「あまおう」を使った一世風靡のヒット商品

~6次産業化で成功するJA柳川、製品誕生秘話と意外な悩み

香典返しとしてフリーズドライスープが大ヒット

 もう1つのヒット商品を見てみよう。JA柳川では、AMANERO発売翌月の2016年1月、フリーズドライ商品「なすとオクラの味噌汁」、「ニラ玉スープ」の販売を開始。AMANERO以上の販売額を記録している。その成功要因はどこにあったのか。

 全国の多くのJAでは葬祭事業を行っており、JA柳川も例外ではない。従来、その香典返しとしてJA柳川で作った調味料を始めとする加工品の詰め合わせを勧めていた。しかし、なかなか取り扱ってもらえなかったと、久保氏は次のように語る。

 「調味料のセットは重いので、葬儀の場で即日渡す香典返しとしては喜ばれませんでした。また、調味料は賞味期限が短く、多くの調味料が6カ月、AMANEROだと10カ月です。しかも、消費者が購入した後に残存する消費可能な期間に余裕を持たせて出荷しないといけません。売れないとモノが動かないうえ、作り置きができない商品もあり、その調整が難しいという課題もありました」

 そこで賞味期限が1年間と長く、軽量な商品としてJA柳川が開発したのが、フリーズドライのスープである。「これなら売れる」と葬祭スタッフが積極的に勧めてくれたことにより、大ヒットとなった。商品をもらった弔問者がリピートで購入してくれるなど市場も広がった。「柳川では、そもそも即日香典返しの習慣がなかったのですが、フリーズドライスープの発売により、この習慣が地域に根付き始めました」(久保氏)。

地域の慣習にまで大きな影響を与えたJA柳川のフリーズドライスープ

「誰が、いつ買うのか」消費者行動を明確化し結果を出す

 2つの商品がヒットへとつながったのは、いずれも先行商品の廃番から学び、商品開発に活かした点が大きい。そのうえで、「AMANERO」は20~40代の女性が土産物店で、フリーズドライスープは葬儀の香典返しとして、という風に「誰がどういうシチュエーションで買うのか」を徹底的にイメージ。販路を明確にしたうえで6次産業化を進めたことが、成功を導いたといえるだろう。

 元々の出発点が規格外品の活用だけに、JAの商品開発は素材や商品ありきになりがちだ。規格外品の活用は、生産者個人で対応するよりは、JAが取り組む方が、生産者にとっても有用だ。しかし、そこだけに目を奪われていては、成功は難しい。その点JA柳川は、販売戦略まで見据えた商品開発により、結果を出してきたと言える。

 その販売量と額は、「AMANERO」が2015年度約3,300本、約134万円、2016年度約1万2000本、約450万円と伸長。「なすとオクラの味噌汁」「ニラ玉スープ」のフリーズドライ商品が2016年度約40万食、約3,800万円、「オクラスープ」「とまとスープ」の新ラインナップが追加された2017年度は、約47万食、約4.200万円に上る。

 効果は売上げだけに留まらない。JA柳川のイチゴ部会に所属する生産者約60人のうち40人が規格外品を廃棄せずに加工用として出荷することで、所得向上の後方支援にもなった。

 「これまでも、規格外品を市場に出す人はいました。しかし、最盛期の生産農家は寝る時間もないほど忙しいため、多くが廃棄処分になっていました。しかしJAで規格外品も引き取るとなると、出荷のついでに納品できます。それで、今まで廃棄していたモノが換金できるようになりました。また、自分たちの作った作物が商品化され話題になることで、生産者の自信につながり、モチベーション向上にもつながっています」(久保氏)。

最大の販路縮小により「AMANERO」の売上に暗雲

 しかし現在、JA柳川では新たな課題にも直面している。発売以来順調に売り上げを伸ばしてきた「AMANERO」だが、2016年10月その販売に打撃を与える事態が持ち上がった。最大の販路だった福岡空港の土産物店が入るターミナルで改装工事が行われることになり、国内第1ターミナルが閉館。売り場が縮小されてしまったのである。

