いちご農家も“働き方改革”

パック詰めの負担を減らし、収量と単価を向上させたJAからつ

パッケージセンターがもたらした単価・所得アップ

 同センターは、出荷するいちごの品質にもプラスの影響を与えた。生産者個人がパック詰めをしていた時に生じていた選別のバラつきが、センターでまとめることで解消された。選別のバラつきのない商品を出荷できることはJAからつの信用につながり、市場との交渉でも有利に働いた。

 単価の高い製菓用いちごは、特殊なパッケージでの納品が求められるが、そうしたパッケージングにも柔軟に応えられるようになった。少量パックや贈答用パッケージなど、パッケージングがいちごに付加価値を与え、単価アップに大きく貢献した。収量と単価の増加により、生産者の所得も向上。一戸あたりの売上金額は、2015年の1050.1万円が、2017年には1122.8万円となった。

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特殊なパッケージにも個別対応が可能となった

 出荷面のメリットもある。JAからつ 営農販売部 営農販売課 園芸・花卉販売係(兼)出荷物流係 課長代理 飯田隆幸氏は、「センター稼働前は当日集荷が原則。どの等級のいちごがどれだけ入荷するかは、当日にならないとわかりませんでした。センター設立により、前日集荷を実現。翌日の計画がしっかり立てられるようになりました」と語る。

センターに届いたいちごは翌日まで予冷し、エチレンカットが行われる
センターに届いたいちごは翌日まで予冷し、エチレンカットが行われる

生産者に寄り添い計画を推進

生産者への丁寧な説明が何より大事だと語る飯田隆幸氏
生産者への丁寧な説明が何より大事だと語る飯田隆幸氏

 結果が短期的には見えづらい「働き方改革」だからこそ、中・長期的なビジョンの提示と、具体的なシミュレーションは欠かせない。多くの成果をあげ、今ではなくてはならない存在のいちごパッケージセンターも、設立前は反対も多かった。予冷庫や自動選果機を完備した大規模なパッケージセンターだけに、その投資額は莫大なものとなる。費用対効果に不安を抱く生産者もいた。実家がいちご農家の飯田氏は当初の生産者の不安を、「経費倒れになるのではないか、生産者が減少するなかで本当に償却することができるのか。手塩にかけた自分のいちごを、他の生産者が作ったものと一緒に売られたくないと考える人もいました」と説明する。

 不安を抱く生産者に対し、JAからつは時間をかけて丁寧にヒアリングを重ねた。生産者に対して5年後の生産規模予測などを調査し、計画に落とし込んだ。「何度もヒアリングを重ね、計画の精度を上げていきました」と山口氏。売上・経費のシミュレーションも具体的に生産者に示すことで、センターのメリットを訴求。生産者への説明を重ねた。

 費用は初期投資額をJAが負担し、利用者が1kg当たり2円の利用料を10年間支払うという方式で分担した。「生産量が増加し、所得が増えたので、パッケージセンターにかかる経費分を引いても収入は確実に上がっています」(本弓氏)。

JAからつ 唐津地区いちごパッケージセンターの外観
JAからつ 唐津地区いちごパッケージセンターの外観

新品種「いちごさん」でさらなる収量増を目指す

 JAからつが、今期待をかけるのが、2018年10月、佐賀県で20年ぶりに開発された新品種「いちごさん」だ。最大の特徴は、収量の多さ。山口氏は、「現在の主力品『さがほのか』が1株当たり8個程度成るのに対し、『いちごさん』は1株あたり16~22個と倍以上です」と説明する。2019年は一部の生産者のみの栽培に留まるが、今後生産者と相談しながら切り替えていく予定だ。そこに向け、普及と栽培方法の確立を進めていく。「センターの導入によって収量が増加しましたが、『いちごさん』への切り替えによってさらに収量増加を見込んでいます」(飯田氏)。

新たなハウスを建てるのには1000万もの高額な費用がかかる
新たなハウスを建てるのには1000万円もの高額な費用がかかる

 一方で、管内のいちご生産者数と面積は、現在も減少を続けている。本弓氏は、「JAから生産面積を増やしてほしいと言われていますが、新たにハウスを建てるのに1000万円程度かかるため、簡単にはできません。廃業したハウスがそのままになっているものもあり、もったいないとは思うものの、活用が進んでいません」と苦しい胸の内を語る。

 生産者の労働環境改善、生産性向上という「働き方改革」の最初の課題を乗り越えた唐津地区が今後、生産者と生産面積をプラスに転ずることができるのか。JAからつの挑戦はこれからも続きそうだ。

JAからつの取り組み