おいしいお米は、まだまだ売れる

激化する産地間競争を生き抜く術、JAピンネ

消費者に選ばれるにはまず米卸から

 食味と施肥の相関は強い。食味を左右する要因の一つは、タンパク質の含有率である。一般的には7%程度。数値は低いほど食味は良くなる。一方、肥料を加えると、成長は促されるが、タンパク質の含有率は上がる。つまり、収穫量を増やそうと肥料を増やすほど、食味は落ちてしまうのである。

 食味の良い米をできるだけ多く収穫するにはどうすればいいか――。課題に立ち向かうための第一歩が、土壌診断の結果という客観データに基づく適切な施肥指導にある。とりわけ2001年以降、「ななつぼし」を皮切りに新しいブランド米が登場してくると、この施肥指導が、大きな威力を発揮することになる。

 選ばれる米づくりに向けて次に手を付けたのは、集出荷施設に備わる調製機器の見直しだ。調製機器では施設に持ち込まれた玄米から異物などを取り除く。一定幅の網目を通すことで、ふるいにかける。その網目の幅を広げたのである。

 ここで取り除きたかったのは、細い米粒だ。細い米粒は出荷後の精米時に削れてしまい、商品にならない。米卸にとっては損失につながる。細い米粒を取り除けば、精米歩留まりは上がり、米卸に喜ばれるという。「消費者に選ばれるにはまず、その前段階で米卸に選ばれておく必要があります」と、鎌田氏は強調する。

試験場ではタンパク質の含有率や整粒歩合などの数値を細かく測定。短時間で結果が表示される
試験場ではタンパク質の含有率や整粒歩合などの数値を細かく測定。短時間で結果が表示される
試験場ではタンパク質の含有率や整粒歩合などの数値を細かく測定。短時間で結果が表示される

 JAピンネが運営する集出荷調製施設は2カ所。検査場も併設されている。ここではいま、持ち込まれた玄米から生産者ごとにサンプルを採取し、それを基に細分化した独自仕分けを行う。これも、選ばれる米づくりに向けた改革の一つだ。

米穀乾燥調製貯蔵施設「中心蔵ライスターミナル」。側面に大きく「選ばれる米づくり宣言」を掲げる
米穀乾燥調製貯蔵施設「中心蔵ライスターミナル」。側面に大きく「選ばれる米づくり宣言」を掲げる

 代表的な仕分けの基準は、食味である。これは、タンパク質の含有率でみる。もう一つは、整粒歩合と呼ばれるもの。これは文字通り、整った形の粒が含まれる割合を意味する。農水省が定める農産物規格規定では、70%以上を最高ランクの「1等」と定めている。いずれも、有資格者が専用の測定器で計測し、目視で格付けする。

 この仕分け結果を、JAピンネでは2つの方向で選ばれる米づくりに活かす。一つは、市場側が求める食味を備え、品質の安定した製品の出荷につなげる方向だ。

 仕分け後の米は区分ごとに貯留タンクに貯蔵する。必要な区分の米を必要な配分で調合すれば、タンパク質の含有率や整粒歩合などを市場側の求めに応じて設定した製品を供給できることになる。データ管理された米の調合だから、質は均一。品質は安定している。しかも、それを大きなロットで出荷できるのも、産地として強みになる。

 もう一つの活かし方は、地域全体としての質と量の引き上げや生産者のモチベーションアップにつなげる方向である。

 検査場では生産者ごとに仕分けを行うため、どの生産者がどの区分の米をどの程度の量持ち込んだかが分かる。それを基に、各生産者の技量を4段階で評価し、その結果をランキング通知書で知らせる。個人成績を載せた、言わば通信簿だ。

 地域ごとに生産量の目安が割り当てられる中、各生産者の作付面積を毎年、過去5年の個人成績に応じて調整する。「最低ランクの生産者は面積を制限する一方、その分を最高ランクの生産者に割り振り、地域全体としての底上げを図ります」(鎌田氏)。

 通信簿は生産者の努力を適正に評価する仕組みでもある。ただモチベーションアップにつながり得る半面、作付面積の制限が最低ランクの生産者のやる気をそぐ恐れはないのか――。鎌田氏はこう答える。

生産性の向上へ、JA側で設備投資を

 「運命共同体の意識が強いため、JA側のお願いには耳を傾けてもらえます。例えば飼料米への転作をお願いする時も、誰かが反発すれば、その生産者が転作に応じなかった分を別の生産者がかぶらざるを得ない。それが分かっているから、みんなで話し合って決めた方向に一緒に進んでいこう、という気持ちになれるのです」

 一連の改革は成果を上げ、JAピンネが出荷する米の品質は20年余りで格段に高まり、その安定度もぐんと増した。1998年度時点で出荷量の75%を占めていた業務用の割合は徐々に減り続け、いまでは家庭用が全体の80~90%を占める。

 出荷先からは産地指定を受けるようになり、安定した出荷につながる複数年契約が多くを占めるようにもなった。「複数年契約の中では独自の改革が評価され、その分が加算金として上乗せされるようにもなりました」(鎌田氏)。

「北海道米の新たなブランド形成協議会」が毎年発表する「ゆめぴりか」良質米生産出荷表彰者に与えられる認定マーク。その基準は厳しいと鎌田氏は言うが、JAピンネ管内の生産者は多数授与を受けている
「北海道米の新たなブランド形成協議会」が毎年発表する「ゆめぴりか」良質米生産出荷表彰者に与えられる認定マーク。その基準は厳しいと鎌田氏は言うが、JAピンネ管内の生産者は多数授与を受けている
「北海道米の新たなブランド形成協議会」が毎年発表する「ゆめぴりか」良質米生産出荷表彰者に与えられる認定マーク。その基準は厳しいと鎌田氏は言うが、JAピンネ管内の生産者は多数授与を受けている

 集荷率は2010年度に90%を超えるようになり、その後も90%台を維持する。その理由を、鎌田氏はこう分析する。「組合員はこの地域で営農を続けていかなければなりません。JA側が『選ばれる米づくり』という方針を明確に示し改革に挑んだことが、将来に向けて何が最善の道なのか、皆さんの的確な判断を促した結果とみています」。

 今後、JAピンネでは乾燥調製設備の増設に乗り出す予定だ。この設備は、収穫した籾(もみ)を、乾燥や籾すりの工程を経て、玄米にするもの。現在2カ所で運営しているが、稼働率が高く、受け入れ余力はない状況が続いている。

 一方、管内では生産者が減少する中、既存の農業経営体が経営規模の拡大に乗り出している。ただ、家族経営が中心の地域。作付面積の拡大を図るには省力化が必須だ。現状は一部を自前でやらざるを得ない工程の機械化は欠かせない。

 「そこに、JA側のサポートが必要」と、鎌田氏は明快に説く。「農業経営体の今後を考えると、現有の設備で対応しきれなくなるのは明らかです。設備投資は抑制しながら規模拡大を図るには、JA側で設備を整備していく必要があります」。

 念頭に置くのは、地域全体で5000ha規模という主食用米の作付面積を維持することである。「中期経営計画ではこの10年以上、この規模を維持してきました。生産者の誰かが耕作をやめても、そこで別の誰かが米づくりを続ける。そうすることで、この規模を今後も維持し続けていきたい」。鎌田氏は思いを打ち明ける。

 業務用から家庭用への転換を成し遂げたいま、次に求められるのは、規模拡大に向けた生産性の向上だ。今後に向けた課題と品質の両立をどう図っていくのか――。「選ばれる米づくり」は、第2ステージを迎えている。