審査が迅速で補償も充実していることから、肥育部会会員の多くがこの共済に加入している。こうした生産者に対する金融面での手厚い支援体制もブランドを下支えする上で重要な基盤となっている。

戦略的な増頭を視野にブランドの再構築を目指す

 「JA石垣牛」は、ここ2年間を見ても、2017年「第42回食肉産業展・第2回銘柄食肉好感度コンテスト」で「最優秀賞」、さらに2018年「第47回日本農業賞」集団組織の部で「特別賞」を受賞。益々認知度を上げつつある。生産量にも拍車がかかっており、2014年度の出荷頭数689に対して、2016年度には776頭と12%強の拡大を実現した。

 需要増が続く中で、目下JAおきなわでは増頭計画を進めており、直近の目標は「一軒一頭」の増頭だという。今後の課題と展望について語ってもらった。

 「現在年間約750頭を出荷していますが、2年後を射程に30%アップの1,000頭に拡大していきたいですね。そのためにはまず牛舎が必要です。行政とも支援策に関する連携を深めながら、迅速なスケジュール感でプランを詰めていきたいと思います。今後県外の市場にパイロット的に出していく際に、離島の和牛ブランドにはどういう情報発信の仕方があるのか、ということを今一度考えていきたいと思います」(大城氏)

 「確かに増頭が最大課題です。認知度アップとともに全国各地でニーズが高まり、『売って欲しい』という引き合いも相次いでいますが、頭数が少ない分、生産者も『売りたいけど売れない』という悩みを抱えています。こうした課題をクリアして、生産者と一緒にもう一度『JA石垣牛』のブランドを立ち上げなおすつもりで取り組んでいきます」(仲盛氏)

 「私たち生産者としても、さらなる品質向上によって、全国的な競争力を高めていきたいと思います。そして海外の顧客も視野に入れています。例えば富裕層も多い台湾は距離的にも近いので、自治体のインバウンドの拡大施策などと歩調を合わせて、拡販を進めていきたいと思います」(比嘉氏)

 「JA石垣牛」は、生産量の絶対的上限がある中、マスメディアの活用や全国への販路拡大ではなく、「地元に来なければ口にできない」希少性をブランドの核としてその価値を高め続けてきた。その裏側では、消費者への確実な流通、肥育品質の担保、安定供給体制の実現、生産者に対する金融支援などの要素が有機的に結びついている。そして観光産業や飲食店、稲作農家など、地域の周辺産業と連携することで互いの共栄体制を築いてきた。JAおきなわの一連の取り組みは、地域に根ざした一次産業の高収益ブランド創出のヒントに溢れているといえそうだ。

JAおきなわでは、今後の増頭を視野に、「JA石垣牛」の次なるブランド戦略を模索している
JAおきなわでは、今後の増頭を視野に、「JA石垣牛」の次なるブランド戦略を模索している