PR (supported by JA)
JAの検査場などで行われていた検査の流れは次の通り。
まず生産者が玄米30kgを袋に詰め、協議会から配付される二次元バーコードが印刷された生産者別シールを各袋に貼付し納品する。検査場などではそれを読み取ってトレーサビリティーを確保した上で、ベルトコンベア式の放射性セシウム濃度検査器に流して測定する。空港の手荷物検査のように、玄米袋が検査機を通過していく。
結果、基準値以下ならば精米し(玄米出荷品は除く)、品種や重量ごとに異なる商品パッケージに詰めて、検査済みのシールを貼付し出荷する。このシールにはQRコードがついており、スマートフォンなどで読み取ると、その米の検査方法や結果が閲覧できるようになっている。


またJA全農福島精米工場では独自に、精米になった後も二重で検査を実施した。検査の結果基準値を超えた場合は、もちろん市場から隔離される。しかし2015年産米以降は、セシウムが検出されていない。それでも長年にわたって全量全袋検査を続けてきた。
検査体制がようやく変わったのは、2020年産米以降である。福島第一原発に近い浜通りの12市町村では継続して全量全袋検査を行っているが、それ以外で産出された米についてはモニタリング検査に移行した。

このような地道な努力を長年続けた結果、県産米に対する信頼はかなり戻ってきた。現在の販売状況に関して円谷氏は、「放射能の影響はほとんど感じません。しかし近年はブランド米競争が厳しく、売れない状況が続いた間に他産地にシェアを取られてしまいました。Eコマースでどこからでも簡単に好きなお米を購入できる中で、あえて選んでもらうのは大変です」と語る。米の相場は需給状況で決まるため、需要が増えれば他の産地との価格差は縮小するが、米が余るとまた差が広がるという福島県産米特有の課題もある。「JA全農福島としては長期契約など安定的な取引を行い、生産者が安心して米づくりをできるように取り組んでいます」(斎藤氏)。
消費者に安全でおいしい米を届けることと、生産者の収入を安定的に最大化すること。この2つの使命を実現するため、JA全農福島は一体となってこの12年間、奔走してきた。
現在、福島県が力を入れているのが、米の輸出だ。以前は東南アジアを中心に2009年度は約14t、2010年度は約13tとスポット的な輸出を行ってきた。事故を受けて輸出が途絶えていたが、2014年度から再開。再開した当初は復興アピールの色合いが強く、シンガポールに300kgのみだったが、2015年にはシンガポールに加えてマレーシアにも輸出を開始。輸出量は12tを記録した。2018年にはマレーシア向けの米の輸出量で福島県産米が日本一になるなど、着実に規模を拡大している。

国が2018年、輸出米の生産を奨励するために実施した支援措置も追い風となった。JA全農福島 米穀部 米穀販売課で輸出を担当する谷口華氏は、「生産者の収入を拡大するため、県内で本格的に輸出米生産に取り組み始めました。2021年度は約200tの取り扱いがあり、マレーシア、シンガポール、香港、アメリカ、カナダ、イギリス、フィンランドなどに輸出しています」と語る。
さらにJA全農福島は、国の農林水産物・食品の輸出拡大を目指す方向と連動し、米の輸出目標を策定。2022年度は400t、2023年度は600tとしており、2025年度には1000tを目指す。「海外でも福島のブランドを選んで買ってもらいたい」と谷口氏。そのために、さらなる品質向上と心に響くアピールに取り組んでいく。
2021年9月にはアメリカも福島県産米の輸入規制を撤廃した。コロナ禍の渡航規制緩和もあり、2023年1月には県知事が渡米。JAとともにトップセールスを行った。同行した斎藤氏は、「カリフォルニア米が不作だったこともあり、日本の米が歓迎されました。特に『天のつぶ』は、粒立ちの良さとあっさりとした食味が好まれ、油との相性も良く受け入れられやすいようです。データに基づいた説明を行い、アメリカの消費者の信用を得ることができました」と手応えを語る。

最後に斎藤氏は、「県内消費量のうち県産米は約6割まで戻りましたが、以前の8割からするとまだ低い。国内外の消費者はもちろん、県内でももっと県産米を選んでいただけるよう、努力を続けます」と力強く語った。福島県は2017年産から2019年産にかけて、日本穀物検定協会による「米の食味ランキング」で最高評価獲得銘柄数の3年連続日本一を記録。おいしさへの評価は、国内外に向けたさらなるブランド力の向上でより強化される。苦難を乗り越えた福島県産米の第2章が、ここからスタートする。
