逆境をチャンスに変える「産地づくり」の競争戦略

~ブロッコリーで10億円の売上間近! JA島原雲仙

産地創出のカギは儲かる営農スタイルの構築

 産地が継続して成長するのに不可欠なのが、人材育成だ。そこで、2015年「若手後継者会」を発足。定例会や勉強会、品種試験および現地検討会、さらには後継者のいない畑など地域全体に関わる問題にも取り組み、今や雲仙ブロッコリー部会の中心的な存在となりつつある。「産地の未来のためには、次世代を担う農家のリーダーが必要です。後継者会の中からリーダーが育ってほしい」(林氏)。

 事業戦略の中心となるブロッコリー専業農家も増えている。2019年には部会員55名のうち、年間4,000ケース以上を出荷する大口農家が33名。その33名で販売額の87%を占めた。6、7年前は部会員約40名のうち大口農家が約20名だったので、その割合は増加傾向にある。ブロッコリーだけで十分稼げるようになれば後継者となる若手は増え、やる気も増す。

ブロッコリー専業農家の 谷﨑直登 氏
ブロッコリー専業農家の 谷﨑直登 氏

 ここまでの成果について林氏は、「当初から儲かる営農スタイルを構築できれば、産地づくりはできると思っていました。こんなに上手くいくとは思っていませんでしたが、専業農家を増やす事業戦略をぶれずにやってきたのがよかったと思います」と振り返る。

 JAについて大口専業農家の谷﨑直登氏は、「JAは収穫物を高く売ってくれるので、これからも期待しています」と語る。

スマート農業でさらなる効率化・出荷増を目指す

 現在JA島原雲仙では、4つのスマート農業の実証実験に取り組んでいる。まず現在アナログで行っている出荷予測のデジタル化だ。デジタル化により集計の省力化と精度の向上を目指す。2つめが連作障害対策のための圃場の見える化だ。連作による根こぶ病が問題となっており、圃場ごとの土のサンプルを分析しマッピング。圃場の状態に合わせて対策を行う。「分析に費用がかかりますが、汚染の状況がわかれば適切な対策をうてるようになり、無駄な農薬を使うこともなくなります」(林氏)。3つめが自動操舵の耕運機による畝作りと同時施肥、収穫物の自動搬送などスマート農機による省力化だ。最後が機械による自動選別である。2020年から2年間の取り組みで、まだ結果は出ていないが研究機関やメーカーと協力して事業を推進している。この取り組みでJA島原雲仙は、10aあたりの労働時間として秋作12%、冬作13%、春作6%以上の削減、作付面積および出荷量を11%増やすという目標を掲げる。

現在は手作業で選別作業をしているが、将来的にはカメラで自動選別することを視野に入れている
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現在は手作業で選別作業をしているが、将来的にはカメラで自動選別することを視野に入れている
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現在は手作業で選別作業をしているが、将来的にはカメラで自動選別することを視野に入れている

 雲仙ブロッコリー部会の2023年までの目標は、前述の通り既に達成間近だ。さらにJA管内全体で、2025年までに5,000トン、20億円のブロッコリーの売り上げを目指す。2019年のJA管内全体のブロッコリー売上高が約11億円なので、かなり大きな目標といえるだろう。林氏は、「雲仙ブロッコリー部会の取り組みをひとつのベンチマークとして、大口専業農家を増やすことで目標を達成していきたい」と意欲を語る。現在の集荷場は既にキャパシティーが限界に来ているため、別地区に新たな集荷場の建設も計画する。

 一方で産地間競争は厳しさを増す。新型コロナウイルスの感染拡大で市場の予測がつきにくくなったと語る。「新たなブロッコリー産地が増えています。これまでは低温輸送による差別化で、他の産地が増えても生き残れるという自信がありました。しかし、今年は他の野菜の安値に引っ張られて単価が上がらず、業務用の需要減もあり先が読めない状況です。しかし、冷凍用は現在すべて輸入に頼っているので、まだ市場の拡大は可能とも考えています」。

 JA島原雲仙の最大の悩みは、ブロッコリーに次ぐ品目の発掘だ。「ずっと考えているのですが、なかなか見つかりません。これが露地野菜の難しさです」と林氏。JA島原雲仙は、次に何を仕掛け、どのように産地を育てていくのか、楽しみである。