地方発ヒット商品開発のセオリー

地域と連携して6次産業化を推進するJA小松市

異業種との連携や地元企業の協力でヒット商品へ

 トマトカレーをJA小松市が運営する「道の駅 こまつ木場潟」の目玉商品にしたいという小松市の要望もあり、2010年4月のオープンに合わせて販売を開始した。さらに販路を拡大すべく、県内外の商談会に出掛けていった。当時の様子を北口氏は、「とにかく食べてもらおうと、声がかかればどこへでも行きました。卸売りの仕組みや賞味期限のルールなど流通の常識を全く知らなかったので、『そんなことも知らないの?』と言われながら1つずつ教えてもらいました。異業種の方々との交流で多くを学びました」と語る。

 谷口氏と北口氏が所属する営農部は、生産者を支援する部署である。そのため販売に関しては担当外だった。そこで、販売を担当する部署である経済課とともに、卸業者などとの価格交渉を行うこととした。それ以外の場面でも、異業種連携によるJAグループ外の知恵と経験は大いに参考となり、積極的に耳を傾けるべきだと考えた。

 2013年7月、小松市、コマツ、JA小松市の3者で小松市の農業活性化を目指した「農業に関する包括協定」を締結したことにより行政の支援もあった。「県のフェアに優先的に出してもらえました。イベントも市の広報でアピールしてもらえますし、小松市長が出張の際のお土産に持っていってくださったのもありがたかったです」(北口氏)。

 県内の販路は徐々に広がり地元スーパーに加えて、イオンにも置いてもらえるようになった。これはJA小松市がイオン内に米屋を出店している縁で実現したものだ。また、小松市で創業した世界的な建機メーカー、コマツも協力。社員食堂でトマトカレーを扱ってもらったり、同社が主催するゴルフ大会「コマツオープン」のお土産にしてもらうなど、知名度アップの大きな力となっている。

 マイルドトマトカレーは、2010年「優良ふるさと食品中央コンクール」の国産農林産品利用部門で農林水産大臣賞を受賞。メディアにも取り上げられ、販売に弾みがついた。

 このような地元自治体や企業と連携し盛り上げていく試みは、県外に積極的に出たからこそ分かった。「販路を開拓しようと外に出ていくと、皆さん『本当に地元で食べているのか』と聞かれます。地元でファンをつくらないと続かないし、地元が盛り上がらないと外でも認められないことがよく分かりました」と谷口氏は語る。地方発ヒット商品の原点は、地元で売れてこそ全国区への飛躍の原点という、聞けば当たり前のようなことにあった。そして、それこそが400円超という異例の高単価でも購入される成功の秘訣だった。

産地PRのツールとして6次産業化を推進

 現在は、マイルドとヘルシー、新たに開発した「29種類の焙煎スパイスでじっくり煮込んだ国産ビーフの熟成トマトカレー」の3種を販売している。市販品だけでなく、飲食店向けの業務用もラインアップに加わった。現在は、道の駅、空港、金沢市内のレストランなどに卸している。近年の年間販売量は約6万食で推移。緩やかな増加を保っている。ヒット商品となったことでメディアにも取り上げられ、トマト産地としての知名度が上がったことで生産者のモチベーションもアップしている。

30~40代の若い世代のトマト生産者が半数を占める

 規格外トマトを買い取ったことで思わぬ効果もあった。以前は規格外トマトが道のすぐ脇に大量廃棄されていたが、それがほとんどなくなったのだ。景観が良くなったと、行政からも市民からも喜ばれている。

 JAの価値についても考えるようになったと北口氏は次のように語る。「加工業者さんから、『みんな消費者が何を欲しがっているかを知りたがっている。JAは生産者に一番近く消費者とも近いところにいるのに、それを活用しないのはもったいない』と言われました。実はパッケージにJAと入れるのはダサイから外そうと考えていたのですが、それも卸業者さんから『JAのマークがあるからこそ安心感を与える』と言われ、そんなものかと思いました。中にいると気づきませんが、その価値を大切にしていきたい」

 JA小松市にとって、6次産業化商品はあくまでも産地PRのツールという位置づけだ。生産者だけではできないPRを肩代わりすることで、生産者の経営やモチベーション向上に資する活動を続けていく。そのために、新たにケチャップや一度は商品化を断念したジュースにも取り組み始めた。谷口氏は、「これからも独自商品を少しずつ増やし、生産者を支援していきたい」と締めくくった。