ドローン&AIでぶどう栽培はどう変わる!?

~テクノロジー導入でノウハウ習得の短期化に挑むJA梨北

粒の適正化に役立つスマートフォンアプリを開発

 ぶどう栽培において、もう一つ手間と経験が必要になるのが摘粒作業である。これは、房を構成するぶどうの粒を適切な数に間引く作業だ。例えばピオーネの場合、一房に80粒近くなるが、30~35粒に間引かないと色が均一で大粒の果実に育たない。高品質のぶどうを栽培するにはこの作業が必須だが、それができるのは5月下旬から6月中旬の2週間程度。早朝から夜まで家族総出での作業が続く。効率よく35粒程度に摘果するため作業開始時に35粒のイメージを覚え込み、それを頼りに行う。とはいえ、何時間も同じ作業を続けていると感覚が鈍ってしまう。「ベテランでも多く残してしまうことがあります」と安部氏。

粒数を解析するアプリを活用することで瞬時におおよその粒数が分かる

 そこで、房だけを撮影してAI(人工知能)で粒数を解析するアプリを開発することにした。旧知のIT技術者をパートナーにiPhone用アプリ「葡萄粒」を完成させ、無料で配布した。撮影精度をより高めるため、撮影時に対象の房を入れる黒いボックスも開発し、これはJA梨北で扱っている。「1時間に1回程度撮影して感覚をよみがえらせるといった使い方を想定しています」(安部氏)。

 その開発姿勢はあくまで生産者視点だと岩下氏は語る。「研究者が作ると撮影精度を追求するため、例えば360度カメラで全体をくまなく撮影しようとします。そうするとボックスが大きくなって現場では扱いづらい。精度はそれほど高くなくても、簡単に扱える方が重要です」。

 アプリのダウンロード数は伸びている。ボックスについても、全国の新規就農者を中心に問い合わせが寄せられている。

AIによる収量予測にも挑戦。全国展開を目指す

 ドローンの撮影画像を枝の剪定以外に活用しようとする試みも行っている。畑全体の樹形画像を活用し、樹の先端の“実がなるポイント数”をAIで自動認識し、来季の収量予測をしようというのだ。収量が分かれば収入も予測でき、取引先との交渉に生かしたり、収入に合わせた計画的支出も可能になる。より精度を高めた撮影と画像合成にも挑戦し続け、その方法はほぼ確立できた。ただし、現時点のAIは静止するものの自動認識を苦手とする。動いていれば時間をずらして撮影しその差異で対象を捕捉できるが、静止していると比較対象がないからだ。2人はIT技術者と共に、現在この課題に挑戦中だ。

 もう一つの課題は普及活動である。そこを担うのがJA梨北だ。矢崎氏は、「管内については、ドローンで撮影した画像を基に剪定の相談に乗ることはできます。今後全国のぶどう産地のJAに声をかけて、希望するJAに技術や効果を紹介し、各JAが地域の核となって普及がなされればと思っています」と語る。安部氏は、「まだ全体の目標からすると道半ばですが、やる価値があることは実証できました。JAと協力し、全国の新規就農者の力になりたい」と意欲を語る。

 「ぶどう農家の仕事ではない他の仕事に就いたのに、今ではこんなにぶどうの仕事を一生懸命やっています。それは、この地がぶどう栽培に最適で本当にいいものが採れるからです。この伝統ある産地を絶やしたくない」と岩下氏。

 彼らの挑戦がこの地域の、ひいては日本のぶどう栽培に寄与していくことを期待したい。

ぶどう栽培に最適な伝統ある産地を絶やさないための挑戦は続く