耕畜連携が“サステナブル社会”に貢献って、なんだ?

堆肥の広域流通で三方良し、JA菊池

飼料用米作りにインセンティブも

 堆肥作りが、畜産農家の悩みを起点とする「畜」から「耕」への流れだとすると、逆向きは、「えこめ牛」を終点とする「耕」から「畜」への飼料用米作りの流れだ。

 菊池地域で飼料用米作りが始まったのは、有機支援センターの稼働からわずか数年後の2008年度。当時、副組合長を務めていた三角氏が、その旗振り役を務めた。背後には、冒頭に掲げたような「エコ」への共感がある。

 自身、花き農家という仕事柄、かつては菊の花芽をつけるため、例年1月になると一晩に何百リットルもの重油を燃やしていた。ところがその後、品種や植え付け時期の見直しを通じて、重油をできるだけ使わない生産方式に切り替えた経緯がある。

 転機は、1997年12月に京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締約国会議」、通称COP3である。「日本はここで2012年までの5年間で温室効果ガスを6%削減する目標を掲げました。以降、化石燃料を消費してまで、冬にスイカやメロンを生産しなければいけないのか、と疑問を感じ始めました」(三角氏)。

 三角氏が飼料用米作りの旗を振り続けて約15年。主食用米の需要が年々落ち込む中での転換策もあって、飼料用米の作付けは徐々に広がった。その面積はいま、150ha程度に達する。

 配合飼料になるまでの流れは、こうだ。稲作農家は、収穫した飼料用米を管内4カ所のカントリーエレベーターに持ち込む。JA菊池では、それを乾燥・籾摺りし、玄米にする。さらにその配合をJA全農関連の飼料会社に委託し、配合飼料として仕上げる。この配合飼料を、JA菊池が管内の畜産農家に販売する。

 飼料用米を玄米に加工する工程で一定の費用がかかることから、JA菊池では稲作農家の気持ちをくみ、飼料用米の買取価格を高めに設定している。「稲作農家の収支が少なくともとんとんになるように努力しよう、と他のJAに比べほぼ倍の設定です」(三角氏)。これがまた、飼料用米作りへのインセンティブとして働く。

 飼料用米作りを始めた当初は5%にすぎなかった配合飼料の飼料用米が占める割合は2022年11月、20%まで引き上げられた。「狙いは、輸入穀物の輸送時におけるCO2排出量のさらなる削減です。飼料用米の割合を引き上げて輸入穀物の量を減らせれば、CO2排出削減の効果はいっそう高まるはず」。三角氏は意気揚々だ。

地下水100%の地域で水循環も保全

 堆肥作りと飼料用米作りという2つの事業が生み出す循環型経済。その事業収支は厳しいのが現実だ。三角氏によれば、堆肥作りでは機械設備の償却負担や梱包資材費の値上がりが、また飼料用米作りでは買取価格の相場を超えた設定が、それぞれの収益を圧迫するという。それに対してこう語る。

 「堆肥の販売単価は地元の畜産農家と同じ設定です。しかし、梱包資材費の値上がりもあり、さすがに見直さざるを得ません。収支の改善を図る必要があります。一方、飼料用米については、『えこめ牛』の腹に収まるもの。収支は気にしません。米作りへのインセンティブを利かせるほうが優先です」(三角氏)。

「えこめ牛」は2020年、飼料用米を活用した畜産物のブランド化を推進する「第3回飼料用米活用畜産物ブランド日本一コンテスト」で全国農業協同組合中央会会長賞を受賞している
「えこめ牛」は2020年、飼料用米を活用した畜産物のブランド化を推進する「第3回飼料用米活用畜産物ブランド日本一コンテスト」で全国農業協同組合中央会会長賞を受賞している

 元はと言えば、堆肥作りも飼料用米作りも、畜産農家や耕種農家の経営を支援する一環として取り組み始めたもの。JA菊池としては、まずは組合員である生産者に利がもたらされれば良い、と考える。

 2023年度には、ペレット堆肥作りで肝になる乾燥工程を大幅に短縮するための技術実証や、ペレット堆肥に肥料を添加して通常の純度100%肥料より安価に販売するための試みを、産官学連携の下で進める。それもまた、需要の見込めるペレット堆肥の可能性を広げ、生産者に利をもたらそうとする発想に基づく。

 JA菊池が目指すのは、地球規模の環境配慮はもとより、地域規模の環境配慮でもある。三角氏は地下水に話題を振る。「熊本市は人口70万人規模、周辺市町村を含めれば100万人規模の都市です。それでも、水道水源はほぼ地下水で賄えています。そんな都市は世界でも稀な存在です」。

安心品質をうたうJA菊池のブランド「きくちのまんま」ロゴをバックに笑う三角氏。阿蘇山の裾野で培われた豊かな自然が市街地の人々の生活を支えている(写真右はJA菊池 本所外観)
安心品質をうたうJA菊池のブランド「きくちのまんま」ロゴをバックに笑う三角氏。阿蘇山の裾野で培われた豊かな自然が市街地の人々の生活を支えている(写真右はJA菊池 本所外観)
安心品質をうたうJA菊池のブランド「きくちのまんま」ロゴをバックに笑う三角氏。阿蘇山の裾野で培われた豊かな自然が市街地の人々の生活を支えている(写真右はJA菊池 本所外観)

 地下水の源は、地域一帯に降り注いだ雨。阿蘇噴火時の火砕流が生み出した水の浸透しやすい地層や大量の水をたたえる水田が、雨を地下水として涵養する役目を果たす。家畜排せつ物の適正な管理につながる堆肥作りや休耕田化を食い止める飼料用米づくりは、豊かな水の循環を途切れさせない取り組みとも言える。

 「農業はやはり、地域環境とともに歩んでいく必要があります。それこそが、持続可能な社会作りにつながります」。三角氏はそう強く訴える。JA菊池では今後、飼料用米を用いた配合飼料の利用対象を「えこめ牛」以外にも広げていく方針だ。