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提案を受け入れた成果は、驚くべきものだった。新しい生産組合の販売単価は、一気に管内のトップと同等の水準に躍り出た。「なぜ、この組合が……」。ほかの生産組合が集出荷場に張り出された市況一覧で単価上昇に目を見張ると、村山氏はここぞとばかりにこう話した。「JAグループが販売を任せてもらっていますから」。
6つの生産組合はこうして4つになり、この4組合は2015年、協議会を改組する形で、あまイチゴ連合会を立ち上げる。連合会では協議会からさらに一歩踏み込み、出荷量全量についてJAグループに販売を任せる共同販売に乗り出した。生産組合の一本化に向けた準備は着実に進みつつあった。
販売結果が出始めても「なぜ一緒にならないといけないのか」という声は依然として根強く、村山氏は「共同販売に踏み切れば出荷ロットはもっと大きくなり、有利な条件で販売できるようになる」と粘り強く丁寧に説得を重ねた。そして次第に「JAグループに販売を任せておけば安心だ」「生産者は本業であるイチゴ栽培に専念すべき」という空気が流れるようになっていた。
連合会で共同販売に乗り出す前に、村山氏は販売単価の引き上げ・維持につながる2つの販売ルートも新しく開拓していた。
一つは、量販店の物流センターへの直納である。幸い、産地の近くには物流センターが立地していたことから、卸売市場経由に比べリードタイムを大幅に短縮できる直納に活路を見いだした。「量販店側は鮮度の高いものを消費者へ提供できるうえ、ロス率を抑えられます。一方、産地側は、量販店の売り場を安定的に確保し続けられます」(村山氏)。
もう一つは、新潟県の卸売市場への進出である。こちらも狙いは「安定した販路の確保」にあった。地元の卸売市場には県内のほかの産地からもイチゴが集まる。数量が多くなれば、販売単価は下がりかねない。そのため、敢えて先回りして異なる地域の市場へ出荷することで売り場を確保しておく必要があった。
しかも新潟市場には、県下有数のイチゴ産地で愛知県南部を管区とするJA西三河が出荷していた。「新潟市場へのイチゴの出荷量はJA西三河がトップでJAあいち海部がそれに次ぐ規模。この2つの産地は同一の出荷規格を採用していたので、すぐに連携し有利な販売交渉を行うことができました」(村山氏)。
このほか、生産組合ごとに課していた荷姿制限の撤廃にも踏み切った。
イチゴの荷姿には、小売店に並ぶ通常の容器のほか、業務用や洋菓子店向けなど複数の選択肢がある。それぞれ販売先が異なるため、収益性にも差がある。ところが生産組合の方針により取り組む荷姿はそれぞれであった。「生産者がこの荷姿で出荷したいと考えても、組合によってはそれができなかった。組合の方針が収益向上のチャンスを奪っていました」と村山氏は指摘する。イチゴ連合会では生産者が自らの経営方針に基づき、荷姿を自由に決められるように改めたのである。
連合会設立2年目には愛知県が開発した「ゆめのか」に栽培品種を統一する作業が完了する。「栃木県生まれの『とちおとめ』が主流でしたが、『ゆめのか』も市場で評価されるようになってきたことから、生産組合内で栽培品種の移行を進めていました」(村山氏)。「ゆめのか」は「とちおとめ」ほどネームバリューはないが、苗栽培時でも病気になりにくく、新しい株になる「ランナー」という茎の伸びが良い。さらに果皮が硬めで収穫時や輸送時の傷みが少なく扱いやすいというメリットも見込まれた。

協議会、連合会、と進んできた一本化への道のりは、連合会設立から3年目にいよいよゴールにたどり着く。2017年10月、連合会を構成する4つの生産組合は合併し、あまイチゴ組合として生まれ変わった。翌11月には、JAあいち海部が同組合の集出荷拠点になるJAあいち海部イチゴセンターを、れんこんや花きの集出荷拠点の近くに開設。生産組合ごとに4カ所に分散していた集出荷拠点を1カ所に集約した。
この集出荷拠点の集約は、組織の一本化と並行して進めてきた重要課題だ。組織の一本化でイチゴの配荷を一元化できても、集荷にばらつきがあると、集荷量全体の見通しを立てにくく、販売先の要望に見合う数量の配荷に踏み切れないこともあるからだ。2020年には配送を担う運送会社も一本化。組織合併以前より異なる運送会社に配送を委託していたことから生じていた非効率を、それによって改善した。
冒頭紹介したような販売金額の伸びは、生産組合の一本化に向けたこうした取り組みを通じて実現してきたものだ。販売単価の引き上げには、出荷ロットを産地としてまとめたこと以外にも、販売先の見直しや荷姿の制限撤廃など一本化の過程で繰り出してきた各種の改善策が効果を発揮している。
合併から5年。「生産組合の一本化という私の掲げた構想の実現に、生産者の皆さんが賛同してくれたからこそ、これだけ大きな推進力と成果が生まれました」と、感謝の念を表す村山氏。協議会や連合会時代に、各生産組合の代表者が建設的な意見を交わし、構想の実現に向けて生産者とJAグループが一蓮托生の想いで前進してきた。
いま願うのは、産地としてのさらなる競争力強化だ。折しも愛知県農業総合試験場とJAあいち経済連が2021年3月、イチゴの新品種を共同開発したところ。村山氏は「新しい品種を市場にどう浸透させていくか、『オール愛知』としての販売戦略が必要です。『とちおとめ』の栃木や『あまおう』の福岡と、いつか肩を並べられるといいですね」と将来をにらむ。

