「ふるさと納税」大競争時代に活路!

~自治体に伴走し4年で約76%成長したスゴイ仕組み JAみなみ信州

年間1万人の声が財産に

 消費者の声に真摯に耳を傾け、商品・サービスの改善に努めることは、企業の成長に不可欠だ。DMセンターは、消費者の気持ちをつかみ、自治体・生産者と橋渡しをする重要な役割を担う。その取り組みのひとつがコールセンターだ。DMセンターでは、繁忙期はオペレーター7名が常駐し、電話対応をする。その件数は年間1万件にも及ぶ。コールセンターの品質向上に努め、研修会の実施やマニュアルも作成。傷みなどのご指摘に対しては、写真データを送ってもらい丁寧に対応している。

DMセンターお客様相談窓口の様子。通話内容は書面化し、ご指摘等の再発防止に取り組む
DMセンターお客様相談窓口の様子。通話内容は書面化し、ご指摘等の再発防止に取り組む

 コールセンターの存在は、自治体に多くの恩恵をもたらした。ふるさと納税返礼品の場合、自治体は細かい商品説明や要望の聞取り、商品が傷んでいるといったご指摘には対応しきれない。にもかかわらず問い合わせ件数は多く、かなりの負荷になっていた。DMセンター設立後は、コールセンターに問い合わせが一元化され、自治体は煩わしい電話対応から解放された。

 消費者の声や動向が把握できることも自治体には大きなメリットになった。ふるさと納税サイトに業務委託した場合、消費者の声や情報が自治体では把握できないケースが多い。一方、DMセンターを通した場合は、例えばご指摘については、内容から解決までの経緯がすべて書面で報告され、貴重な情報となる。

 コールセンターではすべての通話内容を、行政別、商品別に、食味や外観、配送といった内容で細かく分類し傾向を分析。関連部署と情報を共有し、PDCAサイクルを回している。「頂いた声に真摯に向き合う。例えば、小さな事故でも二度と起こらないよう再発防止に取り組んだことで、事故発生率は劇的に改善しました」と内山氏は語る。

 さらに、年間1万人の生の声は、お客様の「用途」を意識した商品開発につながっているという。「消費者の声から、ふるさと納税のヒット商品が生まれました。訳ありだけどお値打ちの商品、桐箱入りの極上品、一定以上の糖度であることを保証する商品、100%蜜入りを保証したリンゴなどは、コールセンターなしでは生まれなかったアイデアです」(内山氏)。

贈答用市田柿は厳選された大粒20個を桐の化粧箱に入れて200箱限定で発売。ヒット商品となったのは消費者の声がきっかけだ
贈答用市田柿は厳選された大粒20個を桐の化粧箱に入れて200箱限定で発売。ヒット商品となったのは消費者の声がきっかけだ

 生産者の課題解決という観点でも、大きな役割を果たしている。例えば、リンゴは大きくて食味も良い極上品は数量がとれず、収穫の大半は中玉だ。そこで、DMセンターが中心になって中玉中心の商品を開発し、売上増に結び付けた。内山氏は、「お客様のニーズと生産者のマッチングが、無駄のない販売増につながっています」と語る。

 生産に関係のある問題が発生した場合は、生産部会に即座にフィードバック。生産面での改善も支援し、消費者に選ばれるモノづくりを進めている。

見えざる課題! ふるさと納税の物流問題も改革

 物流改革も行った。ふるさと納税では、繁忙期の11月、12月にその7割が集中する。人気の桃はピークが短く、約2週間で4万ケースを出荷しなければならない。配送先はほとんどが個人宅だ。迅速に出荷しなければ傷みの原因となるため、効率よく発送する仕組みが求められる。JAみなみ信州では大手物流会社と連携し、DMセンターを司令塔とする新たな物流システムを構築した。

 その一つが配送ルートの工夫だ。通常、このエリアの荷物は長野県中部の松本市に集められ、そこから愛知県の物流センターに送られる。これだと一旦北上し、再度南下することになるため無駄が多い。そこで、物流会社と交渉し、愛知県の物流センターに直接配送する仕組みを整えた。これらの物流改革により繁閑差の多いふるさと納税にも、効率的に対応できるようになった。

 積み込みも工夫している。内山氏は、「繁忙期はチャーター便を用意し、箱の大きさと数を立法計算して荷積みしています。できる限り無駄を排除することで、コスト削減を図っています」と語る。

DMセンター専用チャーター便の出荷の様子。無駄のない荷積みでコスト削減を図る
DMセンター専用チャーター便の出荷の様子。無駄のない荷積みでコスト削減を図る

 DMセンターの改革は他にもある。代表例が、生産者から100%買取りする仕組みだ。内山氏は、「100%買取りにすることで、天候などによる相場の影響に不安を抱えながら作業をすることがなくなり、作ることに集中できると生産者から好評です。モチベーションアップにもつながっています」と語る。結果として、ファンも増え、リピート率も向上。高品質なものを直接販売することで単価も向上した。2014年に2,234円だった桃5kgあたりの総平均単価が、2018年には2,801円へとアップ。実に500円以上も上がった。

コロナ禍を乗り越え、リニア中央新幹線開通も見据えて

 課題に取り組み、結果を出し続けたことで、JAみなみ信州は自治体からの信頼も厚く、今では提案を頼まれる状況だ。その機運を活かし、JAみなみ信州の取り組みは加速する。狙うのは、南信州ブランドの確立だ。

 ふるさと納税返礼品にはDMカタログを入れ、地域を紹介するチラシも同梱。直売所もPRする。リピーター獲得を狙う取り組みだが、別の意図もある。「おいしい果実を通じて地域のファンになっていただき、アフターコロナには、是非、南信州にお越しいただきたい」(内山氏)。地域の活性化に貢献したいと意気込む。

 コロナ禍における新たな企画も生まれた。それまで果実はDMが中心だったが、コロナ禍で飲食店需要が減った牛肉の消費拡大のため、初めてカタログを作成。大きな反響があり、前年比158%のヒット商品となった。

JAみなみ信州の自主制作カタログ。旬の果物だけでなく、完熟した紅玉やラ・フランスを供給して、老舗和菓子屋が監修したコンフィチュールや、年間販売数25,000本超の「みなみちゃんハム」などの加工品も掲載されている。
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JAみなみ信州の自主制作カタログ。旬の果物だけでなく、完熟した紅玉やラ・フランスを供給して、老舗和菓子屋が監修したコンフィチュールや、年間販売数25,000本超の「みなみちゃんハム」などの加工品も掲載されている。
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JAみなみ信州の自主制作カタログ。旬の果物だけでなく、完熟した紅玉やラ・フランスを供給して、老舗和菓子屋が監修したコンフィチュールや、年間販売数25,000本超の「みなみちゃんハム」などの加工品も掲載されている。

 今後の課題について、内山氏はこう語る。

 「課題のひとつは市場向けのB to Bモデルから個人消費者向けのB to Cモデルへの対応強化です。特に選果場の設備は元々市場向けの大箱による出荷を想定して作られており、小口需要が多くなった現在、使い勝手が良いとはいえません。梱包対応した設備への改装も計画しています」

 南信州は、リニア中央新幹線や三遠南信自動車道の開通も控える。JAみなみ信州では、「南信州農業地域活性化ビジョン」を策定。さらなる具体的な取り組みも進めるという。

 ふるさと納税を通じ、ビジネスモデルを進化させ続けてきたJAみなみ信州。これからもさらにサービスを磨き上げ、地域のファン獲得に貢献するだろう。