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JA愛知東のトマト生産部会の離農率が低いのは、就農後の「収益化」にむけた仕組みにも特徴があるからだ。即軌道に乗れるような環境づくりが出来ている。
まず、栽培技術面。新規就農者は当然農業の素人だ。そこで経験不足の就農者でも軌道に乗せ易い「ココバック栽培」という技術を取り入れた。美味しい作物を採るには良い土づくりが欠かせない。加えてこの地域は水はけが悪い土壌だ。この難問が新規就農者を待ち受けるのだが、ココバック栽培だとバッグに入れたココナッツのヤシ殻にトマトを植え付け、成長に必要な栄養素のある溶液で育てられる。ココバッグ栽培のための資材は必要だが、土耕栽培で必要なトラクターなどの農機が不要だ。土耕栽培と同等程度の初期コストで、より結果の出やすい栽培技術が新規就農者をサポートする。
しかも収量がとても多い。生育と溶液管理のデータ化に取り組み、県の農業改良普及課とも連携しながら2015年に導入を実現したが、初年度に10アール当たりの平均収量15.3トンという実績を上げた。部会平均の11.6トンを大幅に上回る結果を出したことに部会員は驚き、新規就農者だけでなく、既存農家にもココバッグ栽培が普及していったという。
次に、販売面のサポート環境を見てみよう。新規就農者にとっての理想は、栽培に専念することだ。販路開拓、個別発送、決済集金や広報活動に従事している余裕がない。安定して売れなかったり、廃棄されたりすると不安が募るばかりだ。その点、JA愛知東では新規就農者に代わって、徹底して販売面のサポートをしている。近年は、規格外トマトを使ったジュースやケチャップなどの商品開発も行い、従来廃棄していた規格外品も一定価格で買い取っている。「収穫したトマトの9割以上はJAの共選場に出しています。箱詰めなど作業の軽減だけでなく、販路拡大まで支えて頂き、本当に心強い存在です」と野畑氏は言う。

文化交流面ではどうか。JA愛知東では定期的に「新規就農者の集い」を開催し、生産者同士の交流を促している。自治体も市営住宅を安価に貸すなど協力的だ。こうした地道な活動の積み重ねにより、地域外からの住人が定着する事例が増え、移住者を受け入れる雰囲気も高まった。「農業には、本質的に仲間を増やして共に働くという協働精神があり、それを育てることが大事です」と原氏は語る。時に支えあい、時にぶつかり、泥臭く最適解を見つける。地域全体の連携と、共生と競合の絶妙なバランスこそ、成功の理由の一つといえる。
最後にモチベーション面。人間は自分が成長していないと感じたり、自由な意思決定が出来ないと感じたりすると勤労意欲が落ちがちだ。特に収支が厳しい間は、金銭よりも農業そのものにのめり込めるような動機が必要だ。例えば、トマト生産部会で部会員ごとの収量格差が浮上した際、試験研究機関やメーカーなどと連携して部会内に研究会を立ち上げた。現在、その結果をもとに地域に適した管理方法を独自のマニュアルにまとめているという。土壌分析による効率的な施肥設計、新品種の導入にも積極的で、若手農業者がリードしている。ここでもJA愛知東が巧みに環境を整備し、離農率を低くするのに一役買っているといえよう。
新規就農者は増えた。一方で課題もある。雇用労働力が足りないのだ。原氏は「人材紹介所を作り、行政と協力して援農隊も作りましたが、それでも足りない。地域の人だけでは、車で30分程度までエリアを広げても賄いきれない状況です」と現状を説明。野畑氏も「現在収穫を頼んでいるシルバー人材が就労困難になってきています。これからどうするかが大きな課題です」と語る。
JA愛知東が目指す姿は、新規就農者にとっての「良妻賢母」だ。独り立ちまで守り育て、生産者同士の交流を促し、協力し学びあえる環境を醸成する。原氏は「向上心が強く研究熱心な新規就農者に対し、栽培上の問題から地域コミュニティとの付き合い方など、多面的に支援できるJA職員を育成していきたい」と熱く語る。まさに「良妻賢母」として新規就農者に伴走するJA愛知東は、これからもチャレンジする若者たちを支え続ける。
