砂糖の消費動向で見るニッポン

ピンチの沖縄黒糖、市場に向き合い販路開拓へ! JAおきなわ

販路開拓へ、活動テーマを絞り込み

 在庫問題を抱えながら、なぜいまだに増産プロジェクトなのか。栢野氏はその必要性をこう説く。「生産者の高齢化や機械化の遅れなど生産環境面の課題を改善する余地はまだ少なくありません。また消費量の減少や輸入品との競争から、コスト低減や品質向上も求められています。プロジェクトを通じた生産者支援は引き続き必要です」。

 そうなると、需要喚起に向けた販路開拓が欠かせない。「JAおきなわとしては生産者にさとうきびの豊作を心から喜んでもらえるように、また生産体制の強化に安心して取り組んでもらえるように、販路開拓にいっそう努めます」(栢野氏)。

 特命プロジェクト推進室のメンバーはまず、在庫として抱える沖縄黒糖の価値を捉え直し、まずは余っているものを売るという発想そのものをやめた。

 沖縄黒糖と言えば、ミネラルやビタミンが豊富。原料であるさとうきびの産地によって味わいは異なる。さらに地域経済を支える重要な商材でもある。5つの離島で生産した5種類の沖縄黒糖が持つ5つ星級の魅力を社会に伝え、JAおきなわの手で沖縄黒糖をスターにしよう――。そんな願いから、販路開拓に向けた活動コンセプトを「JAおきなわ黒糖5つ星プロジェクト」と決めた。

 特命プロジェクト推進室発足当初は販路開拓にあらゆる角度から取り組んだ。しかし、メンバーはわずか4人。商談が進んでも成立までに1年近くかかれば、在庫はまた膨らむ。活動効率の向上を図ろうと、推進室の活動テーマを(1)健康づくりに貢献する、(2)新しい価値を提案する、(3)ものづくりを支援する――という3つに絞り込んだ。

 「健康貢献」は、「良いものをつくれば売れる」という従来の発想から脱却し沖縄黒糖の魅力を再発見しようと検討する過程で導き出された答えだ。沖縄では農作業に黒糖を携え、エネルギーとミネラルを補給する習慣があることから、熱中症対策にも効果があると見込まれた。2020年夏には地元建設会社に熱中症対策として提案し小売り用の商品を販売したところ、現場では発症者が例年に比べ減少したという。

 「新しい価値」としては2つの方向性に目を付けた。一つはコク出しスパイス。砂糖と酢を煮詰めたガストリックソースの存在がヒントになった。もう一つは防災備蓄品である。賞味期限が長く、ミネラルが豊富で栄養補給に適し、しかも調理しないで食べられる、という沖縄黒糖の持ち味から、備蓄品として商品化する可能性を見いだした。

黒糖を活用した「おきなわ黒糖防災缶」。黄色を基調に、防災備蓄品と一目で分かるデザインを採用した
黒糖を活用した「おきなわ黒糖防災缶」。黄色を基調に、防災備蓄品と一目で分かるデザインを採用した

 「ものづくり支援」の一つは、沖縄伝統の「黒糖アガラサー」。沖縄黒糖を用いた蒸しパンと言っていい。黒糖使用商品を取り扱う企業を支援し、消費を伸ばしていく取り組みだ。2021年6~11月にはJA共済地域・農業活性化促進助成金を活用し、県内小中学校の学校給食に約14万食分を配布した。沖縄の黒糖や伝統を次世代に伝える食農教育を通じて、認知向上、販売促進、地産地消にも期待を寄せる。同時に、量販店・コンビニ・海外への商談もJAが積極的にサポートしている。

 販路の開拓先は海外市場にも及ぶ。沖縄黒糖の輸出は加工メーカーを通じてすでに少量ながら取り組んでいた。輸出先は香港や台湾などアジア。その海外市場をさらに開拓する方針だ。「沖縄同様、黒糖を日常的に食べる習慣があります。沖縄黒糖の純黒糖としての価値を訴求できれば、商機は十分に見込めます」(栢野氏)。

「生産」から「流通」や「販売企画」にも

 2021年10月には、特命プロジェクト推進室での成果を引き継ぐ形で栢野氏が現在所属するマーケティング戦略室が立ち上げられた。販路開拓には、「生産」「流通」「販売企画」を戦略的に推進する部署が新しく必要という判断からだ。

 それまで特命プロジェクト推進室で販路開拓に向けた活動に取り組みながら、栢野氏は気付かされたことがある。それは、市場への向き合い方を見直す必要性だ。

 従来の販路と言えば、8割は県外の卸で残る2割は県内の最終メーカー。安定供給に向け「生産」に軸足を置くあまり、「流通」や「販売企画」はおろそかになっていた。栢野氏はいま「県内外の消費者は何を求めているか、市場動向は今後どうなっていくのか、という視点が欠けていたと思います。需給バランスが取れていた時期は、黒糖がなぜ売れているのか考えようともしませんでした」と自戒を込める。

 「流通」や「販売企画」のテコ入れに向けマーケティング戦略室で心掛けているのは、市場動向を知る卸や二次加工メーカーとの連携だ。加工メーカーにはさらに、製糖工場で生産した沖縄黒糖を市場ニーズに見合うよう、二次加工する役割にも期待する。「在庫で抱えているのは主に30㎏の塊です。販路をさらに広げるには、最終メーカーが扱いやすいように、この塊を砕いたり溶かしたりする必要も生じますから」(栢野氏)。

 沖縄黒糖という商材側の視点で新しい価値を提案する一方で、沖縄黒糖を食する市場側の視点で販売戦略を企画する――。JAおきなわではいま、「生産」「流通」「販売企画」という三位一体の取り組み体制を築きつつある。

 販路開拓で最も重要なのは、大口取引を持続的に見込める販売先を見つけること。栢野氏は「JAおきなわでは卸任せにせず、自ら商談を進める態勢も整えています。グループ内でさまざまな企業と取引しているという独自の強みを生かし、沖縄黒糖の利用を広く呼び掛けていきます」と、意欲を見せる。

 企業攻略の仕掛けになるストーリーづくりにも取り組む。強く打ち出そうとしているのはやはり、無添加でナチュラルという純黒糖の持ち味。「インフルエンサーの力も借りながら、若い世代と沖縄黒糖をあらためて出合わせたい」と栢野氏は力を込める。若い世代の需要をまず掘り起こし、企業の関心を沖縄黒糖に向かわせる戦略だ。

「無添加」「ナチュラル」という純黒糖の特徴を生かした新しい企画を進めているという
「無添加」「ナチュラル」という純黒糖の特徴を生かした新しい企画を進めているという

 それには、沖縄黒糖を誰もが気軽に手に入れられる環境が不可欠だ。「そうした環境をまず整える必要があります。そのうえで沖縄黒糖をよく味わってほしい。地元で愛されるものでないと、県外からの引き合いは見込めません」(栢野氏)。

 JAおきなわでは向こう3年間の目標として、沖縄黒糖の販売量を年間150t規模で積み増していくことを掲げる。栢野氏は「ピンチをチャンスと捉え、新しい視点で販路を開拓する。在庫とは言葉を換えれば、豊富なストック。必要に応じて迅速に提供できる宝の山です。チームで力を合わせて、黒糖の未来を切り開きたいです」と意気込む。