30年続く企業連携。沖縄産ハーブを食卓へ!

エスビー食品、生産者と三位一体で一大産地を創生したJAおきなわ

収入が安定する半面、厳しさもある契約栽培

 生産者にとって契約栽培の最大のメリットは、事前にエスビー食品が買い取る単価を契約栽培の仕組みの中で協議済みであるため売り上げ金額が見込めること。「収入が見通せるので、設備投資の計画が立てやすいというメリットがあります」と照屋氏。

JAおきなわ 南部地区営農振興センター 農産部 野菜果実指導課 上原広生氏
JAおきなわ 南部地区営農振興センター 農産部 野菜果実指導課 上原広生氏

 一方で、エスビー食品以外に出荷できないという取り決めもある。JAおきなわ 南部地区営農振興センター 農産部 野菜果実指導課 上原広生氏は、「フレッシュハーブの収穫で余剰が出ても他の市場に出荷しないことを生産者に守ってもらっています。こうした契約栽培の取り決めを履行することを理解してもらうこともJAの仕事です」と語る。

 品質管理も厳しい。クレーム情報はハーブセンターの納入口に張り出し、生産者全員に確認してもらいサインも求め共有。生産者ごとにハーブを掲示し、収穫後の劣化速度が全員に分かるようにすることもある。劣化が速い生産者に自覚を促す仕組みだ。照屋氏は、「エスビー食品との取り決めを履行するということなので生産者の意識は高く、モチベーションや責任感も高まっていると感じます。フレッシュハーブの新規就農希望者に対しては産地全体の評価に関わるので、契約栽培を理解して対応できる人かどうか、会って話したり周囲の評価を聞いたりして、生産部会に入ってもらうかどうかを判断します」と語る。

 人の手なくしてはできない農業では、生産者の気持ちをくみ取った仕組みづくりや対応が必要だ。沖縄のハーブ栽培では、JAおきなわが買い手と生産者の間に入り、地域全体のハーブの品質・納期・量などを管理する。上原氏は、「JAおきなわとしては、エスビー食品、生産者のどちらか一方の立場に寄った対応をすると調整はうまくいきません。そのバランスが難しい」と語る。

 JAおきなわが腐心するのは収穫時期の調整だ。余剰が出てエスビー食品が集荷できない場合、生産者は収穫時期を遅らせ畑に残しておきたいと考える。しかし、植物はちょうどいい状態でとどまってはくれない。すぐに花芽が伸び商品にならなくなる。そこであえてJAから収穫するようお願いする。逆にエスビー食品から、他の産地の収穫が遅れているといった情報があれば、出荷の前倒しを促す。「需給の波をうまく合わせるのが、JAの主な仕事だと思っています」(上原氏)。

企業連携を支える金銭換算できない価値提供

 JAおきなわとエスビー食品は、なぜこれほど長く良い関係が続いているのだろうか。竹井氏は、「照屋さんとの付き合いは24、5年になります。ビジネスの枠を超えた人間同士の信頼で成り立っているような気がします」と語る。照屋氏も、「厳しい時期もありましたが、お互いを尊重しながら苦労を共にして、何でも言える関係を築き上げたことが大きい」と語る。

 ここまで互いに信頼し合えたのは、契約栽培で取り決めた内容を超える相互の価値提供があったからだ。エスビー食品は生産技術の指導や他産地の取り組み紹介など、知恵やノウハウを提供してきた。特に2015年に発生したバジルの“べと病”で大きな被害が出たときには、竹井氏は毎月沖縄に出張し、対策の指導に当たった。「エスビー食品から収量の多い品種の紹介や、効率化を図るための栽培技術指導など、エスビー食品でなければ提供できない価値をもらっています」(照屋氏)。

 一方、JAおきなわには本州にはない台風対策を講じたハウス技術がある。近年本州でも台風被害が甚大になっており、エスビー食品を通してこの技術を伝えることで他地域の生産者に感謝されている。

 とはいえ買い手と売り手である以上、買い手はできるだけ安く仕入れたいと考え、売り手はできるだけ高く買ってもらいたいと考えるのは必定だ。その中で、産地がより良いものを作り続けられる環境を維持し、買い手もビジネスが継続できるよう折り合いをつける必要がある。竹井氏は、「一方が我慢する関係では続きません。互いに知恵を絞りながら協力していくことが重要です」と語る。農業は人が手間暇をかけて1つずつ育て、作るものだ。だからこそ、商取引においても人間同士の信頼がより一層重要になってくるのではないか。

沖縄産ハーブの生産拡大を目指し流通革新を模索

 JAおきなわのハーブ生産は冬場がメインだが、一部は夏にも生産している。しかし、コールドチェーンが確立しておらず、輸送時の品質管理に課題がある。航空会社とも相談しているが、空港敷地内には航空会社が管轄する部分と空港が管轄する部分があり、航空コンテナを空港に着け、飛行機に積み込むまで一気通貫とはいかない。「コールドチェーンが確立できれば夏場の生産が増え、ハーブに限らず沖縄の農業に大きく貢献するでしょう。そのため航空会社と試験に取り組み改善した部分もありますが、まだ課題もあり模索中です」(竹井氏)。

 エスビー食品は日本の食文化にフレッシュハーブを取り入れたいと考え、最大の産地であるJAおきなわの力に期待している。「ニーズに対して供給が追い付いていない中、生産者は2代目、3代目も登場しており、ハーブ生産に魅力を感じてもらっている地域と考えています」と竹井氏。JAおきなわもその期待に応え、生産者と共に産地を育てていきたい考えだ。上原氏は、「エスビー食品の注文に十分に応えられていない部分もあるので、それに応えられるようさらに体制を整えていきたい」と語る。

 30年以上にわたり信頼関係を築き上げ、市場を開拓してきたJAおきなわとエスビー食品。その根幹を支える生産者と共に、さらなる発展を目指す。

 最後に照屋氏は、「生産者、エスビー食品、JAおきなわが三位一体で、みんな笑顔でこれからも取り組んでいきます」と締めくくった。