出張販売は過疎地とは限らない!

都市の「移動販売」の意外な姿、JA横浜

ネットスーパーでの売上拡大は“生産者の顔”が重要

 JA横浜は、「ハマッ子マルシェ」という地上戦略だけでなく、電子商取引(EC)を活用したチャネル開拓にも取り組んでいる。日本最大級の料理レシピサービス「クックパッド」と提携し、同社が運営する生鮮食料品ネットスーパー「クックパッドマート」で横浜産の農畜産物を販売。利用者は、スマートフォンのアプリから商品を注文し、駅やコンビニエンスストア、マンションなどに設置された生鮮宅配ボックス「マートステーション」で受け取ることができる。

生鮮食品をスマホアプリから簡単に注文できる「クックパッドマート」。新たな販路拡大に期待がかかる
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生鮮食品をスマホアプリから簡単に注文できる「クックパッドマート」。新たな販路拡大に期待がかかる
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生鮮食品をスマホアプリから簡単に注文できる「クックパッドマート」。新たな販路拡大に期待がかかる

 「生産者はクックパッドマートで『ハマッ子』ブランドのもと、自身が育てた農畜産物を自分の名前と自由な値付けで販売できます。売れた分だけを生産者が用意する仕組みのため、売れ残る心配も不要です。売上からクックパッドの手数料、JA横浜の事務処理費用を差し引いたものが生産者の利益となります。メリットがある一方、大きな野菜をカットし、クックパッドマートが指定した出荷場所・時間に合わせるなど手間暇がかかります」(横田氏)

 生産者の顔を見せて信頼を獲得し、リピーターを増やしていく取り組みは、緒に就いたばかり。今後の展開にぜひ期待したい。

ブランド化で地域マーケットにおける優位性を確保

 都市農業の課題について小原氏はこう指摘する。「従来、横浜産の農畜産物といえば、キャベツ、小松菜などをあげることができました。最近は多品種少量生産が増えており、横浜産の特色をつけるのが難しくなっています」。

 規模拡大を追えない都市農業という制約のなか、販売戦略にかける想いは熱い。「突破口のヒントとなったのが『浜なし®』です」と小原氏は続ける。

 「『浜なし®』は、JA横浜が商標登録したブランド名です。品質や栽培方法など一定条件を満たした生産者が、JA横浜から認定を受けて生産・販売を行っています。現在、今年度認定者は132人。市場出荷はせず、果樹園やハマッ子直売所で販売されるため“幻の梨”とも呼ばれてきました。樹上で完熟させてから収穫し、すぐに直売するスタイルは、農住近接の都市農業だからこそ実現できます。美味しさを伝えるSNS投稿により、ここ数年需要が一層高まっています」

濃厚な風味と香りが特徴の「恋豆」。直売所の出荷者3人とJA横浜が共同で出荷・販売を行っている
濃厚な風味と香りが特徴の「恋豆」。直売所の出荷者3人とJA横浜が共同で出荷・販売を行っている

 この「浜なし®」のビジネスモデルに似た取り組みが他にもあるという。「2022年から、ハマッ子直売所の出荷者3人がJA横浜と連携をとり、旨みや鮮度を強みとするエダマメを『恋豆』と名付け、共同で出荷・販売を開始しました。出荷組合といった従来型にこだわらず、小規模でグループ化・ブランド化する試みは、他の野菜でも取り組むつもりです。個人の庭先販売ではなく、グループでブランドを作り販売することで、生産規模の拡大、収益向上を目指します」。

地域住民とふれあう「ハマッ子マルシェ」の果たす役割は大きい

 「ハマッ子マルシェ」の展望について横田氏は語る。「ビジネスの観点では、規模拡大が今後の課題です。地域社会貢献の一環としてURや自治体との連携強化も重要なテーマです。URとは、ハマッ子料理教室や収穫体験など横浜農業への理解を促進するイベントについて検討を進めています。高齢者の多い自治体から移動販売のご要望もいただいており、JA横浜は都市農業の新たな役割として『都市の買い物弱者』支援にも積極的に取り組んでいきます」。

 「ハマッ子マルシェ」は、会話や笑顔が絶えない“小さな八百屋さん”に例えることができるだろう。昭和の時代は、地域のいたるところで見ることができた移動販売の風景も、今では珍しい。JA横浜は、都市農業の制約を強みに変えるべく、これからも挑戦を続けていく。

地産地消や都市農業の活性化など「ハマッ子マルシェ」が果たす役割は大きい
地産地消や都市農業の活性化など「ハマッ子マルシェ」が果たす役割は大きい