鮮度の良い肉や野菜が、市場に届かなくなる…?

~他人事ではないニッポンの物流問題。JA物流かごしま

IT化の推進で品質だけでなく、労働環境も改善

 鹿児島県の農畜産物は北関東・北陸辺りまで輸送される。野菜や果物などの青果物は約半分が九州、関東が18%、中京・関西が各15%だ。牛・豚・鶏の食肉は、1割程度が九州で消費されるが、関東には牛・豚が34%、鶏が55%、関西には牛・豚が46%、鶏が31%出荷されている。これらの農畜産物を、コストを抑えながら新鮮な状態で市場に届けるため、JA物流かごしまは様々な工夫を凝らしてきた。

 2019年にはクラウド型の運行管理システムやドライブレコーダーを導入。各トラックのリアルタイムの運行状況や庫内温度を映像で把握し、機器の故障や事故の際、本社からドライバーをサポートし易くなった。ドライバーにとっても安心して運転できるうえ、帰社後の報告業務が不要で負担軽減につながった。小園氏は、「品質管理にも役立ちました。ドライバーから温度に異常があるようだと連絡が届くと、設定に問題があるのか、機械の故障なのかが本社側でも瞬時に把握できるようになりました」と説明する。

 集荷については、鹿児島本港青果物輸送基地を利用した事前集荷により、ドライバーの労働時間を短縮する試みも始めている。また県外に7か所の中継拠点を用意。そこより遠方に関しては提携する運送会社に任せるリレー方式を採用した。提携会社と協力し、関東に3か所、中京地区と関西に各1か所、九州に2か所設置して、長距離輸送を抑制している。

中継拠点となるJA全農青果センター株式会社 神奈川センター(平塚市)の様子
中継拠点となるJA全農青果センター株式会社 神奈川センター(平塚市)の様子

 2018年には待機時間短縮のための実証実験を実施。順番待ちをなくすための時間調整と、経由地までの荷物をバラ積みからパレット積みに変更することで大幅な時間短縮を実現した。

 労働環境の改善にも取り組んでいる。「ドライバーの洗車の手間を軽減するため大型の洗車機を導入しました。汚れた衣類を家に持ち帰りたくない要望にも応え、洗濯機や乾燥機も設置。ドライバーに大変喜ばれています」(平瀨氏)。

 環境対応の面ではモーダルシフトが進む。米やジャガイモなど輸送量が多く全国に送る産品には鉄道コンテナを利用。関西以東に輸送する場合、トラックの荷物は九州から関西へ一旦フェリーで運んでいる。基本的に関西まではエネルギー効率が良く、ドライバーも休めるフェリーを使うことで、働き方改革にも一役買う。一方で、2020年1月から「海洋汚染防止条約」に基づく燃料中の硫黄分濃度の規制が厳しくなり、フェリーの燃料費が上がったため運賃もアップ。コスト高の要因となっている。また、自社の全トラックに窒素酸化物の排出を抑制するアドブルーを採用。これはディーゼル車の触媒内部で排ガスに吹き付けることで、窒素酸化物を窒素と水に分解するものだ。

 品質管理で重要な混載品の温度管理は、トラック内に可動式の仕切りを設置することで実現。トラックの前方と後方に2つの冷蔵装置を設置し、混載する場合は仕切りで区切って異なる温度帯での保管を可能にした。ドライバーがトラックを離れるフェリー内では、フェリー会社に冷蔵装置の稼働確認を依頼。万一止まっていたら連絡してもらうようにしている。

協力会社や荷主と連携し、さらに高度な物流に挑戦し続ける

 労働環境改善、環境対応、品質管理と多面的に業務改善を行ってきたJA物流かごしまだが、課題もある。

 待機時間の実証実験で時間短縮効果を得られたパレット利用だが、パレットの費用負担や管理の問題で市場側と調整が必要なため、実際に利用しているのは一部のルートに限られる。荷物が載るパレットは当日回収ができないため、前回分のパレットを回収することになる。その間市場側で管理する負担が生じる。また事前集荷は県の施設を借りており、拡大するにはJA共同選果場(既存施設)を活用した集荷体制を整備する必要がある。

 また、現在主流のトラックからトレーラーへのシフトも推進する予定だ。トラックの場合、リレー輸送をすると中継地点で荷下ろしと荷積みが必要になる。トレーラーならヘッド部分を切り離せば、そのまま協力会社に引き渡せる。県内では31社の協力会社、全国では34社の協力会社と緊密な連携を図り、より強固なネットワークを構築していく予定だ。

協力会社や荷主と協力し、もう一段階上の飛躍を目指したいと2人の思いは熱い
協力会社や荷主と協力し、もう一段階上の飛躍を目指したいと2人の思いは熱い

 さらに、協力会社や荷主との連携も進めていきたいと考えている。平瀨氏は、「物流会社だけでできることには限界があります。生産者の負託に応えるため、「安全・確実・迅速」をモットーに物流サービスの向上に努めながら生産者と消費者の架け橋として挑戦していきたい」と語る。今後は他組織との連携にも力を入れ、もう一段階上の飛躍を目指す。