誕生600年が間近、最高級茶葉のブランド戦略を訊く

~「八女伝統本玉露」のGI登録とその効果とは? JAふくおか八女

登録から5年間の取り組みと効果

 GI登録から5年。大きな成果として品質の底上げがある。徳永氏は、「内部規定のキロ単価という目標ができたので、みんながそこを目指して作る意識が芽生えました」と語る。自然相手で生産工程も生産者ごとに工夫が可能な農業は、品質のバラツキが出やすい産業だ。そこをGI登録により、ルールを明確化することで、全体の底上げを実現した。それに伴い単価も上昇。GI登録前と比べて平均単価が約1,500円アップした。

 これは生産者の意欲向上にもつながっている。「手摘みが大変で生産者も減るなか、国のお墨付きをもらったことで、生産者が誇りを持てるようになりました」と徳永氏。GIというベースがある中で各生産者が切磋琢磨し、品質を追求し続けていることが、品評会での高評価に結実している。

「GI認証の取得を契機に生産者の意識が高まったのが大きい」と2人は口をそろえる
「GI認証の取得を契機に生産者の意識が高まったのが大きい」と2人は口をそろえる

 GI登録をすると、万一偽装品が出た場合、国がその対応をしてくれるというメリットがある。八女伝統本玉露の場合、国内では今のところそのような事象はないが、海外では似た商標が登録されているので注意をした方がいいと、国から注意喚起があったという。「目が行き届かない海外を見てくれるので助かります」(仁田原氏)。

 GI登録を機に、行政も八女茶ブランド強化に積極的に協力。八女市は小中学校に給茶器を設置した。茶葉はJAふくおか八女の茶業部会が提供。「子どもたちが喜んで飲んでくれています」と徳永氏。食育の一環として、学校でお茶の淹れ方教室も開催している。2020年2月には、八女茶発祥600年を3年後に迎えるにあたり、新たに「福岡の八女茶」ブランドロゴを発表。また、福岡市の大濠公園には、八女茶が楽しめる「大濠テラス」も作られた。「県や市が八女茶のブランド強化に力を入れており、生産者としてはありがたい」と徳永氏は語る。

 海外展開にも積極的だ。八女伝統本玉露推進協議会が海外でイベントを開催したり、有名レストランに売り込むといった活動を行っている。欧州、米国、台湾などに輸出されており、JAふくおか八女では県と協力し、輸出先向けの情報提供や生産指導を行っている。「残留農薬の基準が国や地域で異なるため、そこに合わせた作り方が必要です。販売量との兼ね合いもあるので、ある程度の調整はJAで行います。通常の国内向けも、輸出に切り替えやすい作り方にしています」(仁田原氏)。

課題と展望

 課題もある。GI自体の知名度がなかなか上がらないので、宣伝効果に限界があることだ。GIは輸出時の品質担保や海外での偽装品対策の側面が強く、国内消費者に対するアピール力が強いとは言えない。「正直なところ、販売面に関してはあまりGIの効果は感じられません」(仁田原氏)。

 JAふくおか八女の茶の売上高は、現在約20億円程度。3、4年前の約30億円から急激に減らしている。その理由として需要減や生産者減もあるが、最大の要因は気候問題だ。徳永氏は、「温暖化の影響か、従来通りの作り方ではこれまでの品質を維持しにくくなっていると感じます」と危機感を漏らす。結果、単価低下につながり生産減ともあいまって売上高が減少しているのだ。

 手摘みの人員確保という問題もある。徳永氏は、「最高品質のものになると、適期である2日間のどちらかで摘まないといけません。そこまで厳しくない場合でも、約1週間で摘み終わる必要があります。その間に雨が降ると芽の様子が変わってしまい、品質に変化が生じます」と説明する。早生や晩生など品種によって収穫時期を多少ずらせるので、それらを組み合わせることで調整する。とはいっても、収穫期はかなりの人手が必要だ。この課題を解決するため、本シリーズで以前紹介したJAにしうわの働き手リレーの取り組みに、約2年前からJAふくおか八女も参加している。一部の働き手が愛媛から八女に来て、その後沖縄や北海道に行くという。「農作業に慣れていて、かつ一所懸命頑張る若者が入ってくれると周囲も活気づきます」(徳永氏)。

 八女伝統本玉露推進協議会は、インフルエンサーに試飲してもらい、発信する取り組みを進めている。しかし、コロナ禍もあって販促活動はあまりできていないのが実情だ。仁田原氏は、「地道ですが、やはり実際に飲んでもらうのが基本線です。それができないのは辛い」と打ち明ける。徳永氏も、「日本人のリーフ茶(茶葉から淹れる茶)の消費減少傾向を、どうにかしてくい止めたい。カテキンは免疫力アップの効果があるので、今こそ皆さんに飲んでほしい」と語る。

もっと多くの人にお茶を飲む楽しみを感じてほしいと2人の思いは熱い
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 前述の通り、2023年には、八女茶誕生から600年を迎える。偶然だが同年、全国茶品評会が福岡県で開催される。JAふくおか八女としても、行政や茶商と一体になって大々的なキャンペーンを実施する予定だ。日本が誇る緑茶の伝統を後世まで残していくため、JAふくおか八女のチャレンジは続く。