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青果物コントロールセンター連絡会議は原則全メンバーが出席する。重点品目会議は全メンバーを中心に、必要に応じて各JAの担当者が、JA熊本経済連とともに出席する。しかし、各JAから出向するメンバーは地元での仕事もある。しかも、青果物コントロールセンターの事務所は、熊本市中心部にあるJA熊本経済連のオフィス内だ。そのため、各JAから出向する担当者は地元から通わなければならない。
JAやつしろ 係長で、青果物コントロールセンターに所属する西郡義博氏は、自身の働き方を次のように語っている。「基本的に、朝は毎日JA熊本経済連に通っています。午後は八代に戻って仕事をすることが多いですね。通勤は車で2時間近くかかるので、結構大変です。ただ、直接顔を合わせて話をすることで微妙なニュアンスが分かるので、なるべく会って話すことが重要だと思っています。農業もITで可視化して数値管理する取り組みが進んでいますが、やはりそこには必ず農家の経験が入らないとうまくいきません」
JAグループ熊本として市場と向き合うということは、品質が均一でなければならない。JA間で選果作業のバラツキが生じないよう、あるJAが他のJAにノウハウを提供し、全体で品質の底上げにも取り組んでいる。また、近隣のJAから選果を請け負うなどの協力体制も進んでいる。各JAと運送会社の取引をまとめて効率化を図るための輸送改善協議会もある。「JAやつしろでは、JA熊本うきのトマトを選果しています。JA熊本うきはトマトの選果施設がないため、JAやつしろの選果施設を利用して委託選果を行っているのです。農水省の方が視察に来られたとき、こんな取り組みは初めて見たとおっしゃっていました」(西郡氏)
JA熊本経済連では2つの園芸集送センターを持ち、JAからの委託選果及び販売を実施している。重さや大きさ、糖度を自動判別するシステムを導入しているが、最終的な等級判定や箱詰めは人の役割だ。
このような取り組みの結果、まとまった数量・品質の産品を市場に安定供給できるようになり、JA熊本経済連の青果物の取り扱い金額は、2005年の約597億円を底にV字回復。2017年には、約824億円と4割近くアップしている。例えば夏秋期のトマトは販路も拡大し、九州中心の販売から大阪や東京など大消費地に対しても出荷され、そのため年間を通して出荷可能となった。
情報共有により予想価格の精度は向上している。川部氏は、「特に全国で一番早く出荷し、数量も多いスイカと、冬場に強いトマトは全国シェアが5割以上あり、熊本の出方次第で相場が決まるようになっています」と胸を張る。生産者にとっても、メリットは出ていると西郡氏は次のように語っている。「生産者から今の市場動向などを聞かれることも増え、青果物コントロールセンターの機能が明確になり、情報が行き渡っているのを感じます。我々も、生産者から『なぜこの値段なのか』と聞かれて、その理由を語れるようになりました。生産者がそのような情報の裏付けのもとで、規模拡大などの判断をしています」。さらに川部氏は、「価格がわかるようになると、収入の計算ができます。それが可能になったトマト類やナスを主力とする農家は、後継者が育っています」と語る。
予測困難な農業にあって、青果物コントロールセンターの取り組みにより、市場の要求にできるだけ応える取引が実現しつつある。
現在、青果物コントロールセンターでは主に販売面での取り組みを進めているが、生産の連携にも取り組みたい意向だ。しかし、JAごとに植え付けの時期や品種も微妙に異なり、天候にも左右されるため、生産面での調整は難しいのが現状だ。基本はJAごとの販売。出荷先調整などもできる範囲で行っているが、熊本全体での一本化には至っていない。
また、人間の力が重要な農業ではコミュニケーションの機微が求められ、西郡氏のように毎日2時間かけて通うなど、各JA担当者の熱意や努力で協力体制が実現している面も否めない。川部氏も、「全体に協力的ですが、JAごとに温度差はあります」と認める。JAの担当者は、基本的にローテーションで担当が変わるため、人が変われば関わり方も変わる。今回構築した協力体制をより強固にし、成果につなげていくためには、属人化を排した効率化も求められるのではないか。
川部氏は今後について、「一元的な生産や販売が理想であり、オール熊本としてさらなる販売強化ができるよう取り組んでいきたい」と語る。熊本全体の農業の振興を目指し、JAグループ熊本の取り組みはこれからも続く。