年間27億円の売り上げで地域を潤す!

大型直売所の先駆け「めっけもん広場」

広場を核に直販体制を強化

 ここ数年、JA紀の里で取り扱う農産物の販売高は総額で120億~130億円で推移。1994年の151億円をピークとして年々落ちていたが、取扱高をピーク時の150億円に戻すための重要施策の1つとして目をつけたのが、めっけもん広場を核とする直販体制の強化だ。

 とりわけ、今やJA紀の里の顔にもなった広場のリニューアルは大きな意味を持つ。全国のトップクラスを維持しているとはいえ、ここ数年は横ばいに留まっているのも事実だからだ。

JA紀の里の直販事業を統括する 販売部 直販課の鈴木雅富課長(写真=水野浩志)

 このリニューアル計画を推進するのが、JA紀の里 販売部 直販課の鈴木雅富課長だ。鈴木課長は「そもそもの構想であった『都市と農村の交流拠点』という考えを具体化していこうと、施設整備委員会を立ち上げて昨年度から協議を進めています。まずは売り場の改装に手を付けます。来年の3月中旬、遅くとも4月にはリニューアルオープンの予定です。具体的には、店内にあるトイレを外に設置して、事務所を2階に移し、売り場を広げます。道の駅の申請も視野に入れています」と語る。

 2018年春のオープンを目指してレストランを作る構想もある。さらに、JAグループの産地直送通販サイトである「JAタウン」の中に「バーチャルめっけもん広場」を11月に開設し、ネット通販の取り組みもスタートさせた。直売事業の新たな戦略として全国各地のJAが、成長するEC市場にも進出を始めている。

農業振興と地域活性化にも寄与

ネット通販サイト「JAタウン」の中に11月開設した「めっけもん広場」(写真=水野浩志)

 めっけもん広場の売り上げが伸びることで、地域の生産者が受けるメリットは多岐にわたる。

 直売所での売り上げは、いわゆる「市場外流通分」になる。一般に、市場で流通する農産物は規格品と言われる。形が悪ければそれを理由に規格外の烙印を押され、流通から外されてしまう。生産者にとっては、安全性も品質も味も変わらないのに売れない。

 これに対して農産物直売所では、市場では規格外としてはじかれてしまう生産物も店頭に出せる。農家にとっては無駄が減る。さらに、めっけもん広場では売れた場合、出荷者に対して半月後に精算する仕組みを取っている。早く現金化できることも農家の経営安定に一役買う。

 めっけもん広場に出荷することが、農家にとっての大きな励みとなる一面もある。紀の川地区でも農家の高齢化は進んでいるが、この広場に出品することで張り合いを感じる生産者が多いという。「農家たちは自分で売り場に商品を並べます。売り残れば自分で引き取る。隣の野菜が売り切れていたら、『次こそは売り切れる商品にするぞ!』とみんな意気込むんです。実際、この広場があるから元気が出て農業を続けられるという高齢者の声もあります。新たに就農した場合も、規格外品の有利販売の受け皿になります」(鈴木課長)。

人気の商品はすぐに売り切れてしまう(写真=水野浩志)

 実際に、めっけもん広場のお客さんで田舎暮らしをしたいと言っていた人が、ここを気に入り、紀の川市に畑を借りて夢を叶えたケースもある。今では、農産物を作って広場に出品している。その夫妻が店に訪れ、鈴木課長に話しかける笑顔は実に生き生きとしていた。このように、広場は、高齢化が進む農家の支援にも、新規就農を促すきっかけにもなっている。地域農業を振興し、ひいては地方創生のためにも果たす役割は実に大きい。

 「雇用や周辺の波及効果も含めると、売り上げ以外の経済効果で10億円という試算もある」(鈴木課長)。人員も8人の農協職員(正職員と準職員)を含めて55人ほど。シルバー人材センターからの雇用もあり、シニアが店頭で元気に働いている。

広場を拠点とした体験ツアーを拡充

 JA紀の里では、めっけもん広場を強化して売り上げを拡大するだけでなく、広場を中心とした農業体験や収穫体験、農家への宿泊体験などの企画を積極的に展開している。広場を都市住民と農村との交流拠点にする構想を実現させるために奔走するのがJA紀の里 営農部の下田和敬二部長だ。

 「都市住民の方に農業に親しんでもらうことが第一の目的です。せっかくめっけもん広場に来たら、農家の話を聞いて理解を深めていただきたい。そのうえで、この地域の農産物を買っていただけるようになるとうれしいですね。地域の農業振興につながると考えています」

 いくつかある仕掛けの1つが、めっけもん広場に隣接する農地(圃場)で行う「ふれあい体験農園」という取り組みだ。圃場の名前は「あがらの畑」。利用者は年間利用料を支払って、この畑の一角を借り、野菜づくりを体験できる。現在の利用者は14人。毎月プロの農家の指導を受けながら農作業を楽しんでいるという。下田和部長は、「どんな人が、どんな思いで野菜を作ってここに並べているのかをちゃんと伝えたいという考えからスタートしました。一時的に収穫するだけではなく、実際に畑に入ってもらい、農家と一緒に野菜を作るという発想です。今は14人ですが今後さらに圃場を広げたいと思っています」と語る。

 収穫体験ツアーもさらに充実させる。この地域特産の桃と柿のツアーを核にしながら、2018年には、いちごの観光農園と提携して、いちご狩りツアーを立ち上げる。めっけもん広場の購買層は高齢層が多いが、もっと若い世代や外国人観光客にも直売所へ来てもらいたいという考えだ。めっけもん広場では昨年、JAの直売所としては全国に先駆けて免税店としての販売もスタートさせ、インバウンドへの備えも調えている。

「あがらの畑」を背に語る、JA紀の里 営農部 下田和敬二部長(写真=水野浩志)

 このほかにも、玉ねぎオーナー制度、芋掘りや田植え体験など、様々な施策を矢継ぎ早に実行していく構えだ。下田和部長は「次から次へと仕掛けをしていきたい。JAは農家組合員が作る組織ですので、『われわれのJAがいろいろやる』と思うと、地域の農家も元気になりますからね」と今後の取り組みへの強い意欲を語ってくれた。

 長年、全国トップクラスの座を維持してきた広場が今後どのように変貌していくのか。また、JAが展開する直売事業を核にした農業振興と地域活性化がどのように進んでいくのか。新しい発想で果敢に取り組むめっけもん広場に、引続き全国の農業関係者の熱い視線が集まっている。