ナガイモ発電所って何だ?

~廃棄物を宝の山へ! 野菜くずをエネルギーとしたJAゆうき青森

稼働後も次々と課題が出現。改善を繰り返しながら運用

 それぞれの役割分担は次の通り。合同会社がバイオガス発電設備を導入し、JAゆうき青森に賃貸する。JAゆうき青森はこの発電設備でナガイモ残渣の自家処理を行う。合同会社は電気を固定価格買い取り制度(FIT)により東北電力に売電し、売電料金の一部をJAゆうき青森にガス代金として支払う。この発電設備は豊橋技術科学大学を含む産学コンソーシアムの独自開発による豊橋式バイオガス発電システムを採用しており、同大学がメタン発酵技術を監修。稼働監視も豊橋市から遠隔で行っている。設備の保守管理は専門業者に委託しているが、委託先が遠方のため基本的には無人稼働だ。日々の管理はJAゆうき青森が担当し、毎朝目視による簡単な確認作業を実施。問題がある場合のみ委託先に連絡し相談している。

 発電プロセスは、原料となるナガイモ残渣を破砕するところから始まる。選果場ラインの末端で砕いたナガイモ残渣を原料槽に投入。その際、発酵を促す“種”として牛糞尿を添加する。そこから微生物の増殖を促すため、発電機から回収した排熱によりおおむね39度に保たれた発酵槽に移動する。30日間かけてメタン発酵し、発生したバイオガスはガスホルダーで貯留。このガスを利用し30kWの発電機で発電する。保守管理拠点が遠方なこともあり、同じ発電機を2台設置して交互に利用。万一の場合はバックアップが取れるようにした。

発電機は遠隔から無人稼働し、目視点検をJAが行う
発電機は遠隔から無人稼働し、目視点検をJAが行う

 発電の開始は2018年11月28日。ナガイモ残渣を使うバイオガス発電はこれまで例がないこともあって、稼働後は次々と問題が起こった。冬に向かう時期に開始したため、まず原料が凍ってしまった。そこで、凍らないようヒーターで温めた。また、ナガイモはデンプンが多く発酵の効率はいいが、放っておくとデンプンが沈殿し水分と分離してしまう。そのため攪拌(かくはん)作業が欠かせない。当初ナガイモ残渣は固形のまま発酵させていたため、原料槽から発酵槽に移動する際、固形物が詰まってしまった。そこで、細かく破砕しとろろ状にすることにした。それを解決したら、今度は皮に生えているヒゲ根が詰まってしまった。現在もこの課題解決に取り組んでいる。「初めての試みなので思い通りにいかないことも少なくありません。補助事業は計画を変更するたびに報告や申請が必要になります。今回は補助事業を使わなかったので、補助事業に関わる報告や申請が必要ありません」と乙部氏は語る。

ナガイモ残渣処理費用の3分の1軽減を目指す

 発電は基本的に24時間365日実施。JAゆうき青森にとっては、設備賃借料からガス販売代金を引いた差額がナガイモの処理費用となる。年間を通して収支計算をしているため現在(2019年8月)収支は確定していないが、従来かかっていた処分費用の約3分の1、700万円の削減を狙う。費用がかからず負担が減るため、生産者の期待は高い。当初の計画より縮小したとはいえ、生産者が個人で発電設備を導入するのはほぼ無理だ。生産者の課題を知るJAという組織だからできた事業といえるだろう。

規模は大きくないが、バイオガス発電のノウハウが詰まっている
規模は大きくないが、バイオガス発電のノウハウが詰まっている

 JAゆうき青森は、さらなるエネルギーの活用も検討している。まず、発電過程で出る排熱を活用したハウス栽培だ。また、発酵後に残る消化液は投入した原料とほぼ同量発生するが、病原菌がほとんどなく成分が肥料に向いているため液肥として活用する予定だ。

 NEDOの実験でナガイモ残渣と一緒に利用していた牛糞尿は、今回のバイオ燃料とはならなかった。しかし、この処分に苦労している酪農家の関心は高い。「1軒での導入は無理なので、何軒か集まるのか集落全体で取り組むのか未定ですが、話は出ています」と乙部氏。

 廃棄物の処理に関する規制は、今後ますます厳しくなることが予想される。処分費用軽減という意味でも、資源の利活用という意味でも、同様のニーズを持つ産地は全国に多いはずだ。そこにビジネスチャンスが眠っている。

これからも挑戦し続けたいと熱く語る2人
これからも挑戦し続けたいと熱く語る2人