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市場開拓について倉村氏は、次のように語っている。「国産で安全・安心が売りだったので、当初は学校給食に売り込みました。しかし、後発だったせいか、なかなか入り込めません。そこで、品質勝負ができるスーパーや生協に焦点を変え、徐々に販路を開拓していきました。業務用は中国産を中心に安価な商品が圧倒的に多かったのですが、ここ10年で国産志向の高まりと共に手応えを感じています。現在は市販品6割、業務用4割の比率になっています」。
販路拡大への試行錯誤。苦労の跡が見て取れる。国産・安全・安心志向の高まりは後押しになったが、さらなる一手が無ければ常に埋没と隣り合わせだ。そんな時に始まった機能性表示食品の制度。これこそ決定打になりうるか。ホウレンソウには、ルテインが豊富に含まれている。「光の刺激から目を保護する」という特徴が、機能性表示食品への道を拓くかもしれない。
実はホウレンソウは、冷凍用と生食用では育て方が全く違う。生食用は売りやすいように20cm程度で収穫するが、冷凍用はその数倍の約120日間を経て、60cm程度で収穫する。生食用は根元を付けて刈り取るが、冷凍用は小石や雑草が混入しないよう、上から45~50cmの長さで刈り取る。味も冷凍用の方が甘いという。このような特性から冷凍用の方が栄養価は高く、ルテインも多いと仮説を立て、3年分のデータで調査。結果は明らかだった。100gあたりの平均ルテイン量は、生食用が4.51mgに対し、冷凍用が5.88mg。実に約3割も高かったのだ。

この結果をまとめ、2018年3月、消費者庁に機能性表示食品を申請。5月には受理された。「他の申請者に聞くと、差し戻しが何度もあり結構大変だったということでした。しかし、冷凍ホウレンソウは、既に農研機構(食料・農業・農村に関する研究機関)によるレビューがあったため差し戻しも少なく、比較的スムーズに受理されました」(倉村氏)。
「宮崎育ちのホウレンソウ」は200g、250g、500g、1kgと4つの容量で販売している。そのうちパッケージに機能性表示を付けたのは、レギュラーサイズの200gのみ。申請が受理されたことで、新たな付加価値をPRすることに成功した。その他の容量も品質に変わりはないが、これらは業務用がメインであり、個別消費者へのPRが困難なもの。そのため、機能性表示はパッケージから外している。
「宮崎育ちのホウレンソウ」は冷凍食品での機能性表示第一号となったため、かなりの注目を集めた。マスコミでも取り上げられ、多くの引き合いがあったという。「おかげさまで、機能性表示後は年間売上が倍々で増えています」(倉村氏)。この成功の秘訣を、「長年にわたり、フィールドコーディネーターや生産者と共に品質および収量を高める活動に取り組んできました。その結果、他と並んでも選ばれる商品に育ったのだと思います」と岩切氏は語る。
機能性表示食品に対する外部からの評価は、生産者の意欲向上にもつながっている。生産者とジェイエイフーズみやざきが協力して改善に取り組み、結果を出す。こうした経験が、両者の強固な信頼関係の源だ。
課題もある。生産者の高齢化だ。ジェイエイフーズみやざきは、栽培工程の中での作業受託を行い、生産者の労力を軽減し面積の維持を図ってきた。また自社農場やリタイヤする生産者の圃場を借り受けての栽培も行っている。しかし自社管理での栽培においても人手不足の問題が発生する。その解決のため、データやロボットを活用したスマート農業に取り組んでいる。省力化により、少人数で広い圃場を活用するためだ。
契約栽培農家になることを希望する生産者もいる。しかし工場の処理能力に限界があり、現在新規の受け入れは行っていない。目下、処理能力の向上が求められている。岩切氏は、「収穫物に異物が混入していると、それらを取り除くのに時間がかかり、処理能力が落ちてしまいます。病気対策や収穫段階での異物混入をさらに減らし、作業時間を短縮することで処理能力向上を目指しています」と語る。
消費者への認知度向上も課題だ。岩切氏は、「機能性表示食品に価値を感じる取引先をもっと増やしたい」と語る。
約10年間で一から産地を作り上げ、高品質で安全・安心な商品を開発し、機能性表示食品によってその価値を高めたジェイエイフーズみやざき。これからも地域の生産者と共に、質の高い野菜の生産・加工に取り組んでいく。