 「AMANERO」は、空港以外にデバートの食品売り場や高速道路のサービスエリア、駅など土産物として売れやすい販売店で販売してきた。そのうち空港の販売比率は突出。なかでも羽田、成田に次ぐ国内3位の年間旅客数を誇る福岡空港での売り上げが最大だった。そのため、福岡空港での売り上げ低迷は、そのまま商品全体の売り上げ低迷に直結する。その結果、2017年度の売上は、約5,500本、約180万円と、前年の4割程度に縮小してしまう。

 一方で、新たな販路を獲得しようと、海外輸出にもチャレンジした。2016年4月には、初の取り組みとしてシンガポールの見本市へ出展。さらに、同年8月にも香港の見本市へ出展している。あまおうは、香港では1パック2000~2500円という高額で販売されていることもあり、富裕層なら買ってくれるだろうという思惑があった。しかし、「AMANERO」は、まずシンガポールの見本市では、「辛さが足りない」「辛さなどにバリエーションをつけたシリーズ物にしないと売れない」など商品面の課題を突き付けられた。さらに、香港では流通面の課題が浮き彫りになる。香港は狭い地域の中に多くの輸出入業者がひしめきあっており、うまく業者やルートを選定しないと潰しあいになってしまう。

 もうひとつ、国内販売においても「AMANERO」は課題を抱えていると、久保氏は冷静に分析する。「AMANEROのような調味料は、結局使いきれず、リピート買いをしてもらいにくいのです。調味料で利益を出し続けていくのは、非常に難しいと分かりました」

6次産業化の成功とともに、販路拡大における様々な課題にも直面しているJA柳川

収益を生み地域に貢献する6次産業化の新たな道を模索

 このような状況を打開するため、どのような選択肢があるだろうか? コンシューマーのリピート買いが期待できないとすると、飲食店向けの業務用販路の開拓が考えられる。もちろん、その際はコストダウンが求められるが、多くの飲食店は常に新たな素材や味を求めており、可能性は少なくない。業務用販路を拡大するため、大手食品メーカー/レストランチェーンとの提携なども選択肢となるだろう。

 中村氏もレストラン展開や販売拡大のための施策に意欲を見せる。「今インスタグラムなどで、レストランで食事をした写真を皆アップします。その際、AMANEROの赤いソースがかかっていて、これは何? という風に話題になれば、口コミでさらに認知されるようになります。これまで外食産業とはあまり接点がありませんでしたが、今後は積極的な連携の可能性も検討していきたいと考えています」

 一方輸出に関しては、直接ではないが福岡県内の仲卸業者が香港に輸出しており、細いルートながら「AMANERO」自体は海外に出荷されている。これをさらに拡大するには、すでにアジア圏に販路を持っている企業や現地企業とのタイアップなども必要となるだろう。

 フリーズドライスープに関しても、現在は好調を維持しているが、JA柳川は楽観していない。ラインナップを強化したとはいえ、消費者の飽きがくるのは早いという。だが香典返しの最適品であるならば、超高齢化社会を迎える今後、潜在的な需要は拡大するに違いない。うまく全国の流通網に乗せられれば、さらなる成長の可能性がある。

 JA柳川では、今後も新製品開発に力を注ぎたいと考えている。 久保氏は、「国産の農産物にこだわりながら、JAでなければできない視点や物語のある商品を、大ロットで展開することでコストを下げて勝負していきたい。商品数だけが増え続けても管理が大変になるので、消費者ニーズを見定め、自信のある商品に絞って開発していきたいですね」と意欲を見せる。

 中村氏も、「今後は事前の市場調査なども本格的に進めていく必要があると思っています。独創性があり、人の心をつかめる商品づくりに挑戦し続けたいですね」と話す。

 JAと生産者だけではなく、地域や企業とのコラボレーションで、6次産業化のスケールはまだまだ広がるはずだ。JA柳川では、今後も新たな商品開発と販路拡大に、意欲的に取り組んでいく。

「あまおう」を栽培中のハウスにて。次なるヒット商品を目指してJA柳川の取り組みは続く
JA柳川の取り組み