働き手リレーって、いったい何?

~農業人材不足を解消する画期的なアイデアをJAにしうわに聞く

元気になる楽しい職場に毎年通うアルバイター

川上舌田雇用促進協議会 副会長 高橋竹昭氏

 菊池氏に生産者とそこで働くアルバイターを紹介してもらい、話を聞いた。生産者は、川上舌田雇用促進協議会 副会長 高橋竹昭氏。約1.6ヘクタールの畑で温州みかんを生産しながら、地域で雇用促進活動にも尽力している。高橋氏は、家族(母と妻)2人、親戚が1人、協議会を通じたアルバイターが1人、本人の計5人で収穫作業を行っている。

香川県出身のアルバイター 川西菜美さん

 今年アルバイターとして来たのは、香川県出身の川西菜美さん。3年目となるリピーターだ。川西さんがここで働くようになったのは、他の季節労働の職場で出会った知り合いに紹介されてのこと。川西さんは、「景色がすごく良いから一度行った方がいいと言われて来ました。実際本当に景色がすばらしく、元気になります。収穫作業をしながら他愛もない話をするのですが、それがすごく楽しい。ここに来る前三重県大杉渓谷の山小屋で働いていました。本当は山小屋を閉めるまでもう少し期間があったのですが、ここに来たかったので、少し早めに山を下ろしてもらいました」と語る。

 高橋氏も、「毎年スキルアップしていて、いい戦力になってくれています」と評価する。JAにしうわの取り組みについては、「行政と協力して宿舎を作るなど、生産者単独ではできないことに取り組んでくれ、助かっています。ハローワークなどで募集しても人が集まらない今、JAと組んで労働力を確保するのは必然です」と語る。

JAこしみずとも連携し労働力を相互補完

 JAにしうわの産地間連携は、これだけではない。北海道小清水町のJAこしみずと姉妹JA協定を締結。農繁期が異なる両JAから相互に人材を送っている。もともとJAにしうわでは、2014年から農作業の手伝いをする臨時職員を雇い入れ、生産者の要望に合わせて支援していた。「高齢化により重労働が難しい人が増えていました。しかし、手伝いに来てもらおうにも人がいない。そこで、必要に応じて支援できる人材を用意することで、高齢者にもできるだけ長く働いてもらえるようにしたいと考えました」(菊池氏)。

 この取り組みに興味を持ったJAこしみずが視察に訪問。その際にJAこしみずが投げかけたのが、「通年で仕事があるのか」という疑問だった。実際、JAにしうわでは繁忙期はうまく仕事が回っていたが、春先は農閑期だった。一方JAこしみず管内は冬場は雪に埋もれ、気温が-10度を下回ることもある厳寒地のため、ほぼ農作業ができない。

 両者の繁閑期が異なっていたため、出向の形で人材交流を行い、互いの労働力を補完すべく姉妹JA協定を締結。両JAの職員や管内の後継者が相互訪問し、仕事を手伝い合っている。労働力の相互提供だけでなく、訪問時にそれぞれの産品のPR活動を行うなど、労働力の交換(提供)にとどまらない関係になりつつある。

異業種との連携も視野

 様々な取り組みで労働力の確保を進めてきたJAにしうわだが、課題も残る。まず、宿泊施設の問題だ。2019年、350人のアルバイターを「西宇和みかん支援隊」で確保したが、地域全体の援農者数は約2000人に上り、多くは生産者の親戚や知人に頼る。菊池氏は、「本当はもっと来てほしいのですが、宿泊ができないためこれ以上は難しいのが現状です」と語る。

 3JAによる働き手リレーについては、アルバイター募集に関わる業務の効率化が課題だ。現在は互いに訪問してアルバイターを対象とした説明会を開催しているが、今後はJAふらのがJAにしうわの説明会を代理で行うというように、出向かずに募集することも検討している。また、この働き手リレーという取り組みに興味を持つ全国の産地は多く、協議会に参加したいという希望が多く寄せられている。しかし、菊池氏は「現在の3JAは繁忙期が異なるため、競合することなく働き手リレーが形成されています。しかし、他の地域も加わるとなると競合するので難しい。どういう形にすればいいのか悩んでいます」と難しさを語る。そのため、現在は希望する産地の求人チラシを置く程度の協力にとどまっている。

 JAが間に入ることで、生産者にとってもアルバイターにとっても満足度が高い短期就労の仕組みを構築したJAにしうわ。繁忙期が異なるJA同士がタッグを組むことで、より優秀な人材を効率よく確保できるようになった。今後は、水産業やリゾート産業など、季節労働が発生する異業種との連携も視野に入れ、働き手リレーの拡大を目指していく。

労働力の不足解消に向け、働き手リレーは今後も拡大を目指す