全国有数、年間1500tのコメ輸出を達成!

水田フル活用にまい進する、JAみな穂

高単価でも売れる家庭用の販売網築く

 「当時、ドイツのデュッセルドルフには6000人、オーストラリアのシドニーには4000人を超える日本人が住んでいました。東南アジアも非常に多い。それらの地域にある日本人向けの量販店を拠点に販売展開するという戦術です」(細田氏)

 この戦術が徐々に実を結ぶ。海外在住の日本人向けという底堅い需要にターゲットを据えることで輸出量は右肩上がりに増え続け、2024年度は1550t近くを見込む。相手国は現在、米国、香港、英国など34カ国。「目下、アイルランドへの展開を仕掛けている真っ最中です」と細田氏は意気軒高だ。

 北海道、東北、北陸を中心にコメの輸出に取り組む産地が増えてきたとはいえ、その数量が年間1000tを超える地域はまだ限られるのが実情だ。JAみな穂の強みは、どこにあるのか。

 一番の強みは、高単価でも売れる家庭用を主力とする点にある。

 販売先の中心は、日本人向けの量販店や電子商取引(EC)サイトを通じた家庭用だ。店頭には、日本語で「富山県産コシヒカリ」と記した国内でもおなじみの大きさのコメ袋が並ぶ。販売単価は国内の2~3倍近いが、それでも売れる。厳しい価格競争にさらされている業務用を主力とするほかの産地とは、そこが大きく異なる。

 言わば食味で勝負できる販路を開拓できたのは、「事業パートナーである神明グループの力」と細田氏は高く評価する。同グループは現在、米国、中国、香港、ベトナムの4カ国に現地法人を立ち上げ、コメの輸出事業を展開する。それらの拠点を中心とする海外ネットワークを、販路開拓では最大限に活用してきた。国内最大手のコメ卸と手を組んだ強みが、ここに生きたのである。

 販路の広がりに合わせて生産量を増やしていくのは、JAみな穂の役割だ。ただ販売機会の損失を恐れてむやみに生産量を増やすと、過剰在庫を抱えかねない。必要な生産量の的確な見極めが欠かせない。

 「既存の販売拠点でどの程度増やせそうか、新規の販売拠点でどの程度見込めそうか。神明グループからの情報を基に、必要な生産量を逆算します。そのうえで在庫リスクを避けるため、実際の生産量はその結果より少なめに抑えます」。生産量の見極め方を、細田氏はこう解説する。

コメ袋を積み重ねた荷の集団を指す「はい」ごとに、その用途を記した「票箋」を掲示。写真のコメ袋が「輸出用米」だと一目で判別できる
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コメ袋を積み重ねた荷の集団を指す「はい」ごとに、その用途を記した「票箋」を掲示。写真のコメ袋が「輸出用米」だと一目で判別できる
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コメ袋を積み重ねた荷の集団を指す「はい」ごとに、その用途を記した「票箋」を掲示。写真のコメ袋が「輸出用米」だと一目で判別できる

「とも補償」で地域全体の水田フル活用

 新規需要米のコメ農家ごとの生産量・用途は、需要に応じてJAみな穂が主導となり配分する。ただし価格は、輸出用米、米粉用米、飼料用米で異なる。また、生産調整に伴う大豆などの集団転作により、農家間の所得に開きが生じれば、不公平感が募りかねない。

 そうした事態を避けようとJAみな穂が町とも連携し取り入れたのが、「地域営農とも補償制度」と「新規需要米共同計算」である。「とも補償」とは、生産調整に伴う経済的な不均衡を生産者相互で補償し合い、ならす仕組みとして一般的なものだ。新規需要米においては用途による不公平感をなくすため、共同計算方式により所得の平準化を図っている。

 「国からは転作奨励を目的に交付金が支給されています。しかし、それだけでは不十分。この制度はそれを補い、コメ農家の生活を守るものです。このことはJAみな穂が自慢できることです」。細田氏はそう胸を張る。

コメ袋には1080kgの玄米が入る。一つひとつをフォークリフトなどで積み上げる様は壮観だ
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コメ袋には1080kgの玄米が入る。一つひとつをフォークリフトなどで積み上げる様は壮観だ
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コメ袋には1080kgの玄米が入る。一つひとつをフォークリフトなどで積み上げる様は壮観だ

 人口減と消費減というダブルパンチを浴びる中、コメ農家の所得向上を支える輸出事業。今後は、富山県が開発し2018年秋に本格デビューした「()()()」に輸出用米の品種を切り替えていくという。

 背景には地球温暖化があるという。「寒冷地向けの『コシヒカリ』では、高温障害で食味に影響が出るようになっています」(細田氏)。これに対して「富富富」は、高温に強いという特性を「コシヒカリ」に交配したもの。生育環境がさらに変化しても、食味への影響は避けられる品種と言える。

 2024年度輸出予定の約1550tの中にも約16tはこの「富富富」を見込む。「コメには嗜好性があります。海外の消費者にも早めに慣れてもらい、優位性を高めようという狙いです」。細田氏は先を見据える。

取材終了後、ウーケのパックご飯を両手に笑顔で撮影に応じる細田氏
取材終了後、ウーケのパックご飯を両手に笑顔で撮影に応じる細田氏

 人口減や消費減の流れは止まらない。主食用米の生産調整に伴い、転作を迫られる水田や稼働の機会を失う農機具は増えていく。それらの経営資源をどう活用し、地域全体の所得向上につなげていくか――。有力な事業パートナーとの連携で海外の市場に打って出るという戦略は、一つの答えを示している。